出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案
衆議院 法務委員会
平成元年法律第79号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
- H1.11.10趣旨説明・質疑法務委員会 2294
- H1.11.14参考人招致法務委員会 391
- H1.11.17質疑・修正案趣旨説明・討論・附帯決議・採決(修正)・修正案法務委員会 4135
- H1.11.17採決(修正)・委員長報告・附帯決議本会議 935
参議院法務委員会
- H1.11.30趣旨説明・衆議院修正部分趣旨説明・質疑法務委員会 1276
- H1.12.5参考人招致法務委員会 2155
- H1.12.7質疑・討論・採決・附帯決議法務委員会 3221
- H1.12.8附帯決議・採決・委員長報告本会議 1028
提案理由
後藤正夫 法務大臣 平成元年11月10日出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。
近年における国際交流の活発化、我が国経済社会の国際化の進展等に伴い、我が国を訪れる外国人は年ごとに増加するとともに、その入国・在留の目的も多様化しております。また、各種事業者側からは、すぐれた外国人を職員として雇用したいという要請が増す一方、我が国と近隣アジア諸国との間の経済格差などを背景として、観光等を装い入国の上、不法に就労する外国人の増加も顕著になっております。
外国人労働者を含む外国人の受け入れは、我が国の社会、経済、治安等国家の基本に多大の影響を与えるものでありますので、外国人の出入国及び在留について右のような現下の諸情勢を踏まえて適正な管理を実施するため出入国管理のあり方を速やかに見直す必要があります。
この法律案は、このような観点から外国人の出入国及び在留の管理に関する基本法である出入国管理及び難民認定法、以下入管法と呼ばせていただきます。その一部を改正し、今日の諸情勢に的確に対処し得る出入国管理体制を確立しようとするものであります。
次に、この法律案による改正の主要点につきまして、御説明申し上げます。
まず第一は、在留資格の整備であります。現行の入管法が我が国に入国・在留を認める外国人の類型を示している在留資格は、昭和二十六年の同法制定以来ちょうど三十年、昭和五十六年に若干の手直しが行われただけでありまして、外国人の入国者数及び形態が、その後八年たった、当時とは大幅に異なる今日の要請に必ずしも的確に対応し得ない面が見受けられます。これまでは、法務大臣が特に在留を認める者としての在留資格を弾力的に運用することにより状況の変化に対処してきたところでありますが、この在留資格の付与は法務大臣の裁量のもとにありますため、どのような範疇の外国人が入国・在留を認められるかにつき対外的に不明確な面があったと考えられます。よって、我が国に入国する外国人の入国・在留目的が多様化している状況にかんがみまして、これに対応し得るよう、既存の在留資格について、その種類や範囲を全般的に見直すとともに、新たにできる限り個別的、具体的に在留資格を設けることによりまして、在留資格制度を整備し、もって我が国に入国・在留できる外国人の範疇を明確にしようとするものであります。
第二は、審査基準の明確化と入国審査手続の簡易・迅速化を図ることであります。その第一点は、外国人が入国を認められるために必要とされる要件が明らかとなるよう在留資格に関する審査の基準を省令で定めてこれを公布することによりまして、出入国管理行政のより一層の透明性及び公平性を確保するとともに、この基準に関する省令を通じて、量的、質的な面からの入国の管理を行い得るようにするものであります。第二点は、我が国に入国しようとする外国人のうち、あらかじめ法務大臣から在留資格に係る上陸のための条件に適合していることの認定を受けようとする者につきましては、その者の申請を受けて審査を行い、右の条件に適合していると認める場合には、その旨の証明書を交付することができるようにし、もって外国人の入国・上陸手続を簡易・迅速に行い得るようにしようとするものであります。
第三は、いわゆる不法就労問題に対処するための関係規定の整備であります。近年における不法就労外国人の急増が我が国社会のさまざまな面で問題となっておりますが、このような不法就労外国人問題への対策といたしまして、雇用主が外国人を雇用しようとする場合に、合法的に就労できる外国人かどうかを容易に識別することができるよう在留資格の表示を改め、しかも合法的に就労できる外国人に対しましては、その者が希望するときには就労が可能である旨の証明書を交付し、もって善意の雇用主が誤って就労できない外国人を雇用することがないようにしようとするものであります。また、不法就労外国人に対する退去強制または罰則の適用をより実効的に行い得るようにするため、外国人の資格外活動に関する規定を整備するとともに、不法就労外国人の雇用主やブローカー等に対する新たな処罰規定を設け、これによって不法就労活動を防止しようとするものであります。
なお、この改正案は、各界各層の意見、提言等を踏まえまして成案を得たものでありますが、特別な技術、技能または知識を必要としないいわゆる単純労働に従事しようとする外国人の入国を認めるための在留資格は設けておりません。これは、単純労働者の受け入れに関する議論が多岐に分かれているほか、受け入れた場合における我が国社会への影響が大きいと考えられますので、その問題点について引き続き十分な討議を重ね、広く国内関係方面の意見を見きわめつつ、長期的視野に立って所要の対策を考えるべきであり、そのためにはなお相当の日時を要するとの考えによるものであります。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
第116回国会衆議院法務委員会議録第2号1頁(平成元年11月10日)〔後藤正夫法務大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、次の諸点について格段の努力をすべきである。
一就労資格証明書制度及び不法就労外国人の雇用主等に対する処罰規定の新設により、多年にわたり本邦に在留している外国人の就労を含む社会生活に不都合の生じることがないよう、事業主への指導・啓発に努めるなど十分配慮するとともに、より簡易に証明できる制度の在り方について検討すること。
二雇用主等に対する処罰規定については、同視定が悪質な雇用主・あっせん者等の取締りの必要性から設けられた経緯にかんがみ、その運用に当たっては、いやしくも濫用にわたることのないよう、十分に配慮すること。
三不法就労外国人といえどもその人権は保護されるべきであり、人道的観点から適切な措置がとられるよう十分に配慮すること。
四特別な技術、技能又は知識を必要としないいわゆる単純労働者の受入れについては、国内の議論が多岐に分かれていることにかんがみ、その是非については広く国内各方面の意見をも見極めつつ引き続き十分な検討を重ねること。本案の趣旨につきましては、当委員会の質疑の過程で既に明らかとなっておりますので、省略いたします。
政府は、次の諸点について格段の努力をすべきである。
一出入国管理基本計画の策定に当たっては、最近の出入国管理行政が我が国社会の各般に影響を及ぼすようになっていることにかんがみ、あらかじめ広く国民各般の意見をも採り入れることができるよう適切な方策を講ずること。
二不法就労外国人についても、労働関係法令等が遵守されるべきものであることにかんがみ、未払い賃金等就労中の労働条件に係る問題につき人道的配慮をするとともに、外国人労働者の人権問題等に係る相談制度及び法律扶助制度の拡充を図るよう努めること。
三留学生、就学生及び研修生の受入れについては、我が国の国際社会に対する貢献の在り方等を踏まえ、本来の目的が十分に発揮できるよう適切な受入れの在り方について検討すること。
四今般の法改正により、戦前から我が国に在留している在日韓国・朝鮮人及びその子孫等の長期在留外国人の就業を含む社会生活に不都合が生じないよう、また、不利益が及ばないよう十分配慮すること。
五雇用主等に対する処罰規定の運用については、この規定が悪質な雇用主等の取締りの必要性から設けられた経緯に十分配慮するとともに、末端で現実に不法就労外国人を雇用等する者を取り締まることにとどまらず、その背後にあってこの規定に違反することにより大きな利益を受けている者の存在を見逃すことのないよう、その公正な運用に努めること。
六退去強制手続きに当たっては、弁護士の選任手続き、通訳の確保等に配慮し、人道的な観点からの配慮について留意すること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=111401063)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。