公害紛争処理法の一部を改正する法律案
衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会
昭和49年法律第84号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会
- S49.3.15趣旨説明公害対策並びに環境保全特別委員会 10167
- S49.4.4質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 16186
- S49.4.11質疑公害対策並びに環境保全特別委員会 1769
- S49.4.26質疑・討論・採決・附帯決議公害対策並びに環境保全特別委員会 20211
- S49.5.7委員長報告・採決・附帯決議本会議 2828
参議院公害対策及び環境保全特別委員会
- S49.5.15趣旨説明公害対策及び環境保全特別委員会 11148
- S49.5.31質疑・採決・附帯決議公害対策及び環境保全特別委員会 15171
- S49.6.3採決・委員長報告本会議 2547
- S49.6.18附帯決議本会議 1
提案理由
小坂徳三郎 総理府総務長官・沖縄開発庁長官 昭和49年3月15日ただいま議題となりました公害紛争処理法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
公害紛争処理法は、公害紛争を迅速、簡易かつ適正に解決することを目的として制定されたものであり、この目的を達成するために現在では和解の仲介、調停、仲裁及び裁定の制度が設けられ、いずれも紛争当事者の申請に基づいて、中央においては公害等調整委員会、地方においては都道府県公害審査会等がその処理に当たっておりますことは、御承知のとおりであります。本法が施行されましてから昨年末まで約三年の間において、公害等調整委員会及び都道府県公害審査会等に係属した事件は、百二十件であり、そのうち、すでに解決されたものは六十三件、その解決に要した期間は平均十カ月となっておりまして、おおむね所期の目的は達せられていると考えられるのであります。
しかしながら、最近における公害紛争の実態を見ますと、その規模が一そう拡大するとともに、当事者間の対立が激化し、かつ紛争が長期化する様相が顕著にうかがえるのでありまして、これを放置するときは、緊急を要する被害者の救済が遅延する等の社会的に重大な影響が生ずることが憂えられるのであります。このような事態に対処するためには、紛争当事者の申請を待って紛争処理機関が解決に乗り出す現行の諸制度のみで十分であるとは、とうていいえないのでありまして、当事者からの申請を待つことなく、できるだけ早い機会に紛争処理機関があっせんに乗り出し、紛争の解決に力をかすことができる制度を設ける必要があると考えられるのであります。これが本法を改正する理由の第一点であります。
次に、今日までの本法の運用の経験等にかんがみますと、本法に定められている公害紛争解決のための主要な手段であります調停、仲裁または裁定の手続中に紛争処理機関が紛争解決のために機に応じて当事者に必要な事項の勧告を行なうことができる制度を設ける等、これらの手続について制度の整備充実をはかるため規定の整備を行なう必要が痛感されるのであります。これが本法を改正する理由の第二点であります。
さらに、住民から申し出される公害苦情につきましては、地方公共団体に置かれております公害苦情相談員が中心となってその処理に当たっておりますが、当該業務の重要性にかんがみ、その活動の一そうの活発化に資するため、公害苦情相談員の職務を一段と明確にする等の措置を講じて苦情処理体制の整備をはかる必要があるのであります。これが本法を改正する理由の第三点であります。
以下、改正の概要について御説明申し上げます。
改正点の第一は、申請を待たずに行なうあっせんの制度を設けることでございます。公害に係る被害の程度が著しく、かつ、その範囲が広い紛争が生じ、当事者間の交渉も円滑には進行しておらず、これを放置するときは、多数の被害者の生活の困窮等社会的に重大な影響があると認められる場合には、当事者からの申請を待たずに、公害等調整委員会または都道府県公害審査会は、当事者の意見を聞いて紛争のあっせんを行なうことができることといたしますとともに、あっせん手続に入った後で、あっせんでの紛争の解決は困難であるが、調停なら解決の見込みがある等の場合には、当事者の意見を聞いて調停に移行することができる道も開くことといたしております。
なお、これに関連いたしまして、現行の和解の仲介の制度は、あっせんの制度に吸収することとし、現行では和解の仲介を行なっていなかった公害等調整委員会におきましても申請に係るあっせんを行なうことができることといたしております。
改正点の第二は、現行の調停、仲裁及び裁定の制度について、その整備充実をはかったことであります。
その一は、調停委員会、仲裁委員会または裁定委員会は、それぞれ、調停、仲裁または裁定の手続中において、仮の措置として、当事者に対し、調停、仲裁または裁定のために必要と認められる措置をとることを勧告することができることといたしております。
その二は、現行制度におきましては、調停委員会は相当と認めるときは当事者に対し調停案の受諾を勧告することができることになっておりますが、今回、この受諾勧告を行なった場合に必要があるときは、その調停案を公表することができることといたしております。
その三は、義務履行の確保のための措置でございますが、公害等調整委員会または都道府県公害審査会等は、権利者の申し出に基づき、義務者に対し、調停、仲裁または責任裁定で定められた義務の履行に関し、必要な勧告を行なうことができることとし、確実かつ円滑な義務の履行を確保することといたしております。
なお、右のほか、事件処理の円滑化と迅速化をはかるため、調停事件の引き継ぎに関する規定の整備を行なうことといたしております。
改正点の第三は、公害に関する苦情の処理体制を整備するための措置を講じたことでございます。住民から申し出される公害に関する苦情を処理するため全国の都道府県及び多くの市町村には、公害苦情相談員が置かれておりますが、その苦情処理活動の活発化に資するため、苦情相談員の職務を明確にいたしますとともに、地方公共団体における公害に関する苦情の処理状況を常時的確に把握しておくため、公害等調整委員会は地方公共団体の長に対し、都道府県知事は市町村長に対し、これらについての報告を求めることができることといたしております。
なお、この法律は、公布の日から起算して六カ月をこえない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。
第72回国会衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会議録第10号9頁(昭和49年3月15日)〔小坂徳三郎総理府総務長官発言・発言番号19〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
まず、案文を朗読いたします。公害紛争処理法の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は、本法の施行にあたつて、次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。
一典型七公害以外の日照等に原因する紛争が多発している実情にかんがみ、紛争処理制度の対象となる範囲を拡大するよう速やかに検討すること。
二職権によるあつせん及び調停の開始にあたつては、当事者、特に被害者の意思を尊重し、当事者の自主的解決の努力を妨げることのないよう配慮すること。
三公害紛争の迅速かつ適切な処理の必要性にかんがみ、調査体制の充実、運営の改善に努めるとともに、被害者の多くが生活に困窮している実情を考慮し、費用負担の軽減等について配慮すること。
四公害紛争の動向等にかんがみ、公害審査会を置いていない府県に対し、公害審査会の設置について再検討するよう指導するとともに、地方公共団体が公害紛争処理のために支出する経費について十分配慮すること。
政府は、公害紛争処理において被害者保護の趣旨を十分に生かすよう、本法施行にあたつて、次の諸点について、適切な措置を講ずべきである。
一典型七公害以外の日照等に係る紛争をも紛争処理制度の対象範囲とするよう速やかに検討すること。
二職権によるあつせん及び調停の開始にあたつては、当事者、とくに被害者の意思を尊重して、紛争の自主的解決の努力を妨げることのないよう配慮すること。
三裁定制度が、十分に活用されるようその趣旨の普及に努めること。
四被害者の多くが生活に困窮している実情を考慮し、紛争に係る費用負担の軽減等について配慮すること。
五公害紛争の動向にかんがみ、公害審査会を未だ設置していない府県に対し、その設置について再検討するよう指導するとともに、地方公共団体が支出する紛争処理の経費について十分配慮すること。
六紛争の迅速かつ適切な処理に資するため、紛争処理に係る調査体制の充実、運営の改善に努めること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107201072)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。