水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案
参議院 公害対策及び環境保全特別委員会
昭和53年法律第104号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会
- S53.10.13趣旨説明公害対策並びに環境保全特別委員会 3188
- S53.10.19質疑・修正案趣旨説明・討論・採決(修正)・附帯決議・修正案公害対策並びに環境保全特別委員会 4142
- S53.10.19採決・委員長報告・附帯決議本会議 914
参議院公害対策及び環境保全特別委員会
- S53.10.20趣旨説明・質疑・採決・討論・附帯決議公害対策及び環境保全特別委員会 2299
- S53.10.20委員長報告・採決本会議 755
- S54.1.30附帯決議本会議 1
提案理由
福島譲二 議員(発議者) 昭和53年10月13日ただいま議題となりました水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。
御承知のように水俣病は、わが国において他に類例を見ないほど大きい水質汚濁による公害であり、水俣病患者の迅速かつ公正な保護を図ることは、今日当面している最大の環境問題の一つであると言えるのであります。
水俣病被害者の救済のためには、水俣病の認定業務を促進することが一日もゆるがせにできない重要な課題であります。しかしながら、熊本県における認定業務の状況を見ますと、昨年十月以来の検診審査体制の充実等により認定事務は格段の進捗を見せているとはいえ、いまなお未処分の認定申請者が本年八月末現在なお四千九百件を超えている状況にあります。
特に旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法、いわゆる旧救済法に基づき昭和四十九年八月までに行われた認定申請については、すでに四年以上を経過しているにもかかわらず、答申保留や未審査という形で約一千六百件がなお未処分のまま残されております。
そこで、熊本県等におけるこれら旧救済法による申請者については、環境庁長官がみずから認定に関する処分を行うことができることとする道を臨時に設けることにより、申請滞留者の解消を図り、もって水俣病認定業務の一層の促進を図ることが必要であると考えます。
このため、今回この法律案を提出した次第であります。
以下、法律案の内容を御説明申し上げます。
第一に、認定に関する処分を行う機関の特例でございます。旧公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法により水俣病に係る認定の申請をしていた者でいまだ認定に関する処分を受けていないものは、県知事等に公害被害者認定審査会の意見がすでに示されている場合を除き、環境庁長官に対して、当該水俣病が当該指定地域に係る水質の汚濁の影響によるものである旨の認定を申請できるものとしております。この申請をすることができる期間は、旧救済法による認定の申請の日の属する区分期間に応じて政令で定める日から五年としております。
第二に、臨時水俣病認定審査会についてでございます。いま述べました環境庁長官に対する申請に基づき認定に関する処分を行うに当たっては、環境庁長官は臨時水俣病認定審査会の意見を聞くこととしております。この審査会は、環境庁に付属機関として置かれ、医学に関する学識経験者十人以内の委員で構成されることとしております。
以上のほか、この法律に基づく認定の効力その他所要の事項について規定しております。
最後に、この法律の施行期日でございますが、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。
以上がこの法律案の提案の理由及び内容であります。
何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
なお、この際、補足して御説明申し上げますが、従来、国と熊本県との間においては、水俣病の認定業務の実施に当たっては必ずしも十全な意思の疎通が図られていたとは言いがたいところがありました。
そのため、熊本県知事及び熊本県議会は、国においても水俣病認定業務の責任の一端を担う立法措置を強く要望しているところであり、これにこたえたものが、今回わが党が提案いたしました水俣病の認定業務の促進に関する臨時措置法であります。
このような経緯に顧みますと同時に、水俣病認定患者の補償を円滑に実施するためのチッソに対する金融支援措置としての熊本県債を熊本県議会において議決するためには、ぜひとも今国会において本法案を成立させることが必要であると考えられますし、熊本県知事も、それが県債発行の前提条件として強く要望しているのであります。
何とぞ、このような諸事情を御勘案の上、速やかに今国会において可決成立させるようお願い申し上げます。
第85回国会衆議院公害対策並びに環境保全特別委員会議録第3号20頁(昭和53年10月13日)〔福島譲二議員発言・発言番号186〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
附帯決議の案文はお手元に配付してありますので、その朗読は省略させていただきます。本附帯決議は、水俣病の認定業務の処理の状況にかんがみ、本法の施行に当たり、政府において特に措置すべきところを明らかにし、遺憾なきを期そうとするものであります。以下、附帯決議の内容につきまして、簡単に申し述べます。まず第一に、臨時審査会は、水俣病患者が一人でも見落とされることのないように、全部が正しく救われるような精神にのっとって審査を行うことについてでありますが、これは、かつて大石環境庁長官が当委員会で発言した趣旨にのっとって、患者の救済に万遺憾なきを期そうとするものであります。第二に、臨時審査会委員の任命に当たっては、患者の信頼を失うことのないよう十分に配慮することとしたものであります。第三に、臨時審査会は県、市の認定審査会と並列的なものであり上級的なものでない趣旨でその連帯を図ることとするものであります。第四に、本法の異議申し立ての審理に当たっては、不服審査会委員及び主治医の意見を十分尊重し、患者救済の趣旨を徹底しようとするものであります。第五に、昭和五十一年十二月十五日の熊本地裁判決にかんがみ、認定業務の不作為違法状態を速やかに解消する措置を講ずるとともに、認定業務について、患者との信頼回復に努めることとしたものであります。第六に、現在の認定業務の著しい遅滞を解消するため、国及び地方公共団体は、水俣病の検診業務に従事する常駐医の拡充強化等認定業務の促進のために諸般の施策を講ずることとしたものであります。第七に、さらに今後の問題として、認定業務については、各県、市認定審査会、当該地方公共団体の長、患者代表の意見を十分に聴取し、一層改善しようとするものであります。第八に、認定申請中に死亡した者に対して、法の救済の精神を尊重し、単なる患者の切り捨てにならないよう今後とも配慮の手段を見出すべく努力しようとするものであります。以上をもって、趣旨の説明を終わります。
政府は、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
一認定業務の不作為違法状態を速やかに解消する措置を講ずるとともに、認定業務に関し法の救済の精神を尊重して、患者との信頼回復に努めること。
二国及び地方公共団体は、水俣病の検診業務に従事する常駐医を拡充強化するとともに、認定業務の促進のために施設充実等諸般の施策を講ずること。
三認定業務については、各県、市認定審査会、当該地方公共団体の長、患者代表の意見を十分に聴取し、今後とも一層改善に努めること。
四臨時審査会は、県、市の認定審査会と並列的なものであり、従つて、そのような趣旨の運営を図るとともに、委員の任命にあたつては、患者の声を汲みとる等その信頼を得るよう十分に配慮すること。
五本法の異議申立てについて、環境庁長官は、不服審査会委員及び主治医の意見を十分尊重すること。
六昭和五十三年七月三日付環境事務次官通知「水俣病の認定に係る業務の促進について」のうち4、処分にあたつて留意すべき事項中(2)の取扱いについては、患者の切捨てにならないよう資料を十分に集めるとともに、患者の生活史、疫学面も重視する等万全の策を講ずること。
七水俣病の医学的病像、治療法等今なお未解明の部分が少なくないことにかんがみ、国立水俣病研究センターの治療研究体制の充実強化に努めること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=108502002)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。