主文
1 本件訴えのうち,厚生労働大臣が承継前第2事件原告XCに対して原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定をすることの義務付けを求める部分(申請疾病腎臓がんに係る部分に限る。)を却下する。
2 厚生労働大臣が平成2 2年8月2 6日付けで承継前第1事件原告XA2 に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法
律1 1条1項の規定による認定の申請を却下する処分を取り消
す。
3 厚生労働大臣は,承継前第1事件原告XA2に対し,同人が平成20年3月6日付けでした申請に係る原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定をせよ。
4 厚生労働大臣が平成22年11月26日付けで承継前第2事件原告XCに対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分(申請疾病慢性腎不全に係る部分に限る。)を取り消す。
5 厚生労働大臣は,承継前第2事件原告XCに対し,同人が平成20年9月9日付けでした申請(申請疾病慢性腎不全に係る部分に限る。)に係る原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定をせよ。
6 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
7 訴訟費用は,第1事件原告らに生じた費用(承継前第1事件原告XA2に生じた費用を含む。)の2分の1と被告に生じた費用の4分の1を第1事件原告らの負担とし,第2事件原告に生じた費用(承継前第2事件原告XCに生じた費用を含む。)の4分の3と被告に生じた費用の8分の3を第2事件原告の負担とし,その余の全費用を被告の負担とする。
事実及び理由
第1章請求
第1 第1事件
1 主文2項及び3項と同旨
2 被告は,第1事件原告らに対し,300万円及びこれに対する平成22年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 第2事件
1 厚生労働大臣が平成22年11月26日付けで承継前第2事件原告XCに対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分を取り消す。
2 厚生労働大臣は,承継前第2事件原告XCに対し,同人が平成20年9月9日付けでした申請に係る原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定をせよ。
3 被告は,第2事件原告に対し,300万円及びこれに対する平成23年1月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2章事案の概要
本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条の被爆者である承継前原告らが,それぞれ被爆者援護法11条1項の規定による認定(以下「原爆症認定」という。)の申請(以下,併せて「本件各申請」という。)をしたところ,厚生労働大臣が本件各申請を却下する旨の処分(以下,併せて「本件各却下処分」という。)をしたことから,原告らが,被告に対し,本件各却下処分の取消し及び原爆症認定の義務付けを求めるとともに,国家賠償法1条1項の規定により,慰謝料各200万円及び弁護士費用各100万円並びにこれらに対する不法行為後である請求の趣旨変更申立書送達の日の各翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
第1 法令の定め
1 被爆者援護法の目的
被爆者援護法の前文は,同法の目的について,次のとおり規定する。「昭和二十年八月,広島市及び長崎市に投下された原子爆弾という比類のない破壊兵器は,幾多の尊い生命を一瞬にして奪ったのみならず,たとい一命をとりとめた被爆者にも,生涯いやすことのできない傷跡と後遺症を残し,不安の中での生活をもたらした。
このような原子爆弾の放射能に起因する健康被害に苦しむ被爆者の健康の保持及び増進並びに福祉を図るため,原子爆弾被爆者の医療等に関する法律及び原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律を制定し,医療の給付,医療特別手当等の支給をはじめとする各般の施策を講じてきた。また,我らは,再びこのような惨禍が繰り返されることがないようにとの固い決意の下,世界唯一の原子爆弾の被爆国として,核兵器の究極的廃絶と世界の恒久平和の確立を全世界に訴え続けてきた。
ここに,被爆後五十年のときを迎えるに当たり,我らは,核兵器の究極的廃絶に向けての決意を新たにし,原子爆弾の惨禍が繰り返されることのないよう,恒久の平和を念願するとともに,国の責任において,原子爆弾の投下の結果として生じた放射能に起因する健康被害が他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ,高齢化の進行している被爆者に対する保健,医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講じ,あわせて,国として原子爆弾による死没者の尊い犠牲を銘記するため,この法律を制定する。」
2 被爆者
被爆者援護法において,「被爆者」とは,次の⑴~⑷のいずれかに該当する者であって被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう(被爆者援護法1条)。⑴原子爆弾が投下された際に当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者(同条1号。なお,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令(以下「被爆者援護法施行令」という。)1条1項,別表第一は,上記の「政令で定めるこれらに隣接する区域」として,広島県安芸郡等の一部及び長崎県西彼杵郡の一部を規定している。)⑵原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間内に上記⑴の区域のうち政令で定める区域内に在った者(被爆者援護法1条2号。なお,被爆者援護法施行令1条2項は,上記の「政令で定める期間」を,広島市に投下された原子爆弾(以下「広島原爆」という。)については昭和20年8月20日まで,長崎市に投下された原子爆弾(以下「長崎原爆」という。)については同月23日までとしており,同条3項,別表第二は,上記の「政令で定める区域」として,おおむね爆心地から2km以内の区域を規定している。)⑶上記⑴及び⑵に掲げる者のほか,原子爆弾が投下された際又はその後において,身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者(被爆者援護法1条3号)
⑷上記⑴~⑶に掲げる者がそれぞれに記載された事由に該当した当時その者の胎児であった者(同条4号)
3 被爆者健康手帳
被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は,その居住地(居住地を有しないときは,その現在地)の都道府県知事(広島市又は長崎市にあっては,当該市の長(被爆者援護法49条)。以下同じ。)に申請しなければならず(被爆者援護法2条1項),都道府県知事は,同申請に基づいて審査し,申請者が前記2⑴~⑷のいずれかに該当すると認めるときは,その者に被爆者健康手帳を交付する(同条3項)。
4 被爆者に対する援護
⑴健康管理
都道府県知事は,被爆者に対し,毎年,厚生労働省令で定めるところにより,健康診断を行い(被爆者援護法7条),同健康診断の結果必要があると認めるときは,当該健康診断を受けた者に対し,必要な指導を行う(被爆者援護法9条)。
⑵医療の給付
厚生労働大臣は,原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し,又は疾病にかかり,現に医療を要する状態にある被爆者(ただし,当該負傷又は疾病が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは,その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る。)に対し,必要な医療の給付を行う(被爆者援護法10条1項)。
上記の医療の給付の範囲は,①診察,②薬剤又は治療材料の支給,③医学的処置,手術及びその他の治療並びに施術,④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護,⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護並びに⑥移送であり(同条2項),これら医療の給付は,厚生労働大臣が指定する医療機関に委託して行う(同条3項)。上記の医療の給付を受けようとする者は,あらかじめ,当該負傷又は疾病が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定(原爆症認定)を受けなければならない(被爆者援護法11条1項)。
⑶一般疾病医療費の支給
厚生労働大臣は,被爆者が,負傷又は疾病(前記⑵の医療の給付を受けることができる負傷又は疾病,遺伝性疾病,先天性疾病及び厚生労働大臣の定めるその他の負傷又は疾病を除く。)につき,都道府県知事が指定する医療機関から前記⑵①~⑥に掲げる医療を受け,又は緊急その他やむを得ない理由により上記医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは,その者に対し,当該医療に要した費用の額を限度として,一般疾病医療費を支給することができる(被爆者援護法18条1項本文)。
⑷医療特別手当の支給
都道府県知事は,原爆症認定を受けた者であって,当該認定に係る負傷又は疾病の状態にあるものに対し,医療特別手当を支給する(被爆者援護法24条1項)。
上記の者は,医療特別手当の支給を受けようとするときは,上記の要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない(同条2項)。医療特別手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき13万5400円とする(同条3項。なお,上記の額は,後記⑼の規定により,平成17年以降,ほぼ1年ごとに改定されている。)。医療特別手当の支給は,上記の認定を受けた者が同認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,上記の要件に該当しなくなった日の属する月で終わる(同条4項)。
⑸特別手当の支給
都道府県知事は,原爆症認定を受けた者に対し,その者が医療特別手当の支給を受けている場合を除き,特別手当を支給する(被爆者援護法25条1項)。
上記の者は,特別手当の支給を受けようとするときは,上記の要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない(同条2項)。特別手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき5万円とする(同条3項。なお,上記の額は,後記⑼の規定により,平成17年以降,ほぼ1年ごとに改定されている。)。特別手当の支給は,上記の認定を受けた者が同認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,上記の要件に該当しなくなった日の属する月で終わる(同条4項)。
⑹健康管理手当の支給
都道府県知事は,被爆者であって,造血機能障害,肝臓機能障害その他の厚生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し,その者が医療特別手当,特別手当又は原子爆弾小頭症手当の支給を受けている場合を除き,健康管理手当を支給する(被爆者援護法27条1項。なお,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則(以下「被爆者援護法施行規則」という。)51条は,上記の「厚生労働省令で定める障害」として,造血機能障害,肝臓機能障害,細胞増殖機能障害,内分泌腺機能障害等を規定している。)。
⑺保健手当の支給
都道府県知事は,被爆者のうち,原子爆弾が投下された際に爆心地から2kmの区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対し,これらの者が医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当又は健康管理手当の支給を受けている場合を除き,保健手当を支給する(被爆者援護法28条1項)。
⑻その他の手当等の支給
都道府県知事は,一定の要件を満たす被爆者等に対し,原子爆弾小頭症手当(被爆者援護法26条),介護手当(被爆者援護法31条)等を支給する。⑼手当額の自動改定
医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当,健康管理手当及び保健手当については,総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数が平成5年(上記各手当の額の改定の措置が講じられたときは,直近の当該措置が講じられた年の前年)の物価指数を超え,又は下るに至った場合においては,その上昇し,又は低下した比率を基準として,その翌年の4月以降の当該手当の額を改定するものとし,その改定の措置は,政令(被爆者援護法施行令17条)で定める(被爆者援護法29条)。
5 原爆症認定の手続等
⑴原爆症認定の申請
原爆症認定を受けようとする者は,厚生労働省令で定めるところにより,その居住地の都道府県知事を経由して,厚生労働大臣に申請書を提出しなければならない(被爆者援護法施行令8条1項)。
(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)
出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/84331/detail5/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。
出典:「訟務重要判例集データベース」(法務省)(https://shoumudatabasep.moj.go.jp/hanreiSearch/HanreiSearch)を加工して作成(加工:TaiLexi AI)。訟務月報63巻2号157頁。