航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
昭和52年法律第82号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会・法務委員会地方行政委員会外務委員会運輸委員会交通安全対策特別委員会連合審査会
- S52.11.1趣旨説明法務委員会 4207
- S52.11.2質疑法務委員会 5164
- S52.11.9質疑法務委員会 7193
- S52.11.11質疑法務委員会地方行政委員会外務委員会運輸委員会交通安全対策特別委員会連合審査会 1189
- S52.11.15質疑・採決・附帯決議法務委員会 863
- S52.11.15委員長報告・採決・附帯決議本会議 1212
参議院法務委員会・法務委員会、地方行政委員会、外務委員会連合審査会・法務委員会、運輸委員会、交通安全対策特別委員会連合審査会
- S52.11.15趣旨説明・質疑法務委員会 331
- S52.11.17質疑法務委員会 4274
- S52.11.21質疑法務委員会、地方行政委員会、外務委員会連合審査会 1108
- S52.11.21質疑法務委員会、運輸委員会、交通安全対策特別委員会連合審査会 1104
- S52.11.22質疑・附帯決議・採決法務委員会 563
- S52.11.25附帯決議・委員長報告・採決本会議 1235
提案理由
瀬戸山三男 法務大臣 昭和52年11月1日航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律案について、提案の理由を御説明いたします。
近時、航空機乗っ取り事件等一部過激派分子による各種不法事犯は、国際的に見ましても、その手段、態様等において、一段と悪質化する傾向を示しており、特に先般の日航機乗っ取り事件においては、多数の乗客、乗員の生命が重大な危険にさらされただけでなく、一般刑事犯を含む被拘禁者の奪取等およそ法秩序を確立して民主主義体制を堅持する上から、とうてい看過し得ない容易ならざる結果を招来するに至ったことはまことに憂慮にたえないところであります。
もとより、政府といたしましては、かねて、この種犯罪に対する適切な各種取り締まり対策の推進を図ってきたのでありますが、かかる事態を前にして、さらに強力にして実効ある対応策を樹立する必要が痛感されるところでありまして、ここにおいて、政府としては、関係機関を中心とし国民各界層の協力のもとに、厳然たる決意を持って各般にわたる行政諸施策の一層の徹底を図るとともに、法制面の問題点につき緊急の改善措置を講ずることにより、これら行政諸施策と相まって、この種犯罪の未然防止に万全を期し、あわせて犯人に対する実効ある科刑の実現に資することとする趣旨で、この法律案を提出することといたした次第であります。
この法律案の骨子は、次のとおりであります。
その一は、航空機の強取等の処罰に関する法律の一部を改正し、航空機を強取した者等が、当該航空機内にある者を人質にして、第三者に対し不法な要求をする行為について特別の処罰規定を設け、「無期又は十年以上の懲役」をもって処罰することとするものであります。
すなわち、最近の航空機乗っ取り事件においては、航行中の航空機を強取した上、乗客等を人質として、第三者に対して不法な要求をする例が多く、しかも、その内容は、身代金の要求にとどまらず、拘禁中の被告人や受刑者の釈放を求めるなど法治国家として容認しがたい事項にまで拡大してきているのでありまして、かかる不法な要求をする行為に対して、その実態に応じた処罰規定を設けて一般の強取犯よりも重い法定刑をもって臨むものとすることは、国家刑政上から見ても、きわめて緊要と考えた次第であります。
その二は、航空の危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律の一部を改正し、不法に業務中の航空機内に爆発物、銃砲、刀剣類または火炎びんその他航空の危険を生じさせるおそれのある物件を持ち込む行為について特別の処罰規定を設け、爆発物に関しては「三年以上の有期懲役」、銃砲、刀剣類等に関しては「二年以上の有期懲役」をもって処罰することとするものであります。
すなわち、航空機乗っ取り事件の防止対策の一といたしまして、航空機内への爆発物、銃砲、刀剣類等の持ち込みを防止することが肝要と考えられるので、このため、空港における安全検査等の強化徹底と相まって、これらの物件を不法に航空機内に持ち込む行為に対して一般の不法所持罪よりも重い法定刑をもって臨み、もってこの種事犯の未然防止に資することとしたものであります。
その三は、旅券法の一部を改正し、現在刑事訴追を受けている者等に対する旅券発給制限の対象となる罪の法定刑が長期五年以上となっているのを二年以上に改め、新たに旅券の返納命令の通知内容を公告して通知にかえる制度を設けるとともに、旅券法違反の罰則の法定刑を引き上げ、一年以下の懲役を三年以下の懲役に改めること等とするものであります。
すなわち、過激派関係者により犯される犯罪の中には、法定刑の長期が五年未満のものも含まれており、これらの者については旅券発給の面からも適切な規制を行うことがぜひとも必要と考えます。かかる旅券発給の規制によりこれら過激派関係者が外国に渡航してわが国の刑罰権から逃れることを防止するとともに、航空機のハイジャック等国際社会一般の法秩序に対する重大な侵害を未然に防止するよう努めることが、わが国にとって緊急の必要事であると考えられます。
また、公告による旅券返納命令の制度を新設して、返納事由に該当するに至った者については、その所在が判明しない場合でも、有効に旅券返納命令を発し得るものとすることにより、その所持する旅券を失効させるとともに、関係諸外国にもこのことを通知して過激派関係者の外国での滞在ないしは国際間の移動に歯どめをかけ、外国官憲の協力のもとに本人を帰国させることも図ろうとするものであります。
さらに、虚偽申請による旅券の取得、旅券の不正行使等は、過激派関係者の不正な海外渡航に利用されるところであることにもかんがみ、この罰則を強化して旅券犯罪の防止を図る必要があります。
その他、関連規定の整理を行うこととしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
第82回国会衆議院法務委員会議録第4号1頁(昭和52年11月1日)〔瀬戸山三男法務大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、本法の施行に伴い、行政措置による諸般の対策を適切に実行しつつ、ハイジャック等非人道的暴力行為の絶滅を期するために、次の諸項を含めて格段の努力をすべきである。
一政府部内の対策本部は、恒常的に非人道的暴力行為の絶滅のため予想される行為のあらゆる分野にわたり検討を行い、各省庁を指導して統一的かつ機動的な運営を行い、先行して予防措置を講ずるとともに、緊急事態に応じ敏速に対処しうるよう体制をとるべきである。
二国際的な相互協力は、警察、検察、外交、運輸等各般にわたつて強化する必要あるにかんがみ、国内における国際的協力体制を整備するとともに、各国に対しても積極的に協力体制整備を求めるための努力をすべきである。
三国連で決議されたハイジャック防止決議の実施促進を図るとともに、ハイジャックに関する三国際条約の未加盟国の加入を要請し、併せて同条約の不充分な点についての改善に今後努力すべきである。
四国際刑事警察機構や在外公館、民間機関等の協力を得て情報の収集を強化し、日本赤軍等過激派の公開捜査に特段の工夫をすべきである。
五過激派によるハイジャック事件のみならず、暴力団犯罪や内ゲバ事件等国民生活の周辺に惹起する非人道的暴力行為に対する取締り及び刑罰の強化についても検討すべきである。
六機内持込品の制限等についての国際運送約款の安全管理条項が国際的に厳正に実行されていない実情にかんがみ、各国に協力を要請し、また各国の空港における安全検査体制の強化を求めるべきである。この間、日航等は、ダブルチェックをはじめ自主的防衛措置の整備に遺憾のないようすべきである。
七国際的司法共助の強化が必要であるから、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の整備を検討すべきである。
八逃亡犯罪人の引渡し条約の締結国を拡大することについて努力をすべきである。
九今日までのハイジャック関係犯人については、国民世論にかんがみ、あくまでその追及、逮捕、引渡等について全力を尽くし、必ず成果を期すべきである。
十本法において加重された旅券発給制限については、その適用をハイジャック等非人道的暴力行為を行うおそれのある該当者を対象とするものとし、いやしくも一般国民の渡航の自由を侵すことのないよう、その運用につき特段の留意をなすべきである。
十一以上の各般の措置を実行するに当たつて、一般国民の人権に不当な制限を与えることのないよう留意すべきである。
政府は、本法の施行に伴い、ハイジヤツク等非人道的暴力行為の絶滅のため必要なる諸般の行政措置を強化すべきであるが、特に次の諸事項について格段の努力をすべきである。
一政府部内のハイジヤツク等非人道的暴力防止対策本部は、予想される非人道的暴力行為のすべてにわたり検討を行い、各省庁を指導して統一的な運営を図り、適切な予防措置を講ずるとともに、緊急事態に応じ敏速に対処し得る体制を整備すべきである。
二この種暴力行為の絶滅のためには、警察、検察、運輸、外交等諸般の分野にわたる国際的相互協力を強化する必要にかんがみ、国内における国際的協力体制を整備するとともに、各国に対しても積極的に協力体制整備を求めるための努力をなすべきである。
三ハイジヤツク防止に関する三国際条約に対し、末加盟国の加入を要請するとともに、今後、同条約の整備、改善並びに人質行為防止に関する国際条約の成立をめざして格段の努力をなすべきである。
四逃亡犯罪人引渡し条約の締結国を拡大することについて、なお一層の努力をなすべきである。
五国際刑事警察機構や在外公館、民間機関等の協力を得て、情報の収集を強化し、日本赤軍等過激派の捜査に特段の工夫をこらし、国外にあるすべてのハイジヤツク関係犯人の追及、逮捕、引渡し等についての成果を期すべきである。
六国際的司法共助の強化に努め、国際的な協力を促進するとともに、これに伴う国内法の整備を検討すべきである。
七機内持ち込み品の制限及び検査等に関する国際運送約款の安全管理条項の実施が国際的に見て、なお不十分な実情にかんがみ、各国に協力を要請して、すべての国際空港における右安全管理条項の完全実施を求め、もつて、安全検査体制を強化すべきである。この間、日航等わが国の航空会社に対しては、ダブルチエツクをはじめとする自主的防衛措置の整備に遺憾のないよう指導監督の徹底を図るべきである。
八本法において加重された旅券発給制限については、その通用をハイジヤツク等非人道的暴力行為を行うおそれのある該当者を対象とするものとし、いやしくも一般国民の渡航の自由を侵すことのないよう、その運用につき特段の留意をなすべきである。
九過激派によるハイジヤツク事件のみならず、内ゲバ事件や暴力団犯罪等国民生活の周辺に頻発する非人道的暴力行為に対する取締りの強化についてもこの際、検討を深めるべきである。
十以上の各般の措置を実行するに当たつては、一般国民の基本的人権に不当な制限を与えることのないよう特に留意すべきである。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=108201011)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。