税務訴訟資料第270号-42(順号13402)
神戸地方裁判所平成●●年(○○)第●●号所得税等更正処分取消請求事件
国側当事者・国(西宮税務署長)
令和2年3月19日却下・棄却・控訴
判決
原告甲
同訴訟代理人弁護士上杉一美
被告国
同代表者法務大臣三好雅子
処分行政庁西宮税務署長
安岡彰
同指定代理人野口弘雄
同市谷諭史
同東正幸
同矢野健太郎
同岡崎年晴
同岡田浩士
同松瀬明
同桑原昌志
主文
1 本件訴えのうち、原告の平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分の取消しを求める部分を却下する。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求の趣旨
1 西宮税務署長が平成29年3月14日付けでした原告の平成22年分の所得税に係る更正処分のうち納付すべき税額マイナス19万4550円を超える部分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(ただし、更正処分及び重加算税賦課決定処分については、平成30年5月14日付け裁決によりそれぞれ一部取り消された後のもの)を取り消す。
2 西宮税務署長が平成29年3月14日付けでした原告の平成24年分の所得税に係る更正処分(ただし、平成30年5月14日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額25万6600円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
3 西宮税務署長が平成29年3月14日付けでした原告の平成25年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分(ただし、平成30年5月14日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額26万2700円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
4 西宮税務署長が平成29年3月14日付けでした原告の平成26年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分(ただし、平成30年5月14日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額5269万5000円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
5 西宮税務署長が平成29年3月14日付けでした原告の平成27年分の所得税及び復興特別所得税に係る更正処分(ただし、平成30年5月14日付け裁決により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき税額マイナス65万1080円を超える部分及び過少申告加算税の賦課決定処分を取り消す。
第2 事案の概要
原告は、西宮税務署長から、平成22年分及び平成24年分の所得税並びに平成25年分から平成27年分までの所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)に係る各更正処分、上記各所得税又は所得税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分並びに平成22年分の所得税に係る重加算税の賦課決定処分(以下、順に「本件各更正処分」、「本件各過少申告加算税賦課決定処分」及び「本件重加算税賦課決定処分」といい、これらを併せて「本件各処分」という。)を受けた。
本件は、医療法人社団A(以下「A」という。)が原告の妻であった者及び子らに対して支払った金員を原告への給与であると認定したことは誤りであるなどとして、原告が本件各処分(ただし、本件各更正処分及び本件重加算税賦課決定処分については、審査請求についての裁決(以下「本件裁決」という。)により一部取り消された後のもの)の取消しを求める事案である。
1 関係法令の定め
(1)所得税法
給与所得とは、俸給、給料、賃金、歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得をいう(28条1項)。
(2)国税通則法(平成28年法律第15号による改正前のもの。以下、特に断らない限り、同改正前のものをいう。)
ア 税務署長は、納税申告書の提出があった場合において、その納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正する(24条)。
イ 期限内申告書が提出された場合において、更正があったときは、当該納税者に対し、その更正に基づき国税通則法35条2項の規定により納付すべき税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する過少申告加算税を課する(65条1項)。
ウ 上記イの規定に該当する場合において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する(68条1項)。
エ 次に掲げる更正又は賦課決定は、次に定める期限又は日から5年を経過した日以後においては、することができない(70条1項)。
(ア)更正その更正に係る国税の法定申告期限(同項1号)
(イ)課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定その納税義務の成立の日(同項3号)
オ 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正は、上記エの規定にかかわらず、上記エ(ア)及び(イ)に定める期限又は日から7年を経過する日まで、することができる(70条4項)。
カ 国税に関する法律に基づく処分で不服申立てをすることができるものの取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経た後でなければ、提起することができない。ただし、下記に該当するときは、この限りでない。(平成26年法律第69号による改正後の国税通則法115条)
記
審査請求についての裁決を経ることにより生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき、その他その裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき(同条1項3号)
2 前提事実(争いのない事実及び掲記の証拠により認定できる事実)
(1)アAは、病院及び介護老人保健施設の経営等を目的として、昭和59年11月●日に設立された医療法人である(乙4)。
イ 乙(以下「乙」という。)は昭和46年から平成28年2月29日まで原告の妻であった者であり、原告と乙との間には、長男丙(以下「丙」という。)及び二男丁(以下「丁」といい、乙、丙及び丁を併せて「乙ら」という。)がいる(乙13)。
ウ 原告は、現在まで、Aの理事長の地位にあり、乙及び丙は、Aの理事の地位にあったが、平成26年5月22日までに、任期満了により退任した(乙4、13及び16)。
(2)アAは、乙に対し、①平成22年1月から平成26年5月まで、各月75万4200円から所得税相当額等を差し引いた金額のうち、18万円を、株式会社B銀行西宮支店に開設された乙名義の普通預金口座(以下「本件乙口座1」という。)に、18万円を差し引いた残額を、株式会社C銀行(当時。以下同じ。)西宮支店に開設された乙名義の普通預金口座(以下「本件乙口座2」という。)に振込送金し、②平成26年6月から同年11月まで、各月75万4200円から所得税相当額等を差し引いた金額を、本件乙口座1に振込送金していた(甲2、乙5ないし7)。
イ Aは、丙に対し、平成22年1月から平成27年9月まで、各月25万円から所得税相当額等を差し引いた金額を、株式会社D銀行に開設された丙名義の通常貯金口座(以下「本件丙口座」という。)に振込送金していた(乙8、9)。
ウ Aは、丁に対し、平成22年1月から平成26年9月まで、各月10万円を、株式会社C銀行西宮支店に開設された丁名義の普通預金口座(以下「本件丁口座」という。)に振込送金していた(乙10。以下、上記アないしウの金員を併せて「本件各金員」といい、その振込送金がされた口座を併せて「本件各口座」という。)。
(3)ア原告は、平成22年分、平成24年分ないし平成27年分(以下「各年分」という。)の所得税又は所得税等について、別表1及び2の「確定申告」欄記載のとおり、それぞれ確定申告をした(乙11の1ないし5)。
イ 原告は、平成26年8月15日、平成25年分の所得税等について、先物取引に係る雑所得等の計上漏れ等を理由として、別表1の「修正申告」欄記載のとおり、修正申告をした(乙12)。
(4)ア西宮税務署長は、平成29年3月14日付けで、上記(3)アの各申告書に係る課税標準等及び税額等について、①本件各金員が原告に対する給与に該当すること(各年分、給与所得)、②乙名義の不動産から生じた賃貸料収入が原告に帰属すること(各年分、不動産所得)、③乙名義の個人年金が原告に帰属すること(平成24年分ないし平成27年分、雑所得)、④乙名義のFX取引から生じた取得が原告に帰属すること(平成22年分、分離先物取引所得)、⑤原告名義の個人年金等が申告されていないこと(各年分、雑所得)を理由として、別表1及び2の「更正処分等」欄記載のとおり、本件各更正処分をした(乙33の1ないし5。以下、上記①ないし④の所得をそれぞれ「本件給与所得」、「本件不動産所得」、「本件雑所得」及び「本件分離先物取引所得」という。)。
イ 西宮税務署長は、同日付けで、別表1及び2の「更正処分等」欄のうち「過少申告加算税の額」欄記載のとおり、本件各過少申告加算税賦課決定処分をした(乙33の1ないし5)。
ウ 西宮税務署長は、同日付けで、原告が、本件不動産所得、本件雑所得及び本件分離先物取引所得を乙に帰属するかのように仮装したと認められることを理由として、別表1及び2の「更正処分等」欄のうち「重加算税の額」欄記載のとおり、それぞれ重加算税の賦課決定処分をした(乙33の1ないし5)。
(5)ア原告は、平成29年6月14日、国税不服審判所長に対し、①平成22年分の所得税に係る更正処分について、本件給与所得及び本件不動産所得に関する判断を、②平成24年分から平成27年分までの所得税又は所得税等に係る更正処分について、本件給与所得、本件不動産所得及び本件雑所得に関する判断を不服として、それらの取消しを求めるとともに、③上記(4)ウの各重加算税賦課決定処分の取消しを求め、審査請求をした(以下「本件審査請求」という。)。原告は、本件各過少申告加算税賦課決定処分については、本件審査請求の対象としなかった。(乙1)
イ 原告は、本件審査請求について、本件重加算税賦課決定処分のうち1万7500円を超える部分の取消しを求める旨の補正をした(乙2)。
(6)国税不服審判所長は、平成30年5月14日付けで、本件審査請求について、本件不動産所得及び本件雑取得はいずれも乙に帰属すると認められるとして、別表1及び2の「裁決」欄記載のとおり、本件各更正処分の一部を取り消すとともに、平成22年分の所得税に係る重加算税賦課決定処分(本件重加算税賦課決定処分)の一部及び平成24年分ないし平成27年分の所得税又は所得税等に係る重加算税賦課決定処分の全部を取り消し、その余の請求を棄却する旨の本件裁決をした(甲1)。本件裁決による全部又は一部取消し後の本件各処分の内容は、次のとおりである。
ア 平成22年分
(ア)納付すべき税額
199万7900円
(イ)過少申告加算税の額
21万3000円
(ウ)重加算税の額
1万7500円
イ 平成24年分
(ア)納付すべき税額
32万4600円
(イ)過少申告加算税の額
6000円
ウ 平成25年分
(ア)納付すべき税額
33万7500円
(イ)過少申告加算税の額
7000円
エ 平成26年分
(ア)納付すべき税額
5293万7500円
(イ)過少申告加算税の額
2万4000円
オ 平成27年分
(ア)納付すべき税額
マイナス37万0991円
(イ)過少申告加算税の額
2万8000円
(7)原告は、平成30年10月11日、本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
3 争点及び当事者の主張
(1)本案前の主張
ア 本件各更正処分の取消しを求める訴えの適法性(争点1)
(被告の主張)
原告が本件審査請求で不服を申し立てた本件給与所得、本件不動産所得及び本件雑所得に関して、原告の主張が認められた場合、原告の納付すべき税額は、平成22年分につき201万2400円、平成24年分につき33万9100円、平成25年分につき33万8200円、平成26年分につき5293万8100円、平成27年分につきマイナス37万0668円となる。そうすると、原告は、本件審査請求において、本件各更正処分のうち上記各金額を超える部分の取消しを求めていたものと解される。本件裁決が本件各更正処分の一部を取り消したことにより、各年分に係る納付すべき税額は上記各金額を下回ることとなったから、本件各更正処分の取消しを求める訴えは、適法な審査請求の前置を欠くものとして、不適法になると解される。
(原告の主張)
課税処分についての審査請求は、当該課税処分によって確定された税額の当否を判断するために必要な事項全般を審査対象とするから、本件各更正処分の取消しを求める訴えは、適法な審査請求を経たものである。
また、本件審査請求の対象は、本件各更正処分のうち本件訴訟において取消しを求める部分と同じであると解すべきである。そのように解さないのであれば、国税不服審判所長は、その旨原告に教示すべきだったのであり、当該教示をせずに、被告が本件訴訟において原告の請求が審査請求の前置を欠くと主張することは、時機を失するもので権利濫用に当たる。
イ 本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの適法性(争点2)(被告の主張)
原告は本件審査請求において本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求めていないから、その取消しを求める訴えは、適法な審査請求の前置を欠くもので不適法である。(原告の主張)
本税に係る更正処分が全部又は一部取り消されたときは、その取消しに伴い、附帯税である加算税の賦課決定処分もその根拠を失う。納税者が本税に係る更正処分の取消しを求めて審査請求をした場合、加算税の賦課決定処分を審査請求の対象としていなくとも、加算税の賦課決定処分の取消しを求める訴えは、審査請求前置の要件を満たすと解すべきである。
ウ 本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの適法性(争点3)
(被告の主張)
原告は本件審査請求において本件重加算税賦課決定処分のうち1万7500円を超える部分の取消しを求めたが、本件裁決により同部分は取り消されたから、それを超えない部分の取消しを求める訴えは、適法な審査請求の前置を欠くものとして不適法というべきである。
(原告の主張)
上記イと同じ。
(2)本件絡与所得の帰属(本件各更正処分及び本件各過少申告加算税賦課決定処分について)(争点4)
(原告の主張)
本件給与所得は、原告ではなく、乙らに帰属する。すなわち、本件各金員は、乙及び丙に対しては、A理事の給与として、丁に対しては、顧問料として、それぞれ支払われたものである。原告は、乙らのために本件各口座を開設し、本件各金員を預かっていたにすぎない。
(被告の主張)
本件各金員は、給与や顧問料としての実体を伴っておらず、原告が同名目で自らが管理する本件各口座に振込送金したものにすぎないから、原告の給与所得に該当する。
(3)本件分離先物取引所得に係る仮装の有無(本件重加算税賦課決定処分について)(争点5)
(原告の主張)
原告は、乙名義のFX取引による本件分離先物取引所得について、当該所得が乙に帰属するかのように仮装していない。
(被告の主張)
原告は、本件分離先物取引所得が自らに帰属することを認識しながら、その名義を乙に仮装し、平成22年分の所得税に係る確定申告をしたものであるから、国税通則法68条1項所定の要件を満たす。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(本件各更正処分の取消しを求める訴えの適法性)について
いわゆる総額主義の下では、課税処分の取引訴訟における実体上の審判の対象は当該課税処分によって確定された税額の適否である(最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決・民集46巻2号77頁)から、所得税に係る課税処分の訴訟物は、当該処分によって確定された所得税額を基準として定められるものと解される。
これを本件についてみると、証拠(乙1)によれば、原告は、本件審査請求において、各年分の所得税又は所得税等のうち「(不動産所得・給与所得・本件乙名義年金)」等を対象とする旨記載していることが認められるが、取消しを求める対象を一定の所得税額を超える部分として特定していないことが認められる。そうすると、本件審査請求は、本件各更正処分の一部ではなく全部の取消しを求めるものであり、「(不動産所得・給与所得・本件乙名義年金)」等の記載は、取消しを求める理由や争点を記載したにとどまるものと解するのが相当である。したがって、本件各更正処分の取消しを求める訴えは、審査請求についての裁決を経ているものと評価するのが相当であり、適法なものと解される。
2 争点2(本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの適法性)について前記前提事実(5)アのとおり、原告は、本件審査請求において、本件各過少申告加算税賦課決定処分を審査請求の対象としていなかったものである。
しかし、過少申告加算税は本税に係る更正に附帯して課される税であり、本税に係る更正処分と当該更正に基づく過少申告加算税の賦課決定処分は、密接に関連するものである上、同決定処分は本件給与所得等に係る更正に基づいてされているところ、原告は、本件審査請求において、本件給与所得の帰属を争い、本件各更正処分の取消しを求めていたものである。そうすると、本件各過少申告加算税賦課決定処分を審査請求の対象としていなかったとしても、本件においては、裁決を経ないことにつき正当な理由がある(国税通則法115条1項3号)と解すべきである。
したがって、本件各過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えは、適法である。
3 争点3(本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えの適法性)について前記前提事実(4)ないし(6)及び証拠(甲1及び乙33の1)によれば、原告は、本件審査請求において、当初、本件重加算税賦課決定処分の全部の取消しを求めたが、その後、そのうち1万7500円(本件分離先物取引所得に係る仮装を理由とする重加算税の額)を超える部分の取消しを求める旨の補正をし、当該部分が本件裁決により取り消されたと認められる。上記補正の内容に鑑みれば、本件重加算税賦課決定処分(本件裁決により一部取り消された後のもの)の取消しを求める訴えについて、審査請求についての裁決を経ているとは認められない。
原告は、本件審査請求において、上記補正により、本件重加算税賦課決定処分のうち本件分離先物取引所得に係る仮装を理由とする部分を請求の対象から除外した上、本件各更正処分の関係でも、本件分離先物取引所得について争わなかったこと(前記前提事実(5))に照らすと、審査請求についての裁決を経ないことにつき正当な理由があるとも認められない。したがって、本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める訴えは、不適法である。
4 争点4(本件給与所得の帰属)について
(1)前記前提事実及び証拠(認定事実の末尾に掲記する。)によれば、次の事実が認められる。
ア 乙らの稼働状況
(ア)乙は、Aが設立された昭和59年11月頃から平成26年5月22日まで、Aの理事の地位にあった。乙は、その間、Aにおいて、毎年1回開催される定時社員総会や、コンサート等の行事には出席していたが、Aの理事あるいは職員として職務を行ったり、勤務をすることは一切なかった。(乙13、15及び25)。
(イ)丙は、平成18年以降、E大学医学部附属病院の常勤医師として勤務していた。丙は、乙から伝えられるまでAの理事に就任したことを認識しておらず、Aの理事の地位にあった平成26年5月22日までの間、無報酬で、Aでの日曜礼拝中に患者の救急措置を行うなどしたことはあったが、Aの定時社員総会に出席することはなく、その他の職務をすることもなかった。(乙13、17ないし19)
(ウ)丁は、平成19年11月頃、医学研究に従事するため、アメリカ合衆国に出国しており、平成20年1月1日から平成27年10月31日の間に、Aに対し、医学的相談に回答したり、医学文献を提供することもなく、その他の役務も提供したことはなかった(乙13及び21)。
イ 本件各金員の支払の経緯
Aは理事の報酬規程を定めておらず、原告が、乙及び丙に対する金員の支払及びその額を決定していた。また、丁に対する金員の支払及びその額についても原告が決定していた。(乙13、15、24、25)
ウ 本件各口座の管理状況等
(ア)原告は、平成22年から平成26年5月頃まで、本件各口座の通帳及び届出印を保管しており、その残高を乙らに知らせていなかった。乙が平成26年5月頃に本件乙口座2の通帳及び印鑑の紛失届を提出して通帳の再発行を受けたところ、原告は、株式会社C銀行に対して抗議をし、本件乙口座2を凍結させた。原告は、平成26年5月頃以降も、本件各口座のうち本件乙口座2以外の口座については、その通帳及び届出印の保管を続けていた。(乙13、15、18、20及び25)
(イ)原告と乙は、平成28年2月29日、乙が提起した離婚訴訟において、両名が離婚するとともに、本件乙口座1及び2の預金等について、その取得時から原告が権利を有することを相互に確認する旨の裁判上の和解をした(乙13・別紙4)。
(ウ)原告は、丙に対して個別に連絡をすることなく、本件丙口座から、平成21年9月9日に260万円を、平成22年1月28日に700万円をそれぞれ出金した(乙18、25)。
(エ)丁は、平成27年11月12日付けで西宮税務署長から本件丁口座についての照会を受けるまで、同口座の存在を認識していなかった(乙21)。
(2)上記認定事実のとおり、乙及び丙はAの理事の地位にあったものの、理事としてあるいはAの職員として対価を得るような職務を行っていなかったこと、丁もAに何ら役務提供を行ってないこと、乙らへの報酬は、Aの理事長である原告が、その一存で本件各金員の支払及びその額を決定し、原告が通帳及び印鑑を管理する本件各口座(ただし、平成26年5月頃以降について、本件乙口座2を除く。)に入金していたこと、原告は、丙に断ることなく本件丙口座から合計960万円を出金し、丁に対して本件丁口座の存在を知らせていなかったこと、平成26年5月頃からは、本件乙口座2について乙による引出しを防ぐため銀行に働きかけて同口座を凍結させ、乙が退任した後も原告が管理する本件乙口座1に報酬を振り込んでいたこと、原告は、乙と離婚する際、本件乙口座1及び2の預金が原告に帰属する旨確認していることが認められるのであって、これらの事実からすると、本件各口座は実質的には原告の口座であり、本件各金員はAから原告に交付されたものというべきであり、これらが乙らに対する報酬ないし役務提供の対価の性質を有していたとは解されない。したがって、本件各金員は、乙らに支払われた給与あるいは顧問料ではなく、原告に対して支払われた給与であると解するのが相当であって、本件給与所得は原告に帰属するものというべきである。
5 結論
よって、本件訴えのうち、本件重加算税賦課決定処分の取消しを求める部分は不適法であるのでこれを却下し、原告のその余の請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
神戸地方裁判所第2民事部
裁判長裁判官小池明善
裁判官武村重樹
裁判官吉川慶
別表1
課税の経緯
(単位:円)
区分
項目
確定申告
修正申告
更正処分等
審査請求
裁決
平成
年分
年月日
平成23年3月4日
平成29年3月14日
平成29年6月14日
平成30年5月14日
総所得金額
46,287,166
60,827,342
47,814,598
60,402,478
内訳
不動産所得
424,864
給与所得
46,180,000
58,767,880
46,180,000
58,767,880
雑所得
107,166
1,634,598
1,634,598
1,634,598
先物取引に係る
雑所得等の金額
10,351,430
10,351,430
10,351,430
所得控除額の合計
2,156,860
1,776,860
1,776,860
1,776,860
納付すべき税額
△194,550
2,167,900
2,012,400
1,997,900
過少申告加算税の額
213,000
213,000
213,000
重加算税の額
77,000
17,500
17,500
平成
年分
年月日
平成25年3月15日
平成29年3月14日
平成29年6月14日
平成30年5月14日
総所得金額
47,301,116
64,723,377
47,414,804
60,002,684
内訳
不動産所得
172,558
給与所得
46,180.000
58,767,880
46,180,000
58,767,880
雑所得
1,121,116
5,782,939
1,234,804
1,234,804
先物取引に係る
雑所得等の金額
246,425
246,425
246,425
所得控除額の合計
1,261,558
1,261,588
1,261,588
1,261,588
納付すべき税額
256,600
1,757,800
339,100
324,600
過少申告加算税の額
6,000
6,000
6,000
重加算税の額
500,500
平成
年分
年月日
平成26年3月14日
平成26年8月15日
平成29年3月14日
平成29年6月14日
平成30年5月14日
総所得金額
47,950,000
49,087,633
67,938,480
49,204,735
62,455,135
内訳
不動産所得
935,210
給与所得
47,950,000
47,950,000
61,200,400
47,950,000
61,200,400
雑所得
1,137,633
5,802,870
1,254,735
1,254,735
先物取引に係る
雑所得等の金額
181,005
181,005
181,005
所得控除額の合計
1,316,900
1,316,900
1,316,900
1,316,900
1,316,900
納付すべき税額
△86,119
262,700
2,112,400
338,200
337,500
過少申告加算税の額
7,000
7,000
7,000
重加算税の額
619,500
(注)△印は、還付金の額に相当する金額を示す。
別表2
課税の経緯
(単位:円)
区分
項目
確定申告
更正処分等
審査請求
裁決
平成
年分
年月日
平成27年3月12日
平成29年3月14日
平成29年6月14日
平成30年5月14日
総所得金額
48,253,384
67,108,445
48,924,582
61,120,782
内訳
不動産所得
1,439,528
給与所得
47,950,000
60,146,200
47,950,000
60,146,200
雑所得
303,384
5,522,717
974,582
974,582
先物取引に係る
雑所得等の金額
165,470
165,470
165,470
株式譲渡に係る
譲渡所得の金額
344,020,000
344,020,000
344,020,000
344,020,000
所得控除額の合計
1,313,600
1,313,600
1,313,600
1,313,600
納付すべき税額
52,695,000
54,918,200
52,938,100
52,937,500
過少申告加算税の額
24,000
24,000
24,000
重加算税の額
693,000
平成
年分
年月日
平成28年3月11日
平成29年3月14日
平成29年6月14日
平成30年5月14日
総所得金額
47,950,000
57,911,265
48,641,324
50,891,324
内訳
不動産所得
2,471,806
給与所得
47,950,000
50,200,000
47,950,000
50,200,000
雑所得
5,239,459
691,324
691,324
先物取引に係る
雑所得等の金額
136,445
136,445
136,445
所得控除額の合計
2,524,569
2,524,569
2,524,569
2,524,569
納付すべき税額
△651,080
2,389,900
△370,668
△370,991
過少申告加算税の額
28,000
28,000
28,000
重加算税の額
966,000
(注)△印は、還付金の額に相当する金額を示す。
出典:国税庁ホームページ「税務訴訟資料」(https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/soshoshiryo/kazei/2020/pdf/13402.pdf)を加工して作成(加工:TaiLexi AI)。
本文は公表資料(PDF 等)から機械的に抽出・整形したもので、改行や記号に誤りを含むことがあります。正確な文言は原本でご確認ください。