航空機工業振興法案
参議院 商工委員会
昭和33年法律第150号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
前尾繁三郎 通商産業大臣 昭和33年4月3日航空機工業振興法案につきまして、その提案理由と法律案の概要を御説明申し上げます。
航空機工業が代表的な総合工業であり、かつ、きわめて高度の技術を必要とする精密工業であることは、よく知られているところであります。すなわち、航空機は、機械、電気、化学その他あらゆる技術の総合の上に成り立っており、その生産には、これら関連諸産業の緊密な協力を必要といたします。また航空機工業の技術は、産業の技術の最先端をいくものでありまして、これは航空機が、きわめて高度の性能を必要とし、かつ、その進歩が著しいことによるものであります。このような航空機工業の基本的性格から、これが発達は、同時に一国の産業技術の水準向上に資するところきわめて大なるものがあるといえるのであります。
また、従来わが国の航空機、特に民間輸送機は、ほとんど全部輸入している状況でありますが、航空機、特に輸送機の国産化を促進することにより、航空機とその補用部品の輸入を防遏し、さらに進んで国産機とその部品を輸出することも考えられますので、将来における国際収支の改善のためにも、航空機工業の振興をはかる必要性が痛感される次第であります。特に、航空機は、その構造の複雑性、精密性から、その生産に当ってきわめて多くの部分を熟練した作業に依存しなければならないので、多くの労務者を雇用することとなり、コスト中に占める付加価値の比率もまたきわめて高いのであり、わが国情に適した産業と称し得るのであります。
戦前において世界の第一流に属していたわが国航空機工業は、戦後約七年間の空白により、世界の水準から全く立ちおくれるのやむなきに至りましたが、昭和二十七年四月講和条約発効後、ようやく航空機の生産が再開され、その後官民一致の協力により、ようやく再建の軌道に乗り、その技術の進歩、工場の整備等も著しく、特に最近ではジェット機及びジェット・エンジンの国産化に手をつけるに至り、これに伴い関連機器の国産化も、着々進展しつつある状況であります。もっとも、その内容をしさいに検討すれば、生産再開以来今日までの航空機及び関連機器の生産は、ほとんどすべてが外国との技術提携によるものであり、わが国独自の試験研究、設計研究によるものではないのであります。しかしながら、これらの経過を通じて、関係企業の技術水準も、かなり高まりましたので、この際国際収支対策上、最も急がれております中型輸送機の国産化を推進することとし、昭和三十二年度及び昭和三十三年度において所要の補助金交付の予算を計上し、必要な設計研究のほか、さらに木型製作等の段階にまで進ましめんとしつつあることは御承知の通りであります。
以上のような航空機工業の現状にかんがみ、今後政府及び民間の総力を結集し、できる限りすみやかに航空機等の国産化を促進するための措置を講じて、航空機工業の振興をはかるべく、各方面からの検討を加えた結果、ようやく成案を得て上程する運びとなった次第でありまして、その骨子は、おおむね次の通りであります。
まず、本法案の対象となる航空機等とは、航空機のほか、その関連機器、部品及び材料で、このうち関連機器、部品及び材料につきましては、別途通商産業省令で定めることになっておりますが、それぞれ当面最も急を要する重要なものを取り上げていきたいと考えております。
次に、航空機工業審議会の設置につきましては、前述のごとく航空機工業の振興が、政府及び民間の総力をあげて行われるべきであるとの趣旨により、航空機工業のみならず、将来の需要者側たる航空運送事業に関する学識経験者をも加えて組織した審議会において、国産化の促進のための諸措置を検討していこうとするもので、特に輸送用航空機の国産化に重点を置く旨を、規定の上でも明らかにした次第であります。
最後に、航空機工業振興のための具体的措置として、国有試験研究施設の使用に関する優遇措置と設備資金の確保について、特に規定を設けております。もともと国有試験研究施設は、その設置の目的に反しない限り、民間の使用をも認める建前になっておりますが、航空機等の国産化を促進するため、特に必要があると認める場合は、航空機等に関する試験研究を行う者に、時価よりも低い対価で使用させる旨の根拠規定を設けたもので、その施設の種類、使用条件等につきましては、政令で定めることにしております。また、資金の確保につきましては、政府といたしましては、如上の航空機等の国産化の必要性にかんがみ、そのために必要な設備資金の確保に努める所存であります。
以上、本法案の提案理由及び内容の概略につき御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上可決されますよう切望する次第であります。
第28回国会衆議院商工委員会議録第26号10頁(昭和33年4月3日)〔前尾繁三郎通商産業大臣発言・発言番号51〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
一本法の目的は、民間の輸送用航空機等の国産化の促進による航空機工業の振興を図るところにあるので、政府は、この趣旨に従って、本法の運用を行うべきである
二政府は本法の目的を達成するため、航空機工業の技術の向上及び経営基盤の確立等について、適切な振興助成策を講ずる共に、特に当面最も緊急を要する中型輸送機の設計研究及び試作等について、その合理的促進を図るための機構の整備、資金の確保等について、特段の考慮を払うべきである。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=102801153)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。