化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案
衆議院 商工委員会
昭和48年法律第117号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院商工委員会・商工委員会、公害対策及び環境保全特別委員会連合審査会
衆議院商工委員会・商工委員会公害対策並びに環境保全特別委員会連合審査会
- S48.7.11趣旨説明商工委員会 41261
- S48.7.20質疑商工委員会 4535
- S48.9.7質疑商工委員会 50123
- S48.9.11質疑商工委員会 51174
- S48.9.12質疑商工委員会公害対策並びに環境保全特別委員会連合審査会 2192
- S48.9.12質疑・採決・附帯決議商工委員会 5218
- S48.9.18委員長報告・採決・附帯決議本会議 5931
提案理由
中曽根康弘 通商産業大臣 昭和48年4月12日化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
御承知のように、PCBによる環境汚染及び被害の発生は、非常に大きな社会問題となりましたが、これは、従来の化学物質の安全性に関する考え方に再検討を加える必要のあることを痛感させるものでありました。すなわち、新しい化学物質の開発と利用は、国民生活の充実に多大な寄与をなすものである反面、このような化学物質の中には、その使用に際し、あるいは使用後の廃棄を通じて環境を汚染し、人の健康に被害を及ぼすおそれのあるものがあり、その防止体制の確立をはかる必要があることが明らかになったわけであります。
このような新しい人体汚染の形態は、化学工業の発展に伴い新たな化学物質が年々生産されていることを考えるとき、単にPCBの問題としてのみではなく、化学物質全般について安全性を確認する必要があること、そしてその結果問題とされた化学物質について環境に放出されないよう、その製造、輸入、使用及び消費にわたりクローズドシステムを確立する必要のあることを強く認識させるものであります。
このような状況にかんがみ、昨年の国会におかれましても、早急にその対策を講ずるべきである旨の決議がなされたところであり、政府といたしましては、昨年七月から、通商産業省に設置されております軽工業生産技術審議会に「化学物質の安全確保対策のあり方」について審議をお願いし、慎重な検討をいただいたところであります。その結果、昨年十二月に、施策の内容につき同審議会の答申を得ましたので、ここにその趣旨に沿って化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律案を提出することといたした次第であります。
次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。
第一は、新規化学物質に関する審査及び規制であります。
これは、新規の化学物質を制造し、または輸入しようとする場合において、それについての事前審査制を採用し、その化学物質がPCBに見られるように自然環境において分解しにくく、生物の体内に蓄積されやすいものであり、かつ、継続的に摂取される場合には人の健康をそこなうおそれがあるものであるかどうかを判定することとし、安全であるという判定結果が出るまでの間は、製造または輸入を認めないこととしております。
第二は特定化学物質の規制であります。
ただいま申し上げました難分解性等の性状を有し、かつ、人の健康をそこなうおそれがある化学物質は、これを政令で特定化学物質として指定し、その製造、使用等において環境汚染をもたらさないよう所要の規制を行なうこととしております。すなわち、特定化学物質の製造及び輸入については許可制とし、その使用についても、環境汚染を生ずるおそれがない一定の用途以外の使用は認めないこととするとともに、製造業者及び使用業者に対しては、その製造及び使用に関し、一定の技術上の基準を順守させることとしておりますほか、既存化学物質が特定化学物質に指定された際すでに出回っている当該化学物質及びそれを使用した製品についてその回収をはかること等、環境の汚染の進行を防止するために必要な措置をとるべきことを命ずることができることとしております。
なお、既存化学物質のうち、特定化学物質の疑いの濃いものについては、特定化学物質の指定に至らない間においても、その製造、輸入または使用の制限に関し必要な勧告をすることができることとしております。
以上がこの法律案の提案理由及びその要旨でありますが、以上申し上げました本法案に基づく施策は、PCB類似の性状を有する化学物質による環境の汚染を未然に防止するために必要なものであり、既存の公害関係法規等と相まって、化学物質の安全性を確保する上できわめて重要な役割りを果たすものであると考えております。何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
第71回国会参議院商工委員会会議録第4号11頁(昭和48年4月12日)〔中曽根康弘通商産業大臣発言・発言番号52〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、本法施行にあたり、現在PCB等の有害物質による汚染が深刻化し、国民の生活に多大の不安を与えている実情にかんがみ、今後PCB類似の化学物質による環境汚染を絶対に生ぜしめないようにするとともに、当面の汚染問題に対処するために、次の諸点について特に火急かつ万全の措置を講ずべきである。
一特定化学物質として指定された化学物質は、それが如何に工業原料その他に優れた化学物質であっても、生活優先、人の健康と命を守る見地から原則として製造、輸入は禁止すること。
一既存化学物質についても、その安全性確認のため、早急に総点検を実施し、その結果、特定化学物質として指定された化学物質、あるいは特定化学物質となる疑いのある化学物質については、環境汚染の進行を防止するため、すみやかに回収命令の発動、勧告等必要な措置を講ずること。なお、回収命令の発動、勧告等を行なった場合は、その旨公表すること。
一新規化学物質等の安全性を確認するために行なう命令で定める必要な試験の項目、技術的な事項については、試験分析技術等学術の進歩に即して見直しを行なうこと。
一化学物質の安全性を確認するための試験機関である財団法人化学品検査協会の業務運営等については、同協会の公共性にかんがみ公正が確保されるよう十分指導監督を行なうとともに、その他関係試験機関を含め、試験体制の整備拡充を図ること。
一PCB及びPCB使用製品の回収の促進を図るとともに、回収されたPCB等の管理、処理体制の整備を図ること。
一PCB等の有害物質による水域、土壌等の汚染については、早急にその汚染源の徹底的究明をするとともに、汚染源企業を公表すること。
一汚染水域における漁獲の中止に関する指導を行なうとともに、漁獲中止に伴う漁業者および関連事業者に対する漁業補償等その救済について原因者負担の原則により適切な指導を行なうこと。
一食品中のPCB暫定規制値の見直しを行なうとともに、未だ規制値を設けていない米、野菜等についても、早急に規制値を設け公表すること。
一PCB等を含むヘドロの処理については、二次公害を発生させないよう万全の対策を講じつつ、しゅんせつ、密閉化等の処理を実行すること。
一有害物質による環境汚染防止対策の実効を期するため、行政を強化拡充するとともに、総合対策を推進すること。
一現在の公害行政は、環境庁、厚生省、水産庁、通商産業省等各省庁にわたり、その責任の所在が不明確であることにかんがみ、公害行政の責任体制を確立すること。
政府は、本法施行にあたり、化学物質による環境汚染の防止に万全を期するため、特に次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
一新規化学物質の審査体制を早急に整備するとともに、審査にあたつては、厳密かつ慎重な試験を実施し、その試験成績に基づいて正確な判定を行なうこと。
二特定化学物質の製造、輸入、使用は原則として禁止するという基本方針を確立するとともに、特定化学物質の指定に伴う第二十二条の措置命令及び指定後における第十八条の改善命令を機を失せず発動できるよう、常時監視を怠らないこと。
三既存化学物質について、政府、民間、大学等の試験研究機関を活用して、早急に物質ごとの性状に関する審査を実施し、その試験データを公表するとともに、特定化学物質に該当する疑いがある物質については、遅滞なく、第二十三条の勧告を行ない、なお、その旨を公表すること。
四本法を含め、化学物質による環境汚染を防止するための諸法令の運用にあたつては、縦割り行政の弊害を排除して、有機的連繋を図るとともに、責任体制の確立に努めること。
五人の健康に止まらず、生活環境に被害を与えるおそれがある化学物質による環境汚染を防止するため、必要な規制等の措置について検討を進めること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107101108)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。