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高裁

広島高判 令和2年6月22日

平成30年(行コ)第1号 原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件

裁判所
広島高等裁判所第2部
裁判年月日
令和2年6月22日 (2020-06-22)
事件番号
平成30年(行コ)第1号
事件名
原爆症認定申請却下処分取消等請求控訴事件
裁判の種類・結果
 その他
判例集等
—
分野
行政
この事件の審級
  1. 第一審広島地判平成29・11・28
  2. 控訴審広島高判令和2・6・22

主文

1 原判決中,控訴人A2,控訴人A3(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。),控訴人A4(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。),控訴人A6(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。),控訴人A10(申請疾病を急性心筋梗塞とする部分に限る。)に関する部分を取り消す。

2 厚生労働大臣が平成22年2月23日付けで控訴人A2に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分を取り消す。

3 厚生労働大臣が平成22年7月29日付けで控訴人A3に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。)を取り消す。

4 厚生労働大臣が平成22年7月29日付けで控訴人A4に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。)を取り消す。

5 厚生労働大臣が平成22年11月26日付けで控訴人A6に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分(申請疾病を甲状腺機能低下症とする部分に限る。)を取り消す。

6 厚生労働大臣が平成24年12月14日付けで控訴人A10に対してした原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による認定の申請を却下する処分(申請疾病を急性心筋梗塞とする部分に限る。)を取り消す。

7 控訴人A3,控訴人A4,控訴人A6及び控訴人A10のその余の本件各控訴並びにその余の控訴人らの本件各控訴をいずれも棄却する。

8 訴訟費用は,控訴人A2,控訴人A3,控訴人A4,控訴人A6及び控訴人A10と被控訴人との間では,同各控訴人らと被控訴人の間で生じたものをそれぞれ第1,2審を通じて3分し,その2を同各控訴人らの負担とし,その余を被控訴人の負担とし,その余の控訴人らと被控訴人との間で生じた控訴費用は,同控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1章控訴の趣旨

第1 原判決中,控訴人らに関する部分を取り消す。

第2 厚生労働大臣が,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項に基づき,原判決別紙「被爆実態一覧」記載の各控訴人(ただし,控訴人Bらを除く。)及びA1の各原爆症認定申請に対して行った同別紙中「原処分」欄記載の各却下処分をいずれも取り消す。

第2章事案の概要(以下,特に断らない限り,書証番号は第1事件のものである。)

第1 要旨

本件は,原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(以下「被爆者援護法」という。)1条に該当する者として被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者である控訴人ら(ただし,控訴人Bらを除く。)及びA1(同人は,原審の訴訟係属中に死亡し,控訴人Bらがその地位を承継した。)が,厚生労働大臣に対し,同法11条1項に基づき,同項に定める認定(以下「原爆症認定」という。)の申請をしたところ,厚生労働大臣から各却下処分(包括して,以下「本件各処分」という。)を受けたため,その取消しを求めた事案である。

原審が控訴人らの各請求をいずれも棄却したので,控訴人らが本件各控訴を提起した。

なお,控訴人らは,原審において,被控訴人に対し,本件各処分が被爆者援護法に反する違法行為に当たるとして,国家賠償法1条1項に基づき,慰謝料等として各300万円(ただし,控訴人Bらについては各150万円)及びこれに対する遅延損害金の支払を求めていた。原審は,これらの請求もいずれも棄却したが,控訴人らは不服申立てをしなかった。

第2 法令の定め等

1 被爆者援護制度の概要

被爆者の定義

被爆者援護法において,「被爆者」とは,次の各号のいずれかに該当する者であって,被爆者健康手帳の交付を受けたものをいう(被爆者援護法1条)。1号原子爆弾が投下された際当時の広島市若しくは長崎市の区域内又は政令で定めるこれらに隣接する区域内に在った者(以下「直接被爆者」ということがある。)

2号原子爆弾が投下された時から起算して政令で定める期間(広島市に投下された原子爆弾〔以下「広島原爆」という。〕については昭和20年8月20日まで,長崎市に投下された原子爆弾〔以下「長崎原爆」という。〕については同月23日まで)内に前号に規定する区域のうち政令で定める区域内(おおむね爆心地から2km以内の区域)に在った者(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令〔以下「被爆者援護法施行令」という。〕1条2項,3項,別表第二)(以下「入市被爆者」ということがある。)

3号前二号に掲げる者のほか,原子爆弾が投下された際又はその後において,身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者4号前三号に掲げる者が当該各号に規定する事由に該当した当時その者の胎児であった者

被爆者健康手帳

被爆者健康手帳の交付を受けようとする者は,その居住地の都道府県知事(広島市又は長崎市にあっては,当該市の長〔被爆者援護法49条〕であり,この項及び次項において同じである。)に申請しなければならず,都道府県知事は,同申請に基づいて審査し,申請者が被爆者に該当すると認めるときは,その者に被爆者健康手帳を交付する(同法2条1項,3項)。

被爆者に対する援護

ア 健康管理

都道府県知事は,被爆者に対し,毎年,厚生労働省令で定めるところにより,健康診断を行い,同診断の結果必要があると認めるときは,当該診断を受けた者に対し,必要な指導を行う(被爆者援護法7条,9条)。

イ 医療の給付

厚生労働大臣は,原子爆弾の傷害作用に起因して負傷し,又は疾病にかかり,現に医療を要する状態にある被爆者に対し,必要な医療の給付を行う。ただし,当該負傷又は疾病(以下「疾病等」という。)が原子爆弾の放射能に起因するものでないときは,その者の治癒能力が原子爆弾の放射能の影響を受けているため現に医療を要する状態にある場合に限る(被爆者援護法10条1項)。

上記医療の給付の範囲は,①診察,②薬剤又は治療材料の支給,③医学的処置,手術及びその他の治療並びに施術,④居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護,⑤病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護並びに⑥移送であり,これら医療の給付は,厚生労働大臣が指定する医療機関(以下「指定医療機関」という。)に委託して行う(被爆者援護法10条2項,3項)。

上記医療の給付を受けようとする者は,あらかじめ,当該疾病等が原子爆弾の傷害作用に起因する旨の厚生労働大臣の認定(原爆症認定)を受けなければならない(被爆者援護法11条1項)。

ウ 一般疾病医療費の支給

厚生労働大臣は,被爆者が,疾病等(上記イの医療の給付を受けることができる疾病等,遺伝性疾病及び先天性疾病等を除く。)につき,都道府県知事が指定する医療機関から上記イに掲げる医療を受け,又は緊急その他やむを得ない理由により上記医療機関以外の者からこれらの医療を受けたときは,その者に対し,当該医療に要した費用の額を限度として,一般疾病医療費を支給することができる(被爆者援護法18条1項本文)。

エ 医療特別手当の支給

都道府県知事は,原爆症認定を受けた者であって,当該認定に係る疾病等の状態にあるものに対し,医療特別手当を支給する。

上記の者は,医療特別手当の支給を受けようとするときは,上記要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない。医療特別手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき13万5400円とする(支給額は,後記ケの規定により,平成17年以降,ほぼ1年ごとに改定されている。現在の額は14万1360円である。)。

医療特別手当の支給は,上記認定を受けた者が同認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,上記要件に該当しなくなった日の属する月で終わる(被爆者援護法24条)。

オ 特別手当の支給

都道府県知事は,原爆症認定を受けた者に対し,その者が医療特別手当の支給を受けている場合を除き,特別手当を支給する。

上記の者は,特別手当の支給を受けようとするときは,上記要件に該当することについて,都道府県知事の認定を受けなければならない。特別手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき5万円とする(支給額は,後記ケの規定により,平成17年以降ほぼ1年ごとに改定され,現在は5万2200円である。)。

特別手当の支給は,上記認定を受けた者が同認定の申請をした日の属する月の翌月から始め,上記要件に該当しなくなった日の属する月で終わる(被爆者援護法25条)。

カ 健康管理手当の支給

都道府県知事は,被爆者であって,造血機能障害,肝臓機能障害その他の厚生労働省令で定める障害を伴う疾病(原子爆弾の放射能の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。)にかかっているものに対し,その者が医療特別手当,特別手当又は原子爆弾小頭症手当の支給を受けている場合を除き,健康管理手当を支給する。

健康管理手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき3万3300円とする(被爆者援護法27条。支給額は,後記ケの規定により,平成17年以降ほぼ1年ごとに改定され,現在は3万4770円である。)。

キ 保健手当の支給

都道府県知事は,被爆者のうち,原子爆弾が投下された際爆心地から2kmの区域内に在った者又はその当時その者の胎児であった者に対し,これらの者が医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当又は健康管理手当の支給を受けている場合を除き,保健手当を支給する。

保健手当は,月を単位として支給するものとし,その額は,1か月につき1万6700円(厚生労働省令で定める範囲の身体上の障害〔原子爆弾の傷害作用の影響によるものでないことが明らかであるものを除く。〕がある者,配偶者,子及び孫のいずれもいない70歳以上の者であって同居者がいないものは3万3300円)とする(被爆者援護法28条。支給額は,後記ケの規定により,平成17年以降ほぼ1年ごとに改定され,現在はそれぞれ,1万7440円,3万4770円である。)。

ク その他の手当等の支給

都道府県知事は,一定の要件を満たす被爆者等に対し,原子爆弾小頭症手当(被爆者援護法26条),介護手当(同法31条)等を支給する。

ケ 手当額の自動改定

医療特別手当,特別手当,原子爆弾小頭症手当,健康管理手当及び保健手当については,総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数が平成5年(上記各手当の額の改定の措置が講じられたときは,直近の当該措置が講じられた年の前年)の物価指数を超え,又は下るに至った場合においては,その上昇し,又は低下した比率を基準として,その翌年の4月以降の当該手当の額を改定するものとし,その改定の措置は,政令で定める(被爆者援護法29条,同法施行令17条)。

2 原爆症認定の手続等

原爆症認定の申請

原爆症認定を受けようとする者は,厚生労働省令で定めるところにより,その居住地の都道府県知事を経由して,厚生労働大臣に申請書を提出しなければならない(被爆者援護法施行令8条1項)。

上記申請書は,①被爆者の氏名,性別,生年月日及び居住地並びに被爆者健康手帳の番号,②疾病等の名称,③被爆時の状況(入市の状況を含む。),④被爆直後の症状及びその後の健康状態の概要,⑤医療の給付を受けようとする指定医療機関の名称及び所在地等を記載した所定の様式の認定申請書によらなければならない。また,上記申請書には,当該疾病等に係る医師の意見書及び検査成績を記載した書類を添えなければならず,同意見書には,既往症,現症所見,当該疾病等に関する原子爆弾の放射線起因性等についての医師の意見及びその理由,必要な医療の内容及び期間等を記載すべきものとされている(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則12条)。審議会等の意見聴取

厚生労働大臣は,原爆症認定を行うに当たっては,当該疾病等が原子爆弾の傷害作用に起因すること又は起因しないことが明らかであるときを除き,審議会等(国家行政組織法8条に規定する機関をいう。)で政令で定めるものの意見を聴かなければならない(被爆者援護法11条2項)。上記審議会等は,厚生労働省に置かれた疾病・障害認定審査会である(被爆者援護法施行令9条,厚生労働省組織令132条,133条)。

(長文のため、ここでは本文の冒頭のみを掲載しています。全文はこのページの表示後に読み込まれます。原本は原本PDFをご覧ください。)

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/89720/detail4/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。