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最高裁第三小法廷判決民集60巻1号252頁収録判例内の被引用 2

最三小判 平成18年1月24日

平成12年(行ヒ)第133号 法人税更正処分取消等請求事件

裁判所
最高裁判所第三小法廷
裁判年月日
平成18年1月24日 (2006-01-24)
事件番号
平成12年(行ヒ)第133号
事件名
法人税更正処分取消等請求事件
裁判の種類・結果
判決 その他
判例集等
民集60巻1号252頁
訟月52巻12号3656頁
分野
行政
この事件の審級
  1. 控訴審大阪高判平成12・1・18(控訴棄却)
  2. 上告審最三小判平成18・1・24
意見
裁判官全員一致個別意見なし

判示事項

映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が購入したとされる映画が同組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらないとされた事例

裁判要旨

映画に投資を行う名目で結成された民法上の組合が,借入金及び組合員の出資金を原資として当該映画を購入する旨の契約を締結すると同時に,当該映画の配給権を配給会社に付与する旨の配給契約を締結した場合において,当該配給契約により当該映画に関する権利のほとんどが配給会社に移転され,当該組合は実質的には当該映画についての使用収益権限及び処分権限を失っていること,当該組合は当該映画の購入資金の約4分の3を占める借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあることなど判示の事情の下では,当該映画は,当該組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,当該組合の組合員である法人の法人税の計算において法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項所定の減価償却資産に当たらない。

参照法条

主文

1 本件上告のうち,平成4年11月1日から同5年10月31日までの事業年度の法人税の更正に関する部分を却下し,その余の部分を棄却する。

2 上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人○○○○の上告受理申立て理由〈略〉について

1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである(以下,外国法人等の名称の表記については原判決の略称(編注・仮名)による。)。

(1) 上告人は,平成元年,E社から,次のとおり説明を受けて,取引への参加を勧誘された。

ア 日本の投資家を集めて,Fと称する民法上の組合(以下「本件組合」という。)を結成する。本件組合は,組合員の自己資金及び銀行からの借入金を原資として,B社から映画を購入し,D社との間で映画の配給契約を締結し,D社が配給会社を使って全世界に配給する(以下,この取引を「本件取引」という。)。

イ 組合員が投資によって得る利益は,D社との間の配給契約に基づき本件組合が受け取る金員と,組合員における税務処理,すなわち,映画の減価償却費を損金処理することによる法人税の負担軽減から成る。

(2) 平成元年5月19日付けで,上告人ら投資家を組合員とする本件組合の結成に係る契約書が作成された。また,同日付けで,いずれも本件組合を一方当事者として,A銀行からの借入れに係る契約書,C社が制作した2本の映画(以下「本件映画」という。)のB社からの購入に係る契約書,D社に対する本件映画の配給権付与に係る契約書,同契約書に基づきD社が本件組合に対して負担する金員の支払債務についてのG銀行の保証に係る契約書等が作成された(以下,上記の各契約書による契約を,それぞれ「本件借入契約」,「本件売買契約」,「本件配給契約」,「本件保証契約」という。)。

(3) 上告人は,本件取引に参加することとし,本件組合に1億3795万円を出資した。本件組合は,A銀行から63億7463万円余(以下「本件借入金」という。)を借り入れ,これに各組合員からの出資金合計26億2105万円を加えた金員(総額89億9568万円余)をもって,B社に対し本件映画の代金85億6159万円余を支払い,その余はE社及びA銀行に対する手数料の支払に充てた。

他方,C社は,B社を通じて,本件組合が支払った本件映画の代金を受領した。また,C社は,D社との間で,本件映画に関する第二次配給契約を締結し,同契約に基づき,C社は本件借入金相当額である6000万ドルをD社に対して支払い,D社は本件組合から許諾された本件映画の配給権をC社に与えた。

(4) 上告人は,昭和63年11月1日から平成4年10月31日までの4事業年度の法人税等の各確定申告に当たり,本件映画のうち,自己の出資持分相当額(19分の1)に応じた金額を器具備品勘定に計上し,耐用年数を2年として減価償却費を損金に算入した。所轄税務署長は,上告人が計上した上記の減価償却費の損金算入を認めず,上記各事業年度の法人税等について,更正及び過少申告加算税賦課決定をした。

2 本件は,上告人が,本件映画の減価償却費の損金算入は認められないことを理由としてされた上記の各処分は違法であると主張して,これを争っている事案である。

3 原審は,以下のとおり判断して,上記各処分を適法であるとした。本件取引において,C社や本件組合が前記各契約を締結した私法上の真の意思は,C社においては本件映画に関する権利の根幹部分を保有したままで資金調達を図ることにあり,本件組合においては専ら租税負担の回避を図ることにあったものと認められる。したがって,組合員たる上告人の出資金は,その実質において,本件組合を通じてC社による本件映画の興行に対する融資を行ったものであって,本件組合ないしその組合員である上告人は,本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく,単に上告人ら組合員の租税負担を回避する目的の下に,本件取引に関する契約書上,本件組合が本件映画の所有権を取得するという形式や文言が用いられたにすぎない。そうであるとすれば,上告人が本件映画を本件組合の減価償却資産に当たるとしてその減価償却費を損金の額に算入したことは相当ではない。

4 論旨は,本件組合は本件売買契約により本件映画の所有権を取得し,これをリース事業に供しているのであるから,本件映画は減価償却資産に当たるというべきであり,本件組合は本件映画の興行に対する融資を行ったものであるとして減価償却費の損金算入を否認した原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがあるという。

しかしながら,前記事実関係に加えて,原審の適法に確定した事実関係によれば,[1] 本件組合は,本件売買契約と同時に,D社との間で本件配給契約を締結し,これにより,D社に対し,本件映画につき,題名を選択し又は変更すること,編集すること,全世界で封切りをすること,ビデオテープ等を作成すること,広告宣伝をすること,著作権侵害に対する措置を執ることなどの権利を与えており,このようなD社の本件映画に関する権利は,本件配給契約の解除,終了等により影響を受けず,D社は,この契約上の地位等を譲渡することができ,また,本件映画に関する権利を取得することができる購入選択権を有するとされ,[2] 他方,本件組合は,D社が本件配給契約上の義務に違反したとしても,D社が有する上記の権利を制限したり,本件配給契約を解除することはできず,また,本件映画に関する権利をD社の権利に悪影響を与えるように第三者に譲渡することはできないとされ,[3] 本件組合が本件借入契約に基づいてA銀行に返済すべき金額は,D社が本件配給契約に基づいて購入選択権を行使した場合に本件映画の興行収入の大小を問わず本件組合に対して最低限支払うべきものとされる金額と合致し,また,D社による同金額の支払債務の大部分については,本件保証契約により,G銀行が保証しており,[4] さらに,上告人は,不動産業を営む会社であり,従来,映画の制作,配給等の事業に関与したことがなく,上告人が本件取引についてE社から受けた説明の中には,本件映画の題名を始め,本件映画の興行に関する具体的な情報はなかったというのである。

そうすると,本件組合は,本件売買契約により本件映画に関する所有権その他の権利を取得したとしても,本件映画に関する権利のほとんどは,本件売買契約と同じ日付で締結された本件配給契約によりD社に移転しているのであって,実質的には,本件映画についての使用収益権限及び処分権限を失っているというべきである。このことに,本件組合は本件映画の購入資金の約4分の3を占める本件借入金の返済について実質的な危険を負担しない地位にあり,本件組合に出資した組合員は本件映画の配給事業自体がもたらす収益についてその出資額に相応する関心を抱いていたとはうかがわれないことをも併せて考慮すれば,【判示事項】本件映画は,本件組合の事業において収益を生む源泉であるとみることはできず,本件組合の事業の用に供しているものということはできないから,法人税法(平成13年法律第6号による改正前のもの)31条1項にいう減価償却資産に当たるとは認められない。

したがって,本件映画の減価償却費を損金に算入すべきではないとした原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。なお,上告人は,平成4年11月1日から同5年10月31日までの事業年度の法人税の更正に関する部分について,上告受理申立て理由を記載した書面を提出しないから,これを却下することとする。

よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判官藤田宙靖濱田邦夫上田豊三堀籠幸男)

平成一二年(行ヒ)第一三三号

平成一二年(行ノ)第二号法人税更正処分取消等請求上告受理申立事件上告受理申立て理由書

申立人株式会社X

相手方西宮税務署長

平成一二年三月二二日

右申立人代理人

弁護士 <略>

最高裁判所御中

記

一、法人税法違反ついて

1 第二審判決は、「課税庁が租税回避の否認を行うためには、原則的には、法文中に租税回避の否認に関する規定が存する必要があるが、仮に法文中に明文の規定が存しない場合であっても、租税回避を目的としてされた行為に対しては、当事者が真に意図した私法上の法律構成による合意内容に基づいて課税が行われるべきである。」とした上で、「本件取引のうち本件出資金は、その実質において、申立人ら組合員がBを通じ、F社による本件映画の興業に対する融資を行ったものであって、Bないしその組合員である申立人は、本件取引により本件映画に関する所有権その他の権利を真実取得したものではなく、本件各契約書上、単に申立人ら組合員の租税負担を回避する目的のもとに、Bが本件映画の所有権を取得するという形式、文言が用いられたにすぎない。」とし、本件映画を減価償却資産に当たるとして、その減価償却費を損金の額に算入したことは相当ではない旨判示する。第二審判決は、次に述べるとおり、減価償却を否認する法人税法その他法令の明文規定がないにもかかわらず、申立人が減価償却資産を取得するに至った目的(租税回避の目的)のみを理由として、減価償却資産である本件映画の減価償却を否認するものであり、法人税法の解釈適用を誤ったことは明らかである。

2 法人税法は、法人がその所有する減価償却資産を事業の用に供すれば、所定の方式に従って減価償却を認めている。

法人税法上、法人が減価償却資産を所有するに至った目的を理由として減価償却を否認する規定はなく、その他の法令においても減価償却を否認する規定はない。したがって、仮に、法人が減価償却資産を取得するに際し、どのような目的を有していたとしても、当事者間に減価償却資産についての所有権の移転が認められる真実の法律関係(権利・義務)が存在する限り、減価償却資産を所有するに至った目的のみを理由として減価償却を否認することができないことは、法人税法及び租税法律主義(憲法第八二条)から明白である。

この点、『事実認定・法律上の構成』による実質課税とは、「要件事実の認定に必要な法律関係について言えば、表面的に存在するように見える法律関係に即してではなく、真実に即して要件事実の認定がなされることを意味するに止まり、真実存在する法律関係から離れて、その経済的成果なり目的なりに即して法律要件の存在を判断することを許容するものでないことに注意する必要がある。」(金子宏著—租税法第七版一三〇ページ)。

3 本件では、本件映画が減価償却資産に該当することは当事者間に争いがなく、かつ、B(ないし申立人ら組合員)がC社から本件映画を買い入れる旨の本件売買契約書が存在し、Bが本件映画の売買代金として所定の金員をC社に支払ったほか、本件取引においては、すべて、その個別契約書の記載内容に従って、その内容のとおりの履行(取引)がされていることについても当事者間に争いがない。かかる当事者間に争いがない事実からすれば、本件取引は、すべて、その個別契約書の記載内容に従って、その内容のとおりの履行(取引)がされているから、当事者間には、その個別契約書の記載内容のとおりの法律関係が存在したことは明らかである。

したがって、申立人は、本件取引の一環をなす本件売買契約に基づき、本件映画の所有権を取得し、本件映画を賃貸という事業に供しているから、本件映画は減価償却資産に該当するものである。

しかるに、第二審判決は、前記のとおり、『申立人ら当事者間に減価償却資産についての所有権の移転が認められる真実の法律関係(権利・義務)が存在する』ことを無視し、かかる真実存在する法律関係から離れて、その経済的目的(租税回避)に即して法律要件の存在を判断しているのである。

すなわち、第二審判決は、申立人らは、本件映画の興業に対する融資を行ったと認定するが、申立人らが、本件映画の興業に対する融資を行ったという実体ないし法律関係が存在しないことは、後述のとおりである。

4 以上から、第二審判決は、法人税法の解釈適用を誤ったことは明らかであり、かかる法令違反が判決に影響を及ぼすことは明白である。

二、経験則違反等について

1 租税回避の目的と『本件映画の興業に対する融資』との関連性について(一)第二審判決は、本件では、Bは、専ら租税負担の回避を図ることを目的として、原始売買契約ないし本件売買契約を締結したものであり、申立人ら組合員がBを通じ、F社による本件映画の興業に対する融資を行ったものであるとする。(二)まず、第二審判決が認定している申立人の租税負担の回避の目的とは、『減価償却費の損金計上等によって生ずる課税繰延による利益を得る目的』のことであるが、かかる目的を有すること自体何ら違法性を有するものではなく、営利を目的とする企業であれば、減価償却資産を取得するに際し、当然考慮すべき事がらであることを確認する必要がある。

すなわち、営利を目的とする企業である申立人が、専ら租税負担の回避を図るという目的(減価償却費の損金計上等によって生ずる課税上の利益を得るという目的)を有していたとするならば、その目的を達成するためには、本件映画の所有権を取得しなければならないから、当然のことながら、申立人は、本件映画の所有権を取得する意思を有していたと推認するのが経験則に適うものである。したがって、第二審判決の如く、本件映画の興業に対する融資を行ったと認定するためには、申立人が本件映画の興業に対する融資を行う意思で、融資を行ったことを基礎づける事実を明らかにする必要がある。

(三)しかるに、第二審判決は、申立人が本件映画の興業に対する融資を行う意思がなく、かつ融資を行ったことを基礎づける事実がないにもかかわらず、漫然と、本件映画の興業に対する融資を行ったと認定している点で、経験則ないし採証拠法則の適用の誤りないし審理不尽の違法がある。この点、本件取引の実質がBのF社に対する『融資』であるとすれば、Bには融資した資金の貸倒れによる以外には損失は発生しないはずである。しかるに、Bは、本件取引により、貸倒れがないにもかかわらず、約一七億円の損失が発生している(〈証拠略〉)ことからも、本件取引の実質がBのF社に対する『融資』ではないことは明らかである。

2 資金の流れについて

本件取引について、第二審判決は、申立人がF社の意図したスキーム(資金の流れ)を全部承知の上で映画リースをした旨認定するが、映画取引などの金融取引ノウハウについては企業秘密として相手方に教えないのは常識であり、右認定自体経験則に反するものである。

3 本件映画興業の利益について

第二審判決は、「本件映画が減価償却資産と認められれば、映画興業による利益よりもはるかに大きな利益が得られることとなる」と認定している(三七ページ)。

しかしながら、第二審判決は、本件映画興業の利益の多寡は本件取引時に判明していないのに、利益が少ないと決めつけているとともに、そもそも減価償却自体は損失の発生原因であり、企業会計上の利益を生ずるものではなく、第二審判決は、キャッシュフローの利益と企業会計の利益を混同するものである。このように、会計上自明の理を無視してなされた事実認定は、経験則違反ないし審理不尽の違法がある。

4 F社の配給収入について

申立人は、F社は映画売買代金の約二五%以外に九三億円以上の配給収入を得ている旨証拠(〈証拠略〉)に基づき主張しているが、第二審判決は、かかる主張を無視し、第一審判決を追認している点で、採証拠法則の適用の誤りないし審理不尽の違法がある。

三、おわりに

本件取引きは、第二審判決が認定するように、申立人ら組合員がBを通じ、F社による本件映画の興業に対する融資を行うために、本件映画について原始売買契約ないし本件売買契約を締結したものではない。

なぜなら、申立人ら組合員は、映画産業とは無縁の企業であり、かつ、F社との間に資本関係ないし取引関係等は一切なく、F社に対し、巨額の融資をする必要も理由もまったくないからである。

したがって、本件は、申立人らが、何らかの理由で、F社に対し、巨額の融資をすることになったところ、これを隠蔽するために、存在しない映画について、あたかも売買契約があったかのように仮装し、本件映画について原始売買契約ないし本件売買契約を締結したかのごとき外観を作出したという事案とはまったく異質なものなのである。

本件取引きは、一般的にリース取引として確立している制度に則り、申立人らが、本件映画を所有することにより、これをリースし、映画興業による利益の獲得を目指すとともに、併せて法人税法上認められている課税繰延による利益を図ろうとしたものなのである。

第二審判決は、かかる確立したリース制度に対する無理解と、租税回避の目的を有する取引は否認すべしとの安易な発想から出発し、本件取引の実体を何ら解明しようとしない極めて杜撰な判決というべきである。

なお、税務当局によって有効とされている航空機のレバレッジド・リース取引は、課税の繰延があって初めて営業的に成立するものであり、第二審判決の論法によるならば、正に租税回避を目的とした取引として否認されることになることを付言しておく。

以上

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/52307/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
出典:「訟務重要判例集データベース」(法務省)(https://shoumudatabasep.moj.go.jp/hanreiSearch/HanreiSearch)を加工して作成(加工:TaiLexi AI)。訟務月報52巻12号3656頁。