特許法等の一部を改正する法律案
衆議院 商工委員会
昭和50年法律第46号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院商工委員会
- S50.2.18趣旨説明・補足説明商工委員会 46
- S50.3.13質疑商工委員会 776
- S50.3.18質疑商工委員会 8110
- S50.3.20質疑商工委員会 9119
- S50.3.25質疑商工委員会 10121
- S50.3.27質疑・採決・附帯決議商工委員会 11289
- S50.3.31附帯決議・採決・委員長報告本会議 990
衆議院商工委員会
- S50.4.15趣旨説明商工委員会 13108
- S50.5.27質疑商工委員会 17199
- S50.5.28質疑・採決・附帯決議商工委員会 18203
- S50.5.29採決・委員長報告・附帯決議本会議 2418
提案理由
河本敏夫 通商産業大臣 昭和50年2月18日特許法等の一部を改正する法律案につき、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。
わが国の工業所有権制度は、九十年に及ぶ歴史を有しておりますが、現在、物質特許制度及び多項制の採用、商法登録出願の処理の迅速化等幾つかの重要な問題を抱えております。また、近年における工業所有権制度の国際化の動きは顕著なものがあり、わが国もこのような動向に的確に対応する体制を整備する必要がありますが、そのためにも前記の諸問題を解決することが緊要となっております。
すなわち、わが国が今後さらに国民の福祉水準の向上を図るとともに、国際社会における貢献を高めるためには、国民の知的活動の成果が十分に発揮される環境を整備することが必要不可欠であり、特許制度の重要性は従来にも増して高まりつつありますが、現在の特許法においては、化学物資、医薬、飲食物等の発明について特許を与えないことになっておりますので、研究開発活動のあり方がともすればゆがめられ、また無用の係争が生じております。さらに、わが国は、長年にわたり特許請求の範囲及び実用新案登録の請求の範囲について、いわゆる単項制を採用してきておりますが、工業所有権制度における国際的協調を図り、出願人及び第三者の便宜に資するという新しい時代の要請にこたえるため、多項制を採用する必要性が高まってまいりました。これらの事態に対処するため、昭和四十六年から工業所有権審議会において慎重な討議を重ねた結果、昨年九月に「物質特許制度及び多項制の採用に関する答申」が提出されたのであります。
次に、商標制度につきましては、近年における出願の激増のため、増員、機構の拡充、予算の増加等種々の対策を実施しているにもかかわらず、審査に要する期間は著しく長期化するとともに、特許庁には未処理案件が累増しており、このままでは商標制度の意義が失われるおそれがあります。また、出願の迅速な処理は、商標制度の国際的協調の観点からも不可欠の要件となっております。このため、商標登録出願の迅速な処理を図ることが緊要となっており、その対策について工業所有権審議会において慎重な検討を重ねた結果、昨年十二月に「商標制度の改正に関する答申」が提出されたのであります。
本法律案は、これらの答申に基づき、さらに関係各方面の意見をも取り入れて作成したものであり、いずれも可及的速かに改正を要すべき事項を内容とするものであります。
次に、本法律案の概要につき、御説明申し上げます。
第一は、物質特許制度を採用したことであります。
化学物質、医薬、飲食物等につきましては、近年、これらの産業部門の技術水準に急速な向上が見られ、研究開発をさらに促進するためにはその発明の適切な保護を図る必要があること、わが国経済の発展に伴ってこれらの物質についても多種多様の商品が豊富に供給されておること等から、多くの先進工業国の例にならってわが国においてもこれらの物質の発明について特許を認めることとしたものであります。
第二に、多項制を採用したことであります。
従来、特許または実用新案登録の出願に当たって、出願人は、一つの発明または考案については単一の項目によってその請求の範囲を記載することとなっておりましたが、複数の項目によって請求の範囲を記載できる、いわゆる多項制によれば、特許権等の権利範囲を従来より明確にすることができ、また国際的にもほとんどの国が多項制を採用していること、現段階から多項制を採用しておけば近い将来発効すると見込まれる特許協力条約にも円滑に即応することができること等から、わが国においてもこれを採用することとしたものであります。
第三は、登録商標の使用義務を強化したことであります。
登録商標の中に使用されていないものが相当存在している状況にかんがみ、出願の迅速な処理及び使用されないこととなるような商標の出願の抑制を図る見地から、商標権の存在期間の更新登録の際過去三年以内に使用されたことがない登録商標については更新登録を認めないこととするとともに、過去三年以内に使用されたことがない登録商標の登録を取り消すことができる、いわゆる不使用取り消し審判における使用の事実に関する挙証責任を審判の請求人から被請求人に転換することにより、不使用取り消し審判を容易に活用し得ることとしたものであります。
このほか、第七十四臨時国会において承認されましたパリ条約のストックホルム改正条約の批准に伴って必要となる特許法、商標法等の関連規定を整備するとともに、特許料・登録料及び手数料を最近の物価水準等を勘案して妥当な水準に改正することとしております。
本法律案は、これらの事項について所要の措置を講じるため、特許法、実用新案法、意匠法、商標法及び不正競争防止法についてそれぞれ所要の改正を行うものでございます。
以上が本法律案の要旨であります。何とぞ慎重御審議の上御賛同くださいますようお願い申し上げます。
第75回国会参議院商工委員会会議録第4号1頁(昭和50年2月18日)〔河本敏夫通商産業大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)附帯決議
政府は、本法施行にあたり、次の諸点につき万全を期すべきである。
一多項性の採用にあたつては、運用要綱等を通じて、その趣旨、実施態様の記載方法等を明らかにし、もつて円滑な運用に努めること。
二特許情報の増大、国際化の進展に対処するため、発明の要約の整備等の対策をすみやかに検討するとともに、特許分類付与の精度向上のために、万全の措置を講ずること。
三日本特許情報センターは、新規性調査機関として必らずしも十分な機能を果たし得る状況にないことにかんがみ、その強化拡充に努めること。
四商標の出願手数料に関する商標法第七十六条の政令の制定にあたつては、出願人に急激な影響を与えることのないよう配慮すること。
五登録商標の不使用に関する商標法第十九条及び第五十条の「正当な理由」の解釈及びその運用については、産業の実態等を考慮して弾力的に行うこと。
六裁定制度の運用を円滑ならしめるため、特許法第九十三条の「公共の利益」の解釈を明確にするとともに、その運用要領を作成し、裁定にあたつては、工業所有権審議会の意見を尊重すること。
七審査官、審判官等の待遇を改善するとともに、審査官、審判官等に対する研修を強化する等その資質の向上に努めること。
八ソフトウエアーならびに学校法人、宗教法人、サービスマーク等の登録に関する法的保護についてすみやかに検討すること。
政府は、本法施行に当たり、内外における諸情勢の進展に即応して工業所有権制度を円滑に運用するため、特に次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一特許情報の激増に対処し、その効率的利用を図るため、特許庁における分類審査機能の強化及び審査資料の収集整理についての改善を含め、情報処理業務と機構の拡充を図り、特に公開公報の内容及び発行の態様につき早急に再検討を加え、必要な法的措置を速やかに国会に提案すること。なお、(財)日本特許情報センターは、新規性調査機関として、必ずしも所期の目的に合致していない実情にかんがみ、そのあり方を再検討し、必要な強化拡充措置を講ずること。
二審査・審判及び事務処理に従事する職員の増員、その待遇改善、庁舎設備等執務環境の整備並びに職員研修制度の強化等を早急に行い、有能な人材の育成と確保に努めること。また、工業所有権制度の国際化に対応し得るよう、専門の職員を確保すること。
三物質特許制度のもとで、特許権を利用した市場支配力の拡大、技術の独占による国民生活及び中小企業に対する不利益等の弊害が生ずることのないよう、速やかに具体的措置を検討し、必要な措置を講ずること。特に、通常実施権の設定の裁定は、請求から裁定まで六カ月以内において行うよう万全の措置を講ずること。
四多項制の採用に当たつては、特許請求の記載方法と解釈の明確化、運用基準の確立及びこれらの内容の周知徹底を図ることにより、その円滑な運用に努めること。
五特許料等の値上げに当たつては、その納付が困難なために権利の取得ができない事態を招かないよう減免・猶予について配慮し、各手数料特に商標登録出願手数料の金額を定める政令の制定に当たつては、出願人に急激な負担増をもたらすことのないように配慮するとともに、値上げに伴う増収分は、あげて特許情報管理の充実等特許行政を強化するための経費に充当するよう努めること。
六多項制に関する規定並びに学校法人、宗教法人の標章、サービスマーク及びソフトウエアの法的保護のほか、工業所有権制度の基本問題に対する検討を速やかに行うこと。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107501033)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。