株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案
衆議院 東日本大震災復興特別委員会
平成23年法律第113号
審議経過
右の数字は会議の発言数参議院東日本大震災復興特別委員会
- H23.7.27趣旨説明・質疑東日本大震災復興特別委員会 10161
- H23.7.28質疑・内閣意見聴取・修正案趣旨説明・討論・採決(修正)・修正案東日本大震災復興特別委員会 11152
- H23.7.29委員長報告・採決本会議 2945
- H23.11.18衆議院修正部分趣旨説明・質疑・討論・採決・附帯決議東日本大震災復興特別委員会 5102
- H23.11.21委員長報告・採決本会議 746
衆議院東日本大震災復興特別委員会
- H23.8.25趣旨説明・参議院修正部分趣旨説明東日本大震災復興特別委員会 206
- H23.11.14修正案趣旨説明・質疑・討論・採決(修正)・附帯決議・修正案東日本大震災復興特別委員会 4195
- H23.11.15委員長報告・採決(修正)本会議 87
提案理由
片山さつき 議員(発議者) 平成23年7月27日(片山さつき君) 私は、自由民主党、公明党及びたちあがれ日本・新党改革を代表いたしまして、ただいま議題となりました株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法案につきまして、提案の理由及びその概要を説明申し上げます。
三月十一日に発生した東日本大震災は、非常に広範な地域に甚大な被害をもたらし、世界でも最も深刻な原子力発電所の事故まで惹起してしまいました。発生から四か月以上が経過した今日にあっても、被災者の方々は依然として厳しい状況にありまして、当面の復旧や生活・仕事の再建のめどすら立っておりません。特に、被災地域においては、多くの事業者が地震、津波等による被害で担保の建物・設備・農地等が損壊し、土地まで使えなくなり、原発地域の場合は入れない、いつ入れるかどうかのめども立たないという状況で、それでも債務は残るものですから、過大債務、新たに事業を始めようとしたら二重債務に陥ります。
自民党を始め各党の申入れもあって、現在まで、手形、借入れ、リースについては一応の返済を止めていただいている状況もありますが、それもおのずと限度があります。年末にかけて、倒産の増加、廃業の続出が懸念され、これに伴い、被災地域からは人口、産業が流出し、復興のそもそも前提が成り立たなくなるおそれが既に現実のものとなっております。
二重債務問題への対応策につきましては、参議院の財金委員会で金融機能強化法を通過させる際にも、「二重債務の問題に関しては、被災者の再スタート支援に資するよう、必要な対応について、早急に検討を進めること」とする附帯決議が全会一致をもって付されております。
これまで、自民、公明、民主のいわゆる三党協議も六月以降数回重ねてまいりました。また、今回共同提案いただいている、たちあがれ日本・新党改革も超党派で同じような勉強会を重ねてこられました。しかしながら、残念なことに、この震災のもたらす過重債務・二重債務の特異性に鑑み、平時の対応を大きく超えた臨時異例の措置を法律によって可能とする新たな公的な、しかもこの任務専門という意味では非常にガバナンスも利いている機構を法的に設立し、被災地域の中小企業者、農林水産等全ての業種に対する金融機関、リースも含めた金融関係の既存債権を買い取ることを法案化するかどうかにつきましては、最終的に合意を見ることができませんでした。政府・与党側は、事業仕分や独立行政法人評価によって、余剰金二千二百億円の返納や、出資の大幅縮小、高額な役職員報酬や給与の見直しを再三指摘されて、七千億円もの累損を抱えている、役員がほぼ全員天下り法人であるところの、あくまで平時の中小企業対策をやってきている中小企業基盤整備機構の八割出資するファンドに、一切の法改正やこの独法の中期目標の変更すらせず、この未曽有の国難に、この被災者の生き死ににかかわるような大切な仕事を丸投げしようとしております。
この投資組合はもうけが出ることが大前提で、投資事業が目的でございます。この投資事業有限責任組合法に基づくと、本来の被災者ではなくても、もうけが出るものにたとえ投資して優先してしまっても、あるいは賄賂をもらっても、守秘義務に反することがあって大切な商売のお客さんリストが流出しても、罰則すらありません。
依然として厳しい状況にある被災地域において、その事業の再生を図ることを支援するためには、従来型の中小企業対策、いわゆる認められたメニューでは全く足りません。日本における中小企業対策は、二千六百万社と言われる中で数百社あるいは数千社を何とか選び出すために理由付けを必ず付けております。それが経営資源の再活用であったり、資源の生産性の革新であったり、投資事業組合においてもこの目的が限定列挙されており、被災地域にある全ての人を漏れなく救おうという発想とは全く違う法律の筋立てになっております。
このためには、やはり靴に足を合わせるのではなく、足に合わせた靴を政治主導で作るしかない、そのような考えによって私どもは特別の法律を作り、その目的として、債権の買取りを通じて債務の負担を軽減し、その再生を支援するということで被災地域からの人口・産業の流出を防ぎ、復興を可能とするということを明確に目的に書いた法律をお出ししたわけです。
以下、その概要を御説明申し上げます。
第一に、この東日本大震災事業者再生支援機構の組織・体制ですが、本社は一つですが、広範な地域と非常に多様な産業に応じて幾つでも支店を設置することができまして、金融機関の方の預金保険制度であります預金保険機構及び系統金融機関の方のそれでございますいわゆる貯金保険機構を通じて国等による資本金の組成を行うことにより設立いたします。そして、債権等を買い取る資金調達は、法律によってのみ可能な政府保証付きの民間からの借入れでできるように法的手当てをしているので、毎年毎年、この非常に深刻な財政赤字の中、一般会計の負担をすることなく抑制もできます。そして、対象事業者から返済があった場合は民間からの政府保証付き借入れに順次充てていきますので、最終的な負担は、二十年後の機構の解散時に債務超過であれば、その全部又は一部を補助できるという条文により対応しております。
第二に、再生支援を受けることができる事業者につきましては、原発被害を含んだ東日本大震災による被害を受けたことによって過大な債務を負っている事業者であって、被災地域において債権者と協力して事業再生を図ろうとするもの全て含みます。もちろん転業していただいても結構です。農林水産業、医療、福祉、その他の全ての業種ですが、大企業と第三セクターは除いており、当然、中小零細、個人事業者も全て含まれます。ですから、この主務大臣は、金融庁を所管し、また、関係省庁の調整を行う内閣総理大臣と財政上のチェックを行う財務大臣のみならず、総務大臣、経済産業大臣、農林水産大臣、厚生労働大臣等を初めから並列で含めております。
第三に、この機構は、支援決定を行った対象事業者に対しまして、リースを含む金融機関等が有する債権の買取り、資金の貸付け、債務保証、出資、専門家の派遣等により、その事業の再生を支援することを行います。農林水産業が主要となっている被災地域も多いのですが、これは土地利用にも配慮しないと総合的な意味での事業の再生はなされませんので、条文上、担保財産の取得や貸付けもできることを法律に明記してあります。この支援につきましては、被災地復興には少なくとも十年は掛かるということが復興基本方針の復興債の年限等も含めまして政府の中でも認められているわけですから、最長十五年は掛けてじっくり行うことができるように法律で決めてあります。
また、再生支援の決定に際する支援基準を主務大臣が定めるに当たりましては、できるだけ多くの事業者に再生の機会を与えることになるよう、適切に配慮するとともに、東日本大震災の復興の基本方針や各県、市町村が作る方針等の整合性にはきちっと配慮しなければならないことも法律に書いてあります。
金融庁の五月末の調査によれば、最も被災の深刻な宮城、福島、岩手三県の金融機関の自己申告による対象債権だけでも五千五百億円とのこと。被災の影響等により集計ができていない二つの信用組合は恐らく大半の債務者が傷ついておりまして、それ以外に農協、漁協等の関係で千数百億円、青森、茨城、栃木、千葉を含めた、私どもが対象と考えております財政支援をする特定被災地域九県、この広がり、さらにノンバンク、これに加えまして、現在は返済を停止せずに辛うじて金利の引き落としが行われておりますが設備の再建資金までは到底貸せるような状況にない債務者は非常に多い。ですから、このままの状況では、金融機関としてとても貸せないけれども今は返済されている方まで含まれればどのぐらいの範囲に金額が上るか、相当大幅な金額になることも考えられます。
ちなみに、被災五県の地銀十二行、信金二十三金庫、信組十二組合の貸出合計は二十二兆一千二百七十億円あります。民間信用調査機関による、東北被災四県の、被害が甚大な地域に存在する企業数は三万二千三百四十一社、雇用者は三十六万三千七百九十六人、売上高合計は九兆八千九百六十二億円です。
これらの数値や東日本の産業界・金融界、そして避難所、仮設住宅、いろんなところからの肌と肌の触れ合いのヒアリングも含めまして、いろんな状況を総合的に勘案し、被災事業者に事業再開への希望と安心感とみんながやればできるという公平感を持っていただくために、当初から二兆円の政府保証借入枠を設定し、被災地の皆様にやる気を出していただくようにしたいと考えております。
多くの被災者が、このような法的安定性を持った、大きな買取り枠を付けることにより、対象の制限のない二重債務買取り組織の設立を求めており、本日も日弁連主導で十万七千人の署名が集まり、いただいてまいりました。
民主党政権の下でJALを再生している企業再生支援機構や、ダイエーやカネボウを成功裏に再生した産業再生機構と同様、この機構には、事業再生に当たって協力が必要な他の全ての債権者に対して法律上の回収停止要請ができることになっております。それは私的整理やあるいは中小企業再生ファンド等による回収停止のお願いより格段に強いものであって、今まで破られたことのない債権者間調整機能を持たせております。
以上が本法律案の提案理由及びその概要であります。
東日本大震災がいまだかつてない被害をもたらしていること、被災地の非常に悲惨な現状に鑑み、何とぞ、御審議の上、速やかな御賛同をいただけますようお願い申し上げます。
第177回国会参議院東日本大震災復興特別委員会会議録第10号2頁(平成23年7月27日)〔片山さつき議員発言・発言番号7〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
一本支援機構と各県の産業復興機構とのすみ分けに関し、各県の産業復興機構は各県が実情に応じて支援対象を決めており、その整理を尊重すること。また、支援機構の債権(リース債権及び信用保証協会等の求償債権を含む。)の買取業務の対象は、各県の産業復興機構による支援の対象とすることが困難なものとし、小規模事業者、農林水産事業者、医療福祉事業者等を重点的に対象とし、各県の産業復興機構と相互補完しつつ、支援の拡充を図ること。
二支援機構は、被災した事業者の事業の再生に資するよう、各県の信用保証協会等が対象事業者の債務の保証に基づき取得した求償権についても、その買取りに努めること。
三信用保証協会等は、支援機構による買取り申込み等の求めに応じるよう努めるとともに、当該対象事業者に対する新たな資金の貸付けについて、民間金融機関が自らの責任でも貸付けを行う際には、当該対象事業者への資金の供給が円滑に行われるよう、当該対象事業者の資金の借入れに係る債務の保証を行うよう努めること。
四支援機構は、債権の買取り並びに当該債権の管理及び処分(債務の免除、弁済の猶予等を含む。)に当たっては、被災した事業者の債務の負担を軽減しつつその再生を支援するという本法の目的を十分に踏まえて行うこと。
五支援機構の本店所在地については、本法の対象事業者が東日本大震災によって過大な債務を負っている事業者であり、その債務負担の軽減と事業の再生支援が早急に求められていることに鑑み、これら事業者にとって利便性の高い地域となるよう検討すること。
六政府保証枠を含む予算措置については、支援機構の成立までに、予備費の活用などにより責任を持って対応すること。
政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全の措置を講ずるべきである。
一本支援機構と各県の産業復興機構とのすみ分けに関し、各県の産業復興機構は各県が実情に応じて支援対象を決めており、その整理を尊重すること。また、支援機構の債権(リース債権及び信用保証協会等の求償債権を含む。)の買取業務の対象は、各県の産業復興機構による支援の対象とすることが困難なものとするとともに、小規模事業者、農林水産事業者、医療福祉事業者等を重点的に対象とし、各県の産業復興機構と相互補完しつつ、支援の拡充を図ること。
二本支援機構と各県の産業復興機構の運用については、ともに、被災した事業者の事業の再生を確保するために十分な措置を講ずるとともに、被災事業者の支援、両制度の利用しやすさを第一に考え、業務運営における密接な連携等を確保すること。
三支援機構は、被災した事業者の支援に万全を期すため、各県の信用保証協会等が対象事業者の債務の保証に基づき取得した求償権についても、積極的に買取りに努めること。
四信用保証協会等は、支援機構による買取り申込み等の求めに応じるよう努めること。また、当該対象事業者に対する新たな資金の貸付けについて、民間金融機関が自らの責任でも貸付けを行う際には、当該対象事業者への資金の供給が円滑に行われるよう、当該対象事業者の資金の借入れに係る債務の保証を行うよう努めること。
五支援機構は、被災した事業者の債務の負担を軽減しつつその再生を支援するという本法の目的を十分に踏まえ、適切な担保の評価なども踏まえた債権の買取り並びに当該債権の管理及び処分(債務の免除、弁済の猶予等を含む。)を行うこと。
六支援機構の本店所在地については、本法の対象事業者が東日本大震災によって過大な債務を負っている事業者であり、これら事業者の債務の負担の軽減と事業の再生の支援が早急に求められていることに鑑み、これら事業者にとって利便性の高い地域となるよう検討すること。
七支援機構は、本法の適切かつ円滑な執行が可能となるよう、必要な体制を整備すること。あわせて、政府においても、支援機構の行う業務その他の二重ローン問題への対応の重要性に十分配慮した定員の確保及び業務処理体制の実現に努めること。
八政府保証枠を含む予算措置については、支援機構の成立までに、予備費の活用などにより責任を持って対応すること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=117703012)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。