主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負坦とする。
理由
上告代理人児玉啓太郎の上告理由第一点について。
所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠に照らし首肯することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎないものであつて、採用することができない。
同第二点および第三点について。
原審の確定したところによれば、上告人の代表役員であるDは、昭和三三年一一月七日、宗教法人法二三条および宗教法人A院規則一九条所定の手続を履践することなく、本件境内地を被上告人に建物所有の目的で賃貸したというのであるから、右賃貸借は、宗教法人法二四条本文の規定により、無効であるというべきである。ところで、同条但書の規定は、宗教法人の重要な財産の保全と取引の安全の保護との調和を図る趣旨で設けられたものであることに鑑みれば、同条本文の規定による法律行為の無効は、善意であつても重大な過失のある相手方または第三者には対抗することができるが(最高裁昭和四五年(オ)第一二三九号同四七年一一月二八日第三小法廷判決・民集二六巻九号一六八六頁参照)、善意の相手方または第三者に過失のない場合はもちろん、たとえ過失があつても、重大な過失のない場合は、これに対し対抗することができないものと解するのが相当である。そして、被上告人が善意であつたことは、原審の確定するところであり、原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人に重大な過失はなかつたとした原審の判断は、是認することができる。したがつて、上告人は被上告人に対し右賃貸借の無効を対抗することができないとした原審の判断は、正当として首肯することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 藤林益三
裁判官 下田武三
裁判官 岸盛一
裁判官 岸上康夫
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/52016/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。