原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案
参議院 科学技術振興対策特別委員会
昭和46年法律第53号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院科学技術振興対策特別委員会
- S46.2.17趣旨説明科学技術振興対策特別委員会 210
- S46.2.26質疑科学技術振興対策特別委員会 4101
- S46.3.10質疑科学技術振興対策特別委員会 5271
- S46.3.11質疑科学技術振興対策特別委員会 6142
- S46.3.18質疑・採決・附帯決議科学技術振興対策特別委員会 7210
- S46.3.19委員長報告・採決・附帯決議本会議 1950
参議院科学技術振興対策特別委員会
- S46.3.19趣旨説明・補足説明・質疑科学技術振興対策特別委員会 3228
- S46.4.16質疑科学技術振興対策特別委員会 4177
- S46.4.17質疑・附帯決議・採決科学技術振興対策特別委員会 5123
- S46.4.23附帯決議・採決・委員長報告本会議 1042
提案理由
西田信一 北海道開発庁長官・科学技術庁長官 昭和46年2月17日まず、原子力損害の賠償に関する法律及び原子力損害賠償補償契約に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明いたします。
原子力の開発利用を進めるに当たりましては、その安全性を確保することが絶対的な要件であることは申すまでもありませんが、さらに万一の際における損害賠償制度を確立して、国民の不安感を除去するとともに、原子力事業の健全な発展に資することが必要であります。
このような観点から、昭和三十六年に制定されました原子力損害賠償関係二法律に基づき、原子力事業者に無過失損害賠償責任を課するとともに、原子力事業者への責任の集中、損害賠償措置の義務づけ等を行ない、また責任保険等でカバーされないリスクについては国家補償契約制度を導入してまいったのでありまして、わが国の原子力事業は、安全面で他に類を見ない厳重な規制とこのような損害賠償制度の適切な運用によって順調な歩みを続けております。
しかるに、現行法は、国の補償契約制度と、損害賠償措置を越える原子力損害が発生した場合の原子力事業者に対する国の援助の規定を法制定後十年間すなわち、昭和四十六年末までに運転を開始する原子炉等に限り適用することとしております。これは十カ年経過した時点で原子力の開発利用の進展等に応じ原子力損害賠償制度を再検討するためのものでありますが、今後の原子力開発利用の促進のためには、昭和四十七年以降に運転を開始する原子炉等についてもこれらの規定を適用できるようにすることが必要であります。
また、現行賠償制度発足時には、わが国において原子力船の建造が現実のものとなっておりませんでしたが、近く原子力第一船「むつ」の就航が実現いたしますとともに、米国、西独等の原子力船の本邦寄港の要請も従来から強く行なわれてきております。
従って、内外の原子力船の円滑な相互寄港をはかるため、原子力船に関連して原子力損害賠償制度を整備することが必要であります。
さらに、最近における原子力の開発利用の進展に応じ、損害賠償措置額の引き上げ、核燃料輸送中の責任等に関連する所要の改正を行なうことが必要であります。
このため、原子力委員会に原子力損害賠償制度検討専門部会を設けて、原子力損害賠償制度に関する諸条約あるいは欧米諸国の原子力損害賠償制度を参考として検討してまいりましたが、その結論が得られましたので、このたび本法律案を提案した次第であります。
次に、本法律案の内容につきまして主要な点を御説明申し上げます。本法律案は、賠償法の一部改正と補償契約法の一部改正とからなっておりますが、まず賠償法の一部改正につきましては、第一に、先に述べましたとおり、国の補償契約制度と国の援助に関する規定の適用が昭和四十六年十二月末までに運転を開始した原子炉等に限定されておりますので、この規定をさらに十年延長し、昭和五十六年十二月末までに運転を開始する原子炉等に適用することとしております。
第二に、原子力船に係る原子力損害賠償制度の整備についてでありますが、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入る場合には、原子力船運航者の責任に関する条約等を参考として、両国政府間の合意に基づき原子力事業者の損害賠償責任を一定の額までとし、国内で要求される損害賠償措置に加えてその額までの損害賠償措置を講じさせることとしております。その場合の損害賠償措置としては、民間の責任保険等のほかに民間の責任保険等でカバーされない部分について後に述べますように、国の補償契約制度を拡大することとしております。
また、現在、わが国の原子力船については、その原子炉に着目して陸上原子炉と同じ損害賠償措置が義務づけられておりますが、外国原子力船については賠償法上の規定を欠いておりますので、外国原子力船が本邦水域に立ち入る場合の運航者に関する賠償法上の規定を整備することとしております。
即ち、外国原子力船が本邦の水域に立ち入る場合にも、わが国の原子力船が外国の水域に立ち入る場合と同様、両国政府間の合意に基づき原子力事業者の損害賠償責任を一定の額までとし、その額までの損害賠償措置を講じさせることとしております。なお、その額は一原子力事故当たり三百六十億円を下らない額とすることとしております。
また、万一合意した額をこえる損害が発生した場合には被災者の救助及び被害の拡大の防止のための必要な措置を政府が講ずるようにすることとしております。
第三に、賠償措置額については、現在の五十億円を民間責任保険の引き受け能力、外国の例等を勘案し、六十億円に引き上げることとしております。
第四に、求償権の制限及び核燃料物質運搬中の責任については、特約がある場合を除き、原子力事業者の求償権の行使を第三者に故意がある場合に限るとともに、核燃料物質の運搬中の責任は受け取り人ではなく発送人にあることとする等関連規定を整備することとしております。
次に、補償契約法の一部改正につきましては、賠償法の改正に対応して、わが国の原子力船の外国の水域への立ち入りに伴い生じた原子力損害であって、民間の責任保険等で埋められないものをカバーするため、両国政府間の合意で定められる損害賠償責任額まで政府と原子力事業者の間で補償契約を締結できることとしております。
以上、この法律案の提案の理由並びにその内容を御説明申し上げました。
何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。
第65回国会衆議院科学技術振興対策特別委員会議録第2号7頁(昭和46年2月17日)〔西田信一北海道開発庁長官発言・発言番号8〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
本法の目的はすべての原子力損害に対する被害者の保護を図るにあるが昭和三十六年本法の議決に際し附せられた決議がほとんど実現されていない。従つて同決議の各項目について具体的に実施することを政府に重ねて要望するとともに本法改正にあたり左記の点を特に留意し、実効をあげること。
一陸上の原子炉、原子力船、米国の原子力軍艦による損害は同じ原子力の損害でありながら賠償金額が異なる場合があるので、被害者の保護に万全を期する観点から合理的統一を図ること。特に米国との外交交渉においては、本法に比し被害者が不利にならないよう昭和三十九年八月二十八日の閣議了解の線の実現を図ること。
二陸上、海上における原子炉等による損害賠償の差別をなくすため、ブラッセル条約の検討等国際条約の確立のため早急に努力すること。
三原子力損害は広域かつ甚大であることに鑑み、損害の発生を防止する監視機関を設置するとともに住民の代表学識経験者等、第三者の参加を図り、その民主的左運営を図ること。
四原子力事業に従事する者が受ける損害及び損失については、新らたな補償措置を講ずるとともに一般住民に対しては、退避体制等の確立など万全を期すること。
日本原子力船開発事業団法の存続期間を延長するにあたり、政府は、次の事項に関し、特に配慮すべきである。
一原子力船の開発、利用は、あくまで平和目的に限り、かつ、その安全性の確保に留意し、災害の防止に万全を期すること。
二原子力船にかかる造船技術並びに関連諸技術を最高度に活用し、本法の存続期間中に所期の目的を達すること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=106501033)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。