刑法等の一部を改正する法律案
衆議院 法務委員会
昭和62年法律第52号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院法務委員会
- S62.5.26趣旨説明・質疑・採決法務委員会 3240
- S62.5.27委員長報告・採決本会議 1466
提案理由
遠藤要 法務大臣 昭和62年5月15日刑法等の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
第一は、電子情報処理組織に関連する不正行為に対処するための刑法の改正であります。
電子情報処理組織の普及の結果、各般の事務の処理が電子計算機によって行われるようになり、その形態が大きく変化しつつあることに伴い、このような新たな事務処理の形態にかかわる不正行為が少なからず発生するとともに、今後その増加が懸念されるところ、これらの不正行為の中には、現行刑法により的確な対応が可能な従来の事務処理形態のもとにおける不正行為と同様の行為でありながら、現行の諸規定ではこれを的確に処罰することが困難なものあるいはその被害の重大さにかんがみ現行の法定刑では必ずしも適切に対応しがたいものがあるものと認められるのであります。
そこで、このような状況にかんがみ、電子情報処理組織において用いられる電磁的記録について、その不正作出及び供用並びに毀棄を処罰する規定を設けること、電子情報処理組織による大量迅速な情報処理によって行われる業務を妨害する行為を処罰する規定を設けること、債権、債務の決済等が電磁的記録を用いて自動的に行われる事務処理の形態を利用して財産上不法の利益を得る行為を処罰する規定を設けることの三点につき、緊急に刑法の整備を行う必要があると考えたものであります。
これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
その一は、人の事務処理を誤らせる目的をもって権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を不正に作出する行為並びに不正に作出された権利、義務または事実証明に関する電磁的記録を供用する行為及びその未遂を五年以下の懲役または千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により二十万円)以下の罰金に処するものとし、不正作出に係る電磁的記録が公務所または公務員により作出されるべきものである場合については十年以下の懲役または二千円(同法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するほか、権利、義務に関する公正証書の原本たるべき電磁的記録に不実の記録をさせる行為及びこれを供用する行為を現行刑法の公正証書原本不実記載及びその行使と同様に処罰するものとし、また、公務所の用に供する電磁的記録及び権利、義務に関する他人の電磁的記録を毀棄する行為を現行刑法の文書毀棄と同様に処罰するものとする点であります。
その二は、人の業務に使用する電子計算機もしくはその用に供する電磁的記録を損壊し、もしくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与え、またはその他の方法で、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、または使用目的にたがう動作をさせて人の業務を妨害する行為を五年以下の懲役または二千円(罰金等臨時措置法第三条第一項第一号により四十万円)以下の罰金に処するものとする点であります。
その三は、電子計算機に虚偽の情報もしくは不正の指令を与えて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作出し、または財産権の得喪、変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して財産上不法の利益を得る行為及びその未遂を十年以下の懲役に処するものとする点であります。
第二は、近年、外交官等の殺害、在外公館の占拠、人質をとる行為等の事犯に対処するための国際的な協力体制の確立が国際的課題となっていることにかんがみ、政府は、国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約及び人質をとる行為に関する国際条約を締結することとし、今国会にその承認を求める案件を提出しておりますが、これらの条約のうち、前者は国際的に保護される者に対する殺人、誘拐等を、後者は人質をとって第三者に不法な要求をする行為を、それぞれ一定の場合にはその国外犯をも含め、これを処罰し得るようにすることを主な内容とするものでありますので、これらの条約の実施上必要な刑法等の整備を行おうとするものであります。
これに関する改正の要点は、次のとおりであります。
その一は、刑法を改正して、刑法第二条から第四条までの場合のほか、同法第二編の罪につき条約の要請に従ってその国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、主として国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罪に関する条約の実施のための措置であります。すなわち、同条約は国際的に保護される者の身体または自由を侵害する行為等を犯罪とすべき旨定めておりますが、これらの行為の処罰については国外犯の処罰の点を除き既存の罪で対応することにより同条約の要請を満たすことができますので、国外犯に関して条約の要請の範囲内でこれを処罰することを可能とする措置をとり、条約上の義務を履行しようとするものであります。なお、この改正は、一般に、条約上要請される範囲で刑法各則の罪の国外犯を処罰し得ることとすることにより、将来、国外犯の処罰義務を定める条約の締結が必要となる場合に、その早期締結に資する効果をも有するものであります。
その二は、人質強要行為等の処罰に関する法律を改正して、人を逮捕し、または監禁し、これを人質にして、第三者に対し不法な要求を行った者を六月以上十年以下の懲役に処するほか、人質強要目的による逮捕、監禁及びその未遂を処罰するものとし、さらに、これらの罪について、国民の国外犯を処罰するとともに、条約の要請に応じてその一の例に従って国外犯を処罰するものとする点であります。この改正は、人質をとる行為に関する国際条約の実施のための措置であります。
その他、暴力行為等処罰に関する法律第一条ノ二第一項及び第二項の銃刀を用いる傷害に関する罪についても、国民の国外犯に加え、その一の例に従ってその国外犯を処罰する趣旨の改正を行うこととしております。
以上のほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
第108回国会衆議院法務委員会議録第3号29頁(昭和62年5月15日)〔遠藤要法務大臣発言・発言番号199〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=110801082)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。