放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案
参議院 科学技術振興対策特別委員会
昭和55年法律第52号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院科学技術振興対策特別委員会
- S55.3.18趣旨説明科学技術振興対策特別委員会 4382
- S55.4.2質疑・採決・附帯決議科学技術振興対策特別委員会 7226
- S55.4.8委員長報告・採決・附帯決議本会議 1670
参議院科学技術振興対策特別委員会
- S55.4.18趣旨説明・質疑科学技術振興対策特別委員会 4181
- S55.4.23質疑・採決・附帯決議科学技術振興対策特別委員会 5151
- S55.4.25附帯決議・委員長報告・採決本会議 1187
提案理由
石野久男 議員(発議者) 昭和55年3月18日私は、日本社会党を代表しまして、ただいま議題となりました核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及び放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
日本の国民がたん白源の多くを依存している水産物は、いわゆる高度経済成長の中で、すでに重金属や合成化学物質等により深刻に汚染されております。水俣病のようにその影響が短期間に激しく顕在化した場合もありますが、問題はそればかりではありません。PCBが、南極でも検出されるほどになっている状態で、これから長期的に見て、私たちや子孫にどのような遺伝的影響があらわれようとしているか、またがんを初めとするさまざまな病気の発生率にどのように影響していくのか、解明はこれからの課題であります。
今日、日本の政治に課せられている重要な任務の一つは、海洋のこれ以上の汚染を確実に防止しなくてはならないということであります。
もしこの上に、放射性廃棄物が海に投棄されるようになれば、それを許した者は、後世の者から必ず強い非難を受けることとなるでしょう。
陸上の建屋に貯蔵、管理されている場合と違って、海洋に一たび投棄されてしまえば、どのような事態になろうとも、もはや人間の手を完全に離れてしまい、回収などは全く不可能となります。
政府は、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の批准を契機として、国内法を整備し、放射性廃棄物の海洋投棄を大々的に開始しようとしております。
しかし、その安全性評価の根拠として使われている一九七六年八月に科学技術庁から出された「試験的海洋処分の環境安全評価に関する報告書」を見ると、底層流の調査は最大二週間の記録にすぎません。しかも全体としてきわめて不十分な、欠陥の多い調査しかなされておりません。それをもとに、後は不正確な仮定を積み重ねて、放射能は広大な海洋に拡散し、希釈され、魚類にはほんのわずかしか吸収されず、人体に影響はないとされております。プランクトンから小さい魚へ、さらに大きい魚へという食物連鎖による濃縮汚染は軽視されております。この報告書の論理によると、あの有機水銀ももう少し深い所に捨てておけば、水俣病は発生しなかったことになります。
一九七九年一一月に安全審査をパスした「低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分に関する環境安全評価について」も、基本的には全く同様なことが言えます。
トンガ海溝等、世界の十二の海溝を詳しく調査したソ連のクレプス教授等によると、深海底の海水の動きはかなり速く、海溝の底に沈められた廃棄物は必ず海面に達することが確かめられ、海水中のこの放射性物質は遅かれ早かれ植物に吸収され、それをえさとする魚類の体内に入ることが報告されております。
前述の条約の第四条には、「この条約のいかなる規定も、締約国が廃棄物その他の物であって附属書1に掲げられていないものの投棄を自国について禁止することを妨げるものと解してはならない」と規定されております。日本が低レベル放射性廃棄物の海洋投棄を禁止するのは、この条約の精神と規定に反しないばかりか、むしろ公害先進国であり水産国である日本の世界に率先してとるべき道であると言わねばなりません。
日本社会党は、このような状況にかんがみ、この法律案を提案する次第であります。
この法律は、放射性物質またはそれによって汚染された物を、船舶、航空機もしくは人工海洋構築物から海洋に廃棄し、または船舶もしくは人工海洋構築物において廃棄する目的で燃焼させてはならないことといたしております。
なおこの法律は、公布の日から起算して一月を経過した日から施行することといたしております。
以上、この法律案の提案理由及びその内容につきまして、御説明申し上げました。
この法律案は、全国民にとっての、いや世界諸国民にとっての切実なる課題であることを十分に配慮され、御審議の上、速やかに御可決されんことを切望いたします。
第91回国会衆議院科学技術振興対策特別委員会議録第4号2頁(昭和55年3月18日)〔石野久男議員発言・発言番号7〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
止に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法施行に当たり、放射性同位元素等の利用の多様化と拡大にともなう障害防止と安全の確保を図るため、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一放射線障害防止に関する諸法令における規制基準の整合性について引き続き検討を行うこと。
二放射性同位元素使用事業所等における放射線障害防止及び被ばく管理に万全を期するため、放射線検査官、国の管理体制を強化するとともに、各事業所及び運搬途上における管理体制の充実につき十分に指導すること。
三指定検査機関等については、厳正な業務実施が確保されるよう十分指導、監督を行うこと。
四放射性廃棄物の安全かつ合理的な処理処分方法についてさらに検討を進め、その円滑な実施のための体制の整備に努めること。
政府は、本法施行にあたり、次の諸点について適切な措置を講ずべきである。
一低レベル放射性廃棄物の海洋処分については、その安全性に関し十分な調査及び実証のもとに行い、安全の確保に万全を期するとともに、投棄にあたつては水産関係者の一層の理解を得るよう努めること。
二放射性廃棄物の海洋投棄に際しては、効果的な国際監視機構のもとで国際協調を図ること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=109101063)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。