民法等の一部を改正する法律案
衆議院 法務委員会
昭和51年法律第66号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
稻葉修 法務大臣 昭和51年5月11日民法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
民事法の分野における男女の平等及び人権の保障につきましては、理念上のみならず、実質的にも、また制度の上においても、確立されるべきものであることは申すまでもありませんが、わが国の婚姻に関する実情や人権に対する国民意識の推移等にかんがみますと、妻の法的地位及び戸籍制度については、なお改善すべき点があります。
そこで、この法律案は、妻の地位の実質的向上を図るため、離婚復氏の制度、婚姻事件に関する裁判管轄及び嫡出子出生の届け出をする者について改善を加えるとともに、国民のプライバシー保護の観点から戸籍公開の制度等を改善するため、民法、人事訴訟手続法及び戸籍法について所要の改正を行おうとするものであります。
この法律案の要点を申し上げますと、第一は、民法の改正であります。現行民法第七百六十七条は、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、離婚により当然婚姻前の氏に復するものとしておりますが、このことによりまして復氏する者に社会生活上の不利益をもたらす可能性もありますし、離婚後母とその養育する子との氏が異なることによる不都合を生ずるおそれもあります。
そこで、離婚による復氏の原則を維持しながら、離婚後も引き続き婚姻中の氏を称しようとする者については、離婚後三月以内に戸籍法による届け出をすることにより婚姻中の氏を称することができることといたしております。
第二は、人事訴訟手続法の改正であります。現行人事訴訟手続法第一条は、離婚等の婚姻事件の訴えは、婚姻の際氏を称した者の現在の住所地の裁判所が専属的に管轄することとしておりますが、現在の婚姻の実情を見ますと、夫の氏を称する婚姻がほとんどでありますから、妻が離婚訴訟を遂行するには、多くの場合、夫の住所地に出向かなければならない不便があるのみならず、証拠収集等の点からも必ずしも合理的ではありません。
そこで、当事者の便宜及び証拠収集の容易さ等の観点から、裁判管轄を合理化するため、婚姻事件の訴えは、まず、夫婦の共通の住所地の裁判所、次には、夫婦の最後の共通の住所地の裁判所の管轄区域内に夫または妻が住所を有するときは、その住所地の裁判所、さらに、それ以外の場合には、夫または妻の住所地の裁判所の管轄に専属することといたしますとともに、具体的事案に応じた管轄の合理化を図るため、他の管轄裁判所へ移送する制度を設けることといたしております。
第三は、戸籍法の改正であります。現行戸籍法第十条及び第十二条は、何人でも手数料を納めれば、戸籍及び除籍の閲覧またはこれらの謄抄本の交付を請求することができるものとしておりますが、個人のプライバシーが不当に侵害されることを防止するため、申請件数が少なく、市町村の手数もかかる戸籍及び除籍の閲覧の制度を廃止するとともに、他人の戸籍の謄抄本の請求をするには、一定の場合を除き、その事由を明らかにすべきものとし、請求が不当の目的によることが明らかなときは、市町村長はその請求を拒むことができることとし、他人の除籍の謄抄本の請求は、一定の場合を除き、相続関係を証明する等の必要があるときに限りこれをすることができることといたしております。
また、現行戸籍法第五十二条は、嫡出子の出生届につき父を第一順位の届け出義務者としておりますが、これを改め、母も父と同順位において届け出ができることとするほか、死亡届及び裁判に基づく戸籍の届け出について、可及的速やかに届け出がされるよう、届け出人の範囲を拡大しております。
さらに、戸籍及び除籍の謄抄本の交付について前述のような改正をすることに伴い、不正の方法で戸籍等の謄抄本の交付を受けた者に対し過料を課するとともに、戸籍届け出の遅延に関する過料額を引き上げる等所要の罰則規定を整備しております。
以上が民法等の一部を改正する法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
第77回国会衆議院法務委員会議録第8号7頁(昭和51年5月11日)〔稻葉修法務大臣発言・発言番号64〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=107701030)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。