家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案
参議院 農林水産委員会
令和2年法律第16号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
江藤拓 農林水産大臣 令和2年3月5日家畜伝染病予防法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
家畜防疫は、畜産の振興及び畜産物の安定供給を図る上で重要な役割を担っておりますが、一昨年以降、アジア地域においてアフリカ豚熱の発生が急速に拡大し、我が国への侵入の脅威が一段と高まっている中、家畜防疫の重要性は著しく高まっています。
こうした中、平成三十年九月に我が国で二十六年ぶりに発生が確認された豚熱については、同病に感染した野生イノシシによって広域に病原体が拡散し、現在に至ってもなお終息に至っておりません。
このため、野生動物の感染に対する対策を強化するとともに、農場における飼養衛生管理を徹底し、家畜の伝染性疾病の発生予防及び蔓延防止を図る必要があります。
さらに、畜産物の輸出入検疫を強化し、アフリカ豚熱を含む悪性伝染性疾病の侵入防止を徹底する必要があるため、この法律案を提出することとした次第であります。
なお、先般、議員立法により当分の間として附則で措置していただいた、家畜又は野生動物でアフリカ豚熱の感染が発見された場合の予防的殺処分を始めとする、アフリカ豚熱に関する特例については、本則に位置づけることとしております。
次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。
第一に、家畜の伝染性疾病の発生予防及び蔓延防止については家畜の所有者が第一義的責任を有していることや、国及び地方公共団体がその施策の実施について相互に連携することなど、家畜の所有者、国及び地方公共団体並びに関係事業者の責務を明確にすることとしております。
第二に、家畜の所有者は、衛生管理区域ごとに、飼養衛生管理に係る責任者を選任し、責任者について必要な知識、技術の習得及び向上を図ることとする制度を創設することとしております。
第三に、飼養衛生管理に係る指導等について、国が策定する指針に即して、都道府県が計画を策定し、的確に指導等を行うこととする制度を創設するとともに、蔓延防止措置として、都道府県知事は、家畜の所有者に対し、飼養衛生管理基準の遵守について、指導助言を経ないで緊急に勧告、命令を実施できるよう措置することとしております。
第四に、野生動物における悪性伝染性疾病の蔓延防止措置として、野生動物における悪性伝染性疾病の浸潤状況調査、経口ワクチン散布等を法に位置づけるとともに、野生動物で悪性伝染性疾病の感染が発見された場合にも、発見された場所等の消毒や通行制限、周辺農場等に対する家畜の移動制限、飼料業者、運搬業者等の関連事業者に対する倉庫、車両の消毒などの病原体拡散防止措置を実施できるよう措置することとしております。
第五に、今般新たに措置する蔓延防止措置について、国が都道府県に対して、その実施を指示することができるよう措置することとしております。
第六に、予防的殺処分の対象疾病にアフリカ豚熱を追加するとともに、野生動物が口蹄疫又はアフリカ豚熱にかかっていることが発見された場合にも、予防的殺処分を実施できるよう措置することとしております。
第七に、入国者の携行品中の肉製品の有無を、家畜防疫官が質問、検査できるよう措置するとともに、輸出入検疫の結果、発見された違法な肉製品について、家畜防疫官が廃棄できるよう措置するなど、家畜防疫官の権限を強化することとしております。
第八に、輸入検疫の違反者に対する罰則を、現行の百万円以下の罰金から、個人については三百万円以下の罰金に、法人については五千万円以下の罰金に引き上げるなど、所要の罰則を強化することとしております。
以上が、この法律案の提案の理由及び主要な内容でございます。
第201回国会衆議院農林水産委員会議録第3号39頁(令和2年3月5日)〔江藤拓農林水産大臣発言・発言番号243〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
平成三十年九月以降、国内における豚熱の発生を受け、農林水産省は、都道府県や関係省庁と連携し、防疫の基本となる飼養衛生管理の徹底、予防的ワクチンの接種、野生イノシシの捕獲強化や経口ワクチン散布等を行い、豚熱の封じ込めに向けて対策を講じてきたところである。一方、ワクチンや有効な治療方法がないアフリカ豚熱はアジア地域で急速に拡大し、我が国への侵入の脅威が一層高まっている。本委員会においては、家畜の悪性伝染性疾病のまん延は我が国畜産業に深刻な打撃を与えるという認識の下に、アフリカ豚熱を予防的殺処分の対象とするための法律案の起草等を行ってきたところである。豚熱を早期に終息させ、アフリカ豚熱等の悪性伝染性疾病の国内への侵入を防止することは、我が国の畜産の振興を図る上で最優先かつ最重要の課題であり、引き続き、政府、都道府県、関係者一体となって家畜防疫に取り組む必要がある。よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。記
一都道府県が飼養衛生管理に係る指導等に積極的に取り組むために、都道府県の飼養衛生管理指導等計画の策定について十分な指導及び助言を行い、家畜の伝染性疾病の発生予防を図ること。また、都道府県による飼養衛生管理に係る指導等の取組状況を正確に把握し、的確な指導を行うこと。特に、養豚農場における飼養衛生管理の水準が向上するよう措置すること。
二家畜の伝染性疾病の発生予防及びまん延防止のための措置に係る国、地方公共団体、家畜の所有者、関連事業者及び自衛防疫団体の相互の連携を強化し、実効性のある防疫措置を実施するために、協議会を積極的に開催し、その活用を図ること。
三家畜伝染病の発生時における適切かつ迅速な初動対応を実施するために、家畜の健康観察により特定症状が確認された場合には、直ちに家畜保健衛生所に通報するよう、都道府県と連携しつつ、家畜の所有者その他畜産業従事者への周知を徹底すること。
四海外からの畜産物の違法持込みに対する罰則強化、当該違反畜産物の廃棄等の家畜防疫官の権限強化については、厳格に運用し摘発を強化するとともに、外国政府、船舶・航空会社及び旅行会社等を通じてその周知を徹底すること。また、家畜防疫官の増員、検疫探知犬の増頭等により水際検疫に係る体制の充実・強化を図ること。
五野生動物に悪性伝染性疾病の発生が確認された場合においては、飼養衛生管理基準の遵守に係る勧告・命令を含むまん延防止措置が的確に行われるよう速やかに都道府県知事に指示すること。また、野生鳥獣の捕獲活動に従事する者の高齢化・減少が進む中、野生イノシシによる養豚農場への豚熱等の侵入リスクの軽減及び浸潤状況調査のため、関係者が緊密に連携して、戦略的にその捕獲を強化するとともに、陰性が確認された個体の適切な利用に向けた取組を推進すること。
六飼養衛生管理基準の見直しによるエコフィードに係る加熱処理条件の引上げについては、農場における遵守はもとより、食品リサイクル事業者が円滑に対応できるよう、施設の更新に係る低利融資等の支援を行うこと。
平成三十年九月以降、国内における豚熱の発生を受け、農林水産省は、都道府県や関係省庁と連携し、防疫の基本となる飼養衛生管理の徹底、予防的ワクチンの接種、野生イノシシの捕獲強化や経口ワクチン散布等を行い、豚熱の封じ込めに向けて対策を講じてきたところである。一方、ワクチンや有効な治療方法がないアフリカ豚熱はアジア地域で急速に拡大し、我が国への侵入の脅威が一層高まっている。国会においては、家畜の悪性伝染性疾病のまん延は我が国畜産業に深刻な打撃を与えるという認識の下に、本法律案の提出に先立ち、当分の間の措置を定めたアフリカ豚熱を予防的殺処分の対象とするための法整備を行ったところである。豚熱を早期に終息させ、アフリカ豚熱等の悪性伝染性疾病の国内への侵入を防止することは、我が国の畜産の振興を図る上で最優先かつ最重要の課題であり、引き続き、政府、都道府県、関係者一体となって家畜防疫に取り組む必要がある。また、口蹄疫、高病原性鳥インフルエンザ、豚流行性下痢、ヨーネ病等の伝染性疾病の脅威が引き続き存在しており、適切に対応していくことが求められている。よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一都道府県が飼養衛生管理に係る指導等に積極的に取り組むために、都道府県の飼養衛生管理指導等計画の策定について十分な指導及び助言を行い、家畜の伝染性疾病の発生予防を図ること。また、都道府県による飼養衛生管理に係る指導等の取組状況を正確に把握し、的確な指導を行うこと。特に、養豚農場における飼養衛生管理の水準が向上するよう措置すること。
二家畜の伝染性疾病の発生予防及びまん延防止のための措置に係る国、地方公共団体、家畜の所有者、関連事業者及び自衛防疫団体の相互の連携を強化し、実効性のある防疫措置を実施するために、協議会を積極的に開催し、その活用を図るとともに、獣医師である家畜防疫員の十分な確保など体制を強化すること。また、人に危害を及ぼすおそれのある人獣共通感染症等の未知の家畜伝染性新疾病の発生に備え、実効性のある防疫措置の実施、予防法や治療法の開発等ができるよう、体制の整備を図ること。
三家畜伝染病の発生時における適切かつ迅速な初動対応を実施するために、家畜の健康観察により特定症状が確認された場合には、直ちに家畜保健衛生所に通報するよう、都道府県と連携しつつ、家畜の所有者その他畜産業従事者への周知を徹底すること。
四海外からの畜産物の違法持込みに対する罰則強化、当該違反畜産物の廃棄等の家畜防疫官の権限強化については、厳格に運用し摘発を強化するとともに、外国政府、船舶・航空会社及び旅行会社等を通じてその周知を徹底すること。また、家畜防疫官の増員、検疫探知犬の増頭等により水際検疫に係る体制の充実・強化を図ること。さらに、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザ等の家畜の伝染性疾病が海外でまん延している現状に鑑み、その国際的な拡散を防止するため、近隣諸国と協力し、疾病情報等の共有を進めるとともに、防疫対策の向上を推進すること。
五野生動物に悪性伝染性疾病の発生が確認された場合においては、飼養衛生管理基準の遵守に係る勧告・命令を含むまん延防止措置が的確に行われるよう速やかに都道府県知事に指示すること。また、野生鳥獣の捕獲活動に従事する者の高齢化・減少が進む中、野生イノシシによる養豚農場への豚熱等の侵入リスクの軽減及び浸潤状況調査のため、関係者が緊密に連携して、戦略的にその捕獲を強化するとともに、陰性が確認された個体の適切な利用に向けた取組を推進すること。
六飼養衛生管理基準の見直しによるエコフィードに係る加熱処理条件の引上げについては、農場における遵守はもとより、食品リサイクル事業者が円滑に対応できるよう、施設の更新に係る低利融資等の支援を行うこと。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=120101025)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。