国民健康保険法の一部を改正する法律案
衆議院 社会労働委員会
昭和36年法律第143号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
古井喜實 厚生大臣 昭和36年3月2日ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案について、その提案の理由を御説明申し上げます。
国民健康保険の給付内容につきましては、国民皆保険体制の進展とともに全般的に逐次向上して参りましたが、国民健康保険における現行の一部負担率では、世帯の生計中心者が長期疾病にかかった場合には、その一部負担金が大きな負担となりまして、これがために十分な医療を受けられない場合が少なくない事情であります。また一方、保険者にとりましては、一挙に一部負担率を引き下げることは、保険財政の上から容易でない現状でありますので、今回は世帯主である被保険者が結核性疾病または精神障害にかかった場合の医療費負担の軽減をはかるためにこれに関する一部負担率を引き下げるとともに、これによって保険財政の健全性をそこなうことのないよう財政上の措置を講じ、もって、給付内容の一そうの改善を期すべく、ここに、この法律案を提案した次第であります。
次にこの法律案の内容について御説明いたします。
まず第一に、世帯主である被保険者が結核性疾病または精神障害に関して、療養の給付を受ける場合の一部負担金の割合を十分の五から十分の三に引き下げることといたしました。
次に、国は、保険者に対して、この引き下げに伴って保険者が必要とする療養の給付及び療養費の支給に要する費用を負担し、または補助することといたしました。
なお、本改正は十月一日から実施するものであります。
以上がこの法律案の提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に健康保険法及び船員保険法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。
健康保険及び船員保険におきましては、被保険者及び被扶養者の分べんに関して給付を行なうこととしているのでありますが、その内容を改善することとしたのであります。
これが、この法律案を提出いたしました理由でありますが、以下その概要を御説明いたします。
第一に健康保険の分べん費についてであります。健康保険におきましては、被保険者の分べんに対しましては、分べん費として被保険者の標準報酬月額の半額が支給されることとなっておりますが、最近における分べんの所要経費等を勘案いたし、最低額について六千円まで引き上げることとするものであります。またこれに合わせて、配偶者分べん費の額も、現行の千円を三千円に引き上げるものであります。
第二に健康保険の育児手当金についてであります。被保険者及びその被扶養者である配偶者の出産につきましては、現行制度では保育手当金として生後六カ月間に毎月二百円ずつ支給されることになっておりますが、これを一時に二千円支給することとし、またその名称を育児手当金に改めようとするものであります。
第三に、船員保険におきまして分べん費及び育児手当金について健康保険におけると同様の改正を行なおうとするものであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由及び法律案の要旨でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
次に日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明申し上げます。
日雇労働者健康保険法は、日雇労働者の疾病あるいは負傷等に関して保険給付を行なうことにより、その生活の安定に資することを目的として、昭和二十八年に制定されたものであります。自来数次にわたる改正により、漸次給付内容の改善がはかられてきているのでありますが、現在でも健康保険のそれに比較しますと、かなり隔たりのある部面がありますので、この際事情の許す限り改善をはかることとしたのであります。
一方、給付内容の改善をまかなう財源についてでありますが、日雇労働者健康保険の財政は、医療給付費を中心に保険給付費が年々増加するのに対し、保険料が出花額制で弾力性を持たないため、ここ数年来急速に悪化してきているのであります。これに対処して、これまでも保険給付費に対する国庫負担率を引き上げるほか、暫定の措置として借入金を行なう等の方法を講じて参ったのであります。このような財政状況下において、給付内容の相当の改善を行なうには、さらに特段の財政対策を講ずる必要があるのでありまして、今回あわせて、国庫負担率の引き上げと保険料額の等級区分の改定を行ない、財政の健全化に資することとしたのであります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由でありますが、以下その概要を御説明いたします。
まず、給付内容の改善についてであります。
その第一は、療養の給付期間を現行の一年から二年に延長することであります。
その第二は、傷病手当金の支給期間の延長及びその日額の引き上げをはかることであります。すなわち、現行制度では、傷病手当金の支給期間は十四日となっておりますが、これを二十一日にし、また日額については、第一級二百円、第二級、百四十円の二段階制となっておりますものを、保険料日額の等級区分の改定に伴い、三段階制にして新一級を三百三十円とするほか、現行の二百円を二百四十円に、百四十円を百七十円にそれぞれ引き上げるものであります。
その第三は、被保険者が分べんした場合に支給する分べん費の額を現行の二千円から四千円に引き上げるとともに、配偶者分べん費についても千円から二千円に引き上げることとするものであります。
その第四は、出産手出金の日額について、傷病手当金の場合と同様に三段階制にし、新一級を三百三十円とするほか、現行の二百円及び百四十円をそれぞれ二百四十円及び百七十円に引き上げることであります。
その第五は、特別療養費の制度を創設することであります。現行の制度におきましては、療養の給付は、被保険者となってから、前二カ月間を通算して二十八日分以上の保険料が納付された場合等に行なわれることとなっております。このため、初めて被保険者となった者については、この間医療給付を受けられないという不合理が生ずるのでありますが、今回このような弊をなくするため、被保険者となった当初の約二カ月間五割の医療給付をしようとするものであります。
次に、給付改善に伴う財政対策であります。
第一に、給付費の国庫負担率について、本保険の特殊性にかんがみ、これを現行の十分の三から百分の三十五に引き上げることとしたのであります。
第二は、保険料の日額の等級区分の改定であります。保険料の日額は、現行制度では二段階制になっているのでありますが、これを三段階制に改め、比較的賃金の商い日額四百八十円以上の階層の者を第一級とし、これに対する保険料を三十円とするものであります。これに伴い、賃金日額二百八十円以上四百八十円未満の者は第二級、二百八十円未満の者は第三級となりますが、これに対する保険料日額は、いずれも従前通りとするものであります。
以上が、この法律案を提出いたしました理由及び法律案の、要旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
第38回国会衆議院社会労働委員会議録第10号5頁(昭和36年3月2日)〔古井喜實厚生大臣発言・発言番号3〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=103801084)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。