医師法案
参議院 厚生委員会
昭和23年法律第201号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
竹田儀一 厚生大臣 昭和23年6月22日ただいま議題となりました医師法案、歯科医師法案、保健婦助産婦看護婦法案についてその提案の理由を説明いたします。
國民医療法は、新憲法施行下の現在の事態には適合しない点が多々ありますとともに、一方終戰後の社会情勢の変化に対應する新たな医事制度の確立が必要でありますので、國民医療法を改正し、新たな医事法規を制定いたしますことは各方面の要望であつたのであります。このため、政府といたしましては、本年三月医藥制度調査会に対し、國民医療法改正の具體的方針をいかにすべきかにつき諮問いたしたのでありますが、同会における愼重審議の結果に基きましてその答申を得ましたので、右答申に基きまして政府において法案を整備の上今國会に提出することといたしたのであります。
以下これら三法案についてその内容の大略を申し上げたいと存じます。まづ、医師法案及び歯科医師法案について申し述べます。
第一にこの両法案は、いわゆる医師、歯科医師の身分法とも申すべきものでありまして、医師及び歯科医師の業務内容の異るに從い、これを別個の法律といたしますとともに、その規定の内容にも若干の差異がありますのでありますが、一面医師及び歯科医師の業務は相互に密接な関連がありますので、從前の例にならい、両法案の内容は大体において、その軌を一にしているのであります。
第二に、両法案はいずれも医師及び歯科医師の職分、免許、試驗及び業務等につき規定を設けておりますが、その内容はおおむね現行の規定を踏襲しているのでありまして、改正のおもなる点は、
一、医道審議会を設けて免許の取消、停止等に関してその意見を聽くこととしたこと。
二、医師といえども歯科医業を行うためには歯科医師免許を受けなければならないこととしたこと。
三、医師または歯科医師の処方箋の交付に関する從來の規定に若干の修正を加えたこと等であります。
次に保健婦、助産婦看護婦法案でありますが、本法案の内容は、昨年七月三日に制定公布されました政令、すなわち保健助婦看護婦令の内容とほとんど同樣であります。右政令は現行の省令である保健婦規則、助産婦規則及び看護婦規則とは相当異つた劃期的とも申すべき内容のものであり、今回本法案の立案にあたつても、特に右政令の内容に著しい変更を加える必要が認められませんので、大体その内容を踏襲いたしたのであります。本法案と從前の制度との内容の差異のおもなる点を申し上げますと
第一に、これらの医療関係者の素質の向上をはかるために、免許を受けることのできる者の資格を相当程度高めたことであります。すなわち現行規則によりますと、免許は都道府縣知事の指定した学校もしくは講習所を卒業した者、または都道府縣知事の行う試驗に合格した者に対して、都道府縣知事がこれを與えることになつており、しかもその学校試驗等の内容も必ずしも滿足すべきものでなく、比較的程度の低いものであつたのであります。本法案においては、看護婦を甲種乙種に分け、甲種看護婦、保健婦及び助産婦についてはいずれも文部大臣または厚生大臣の指定した新制大学程度の学校または養成所を卒業した上、さらにそれぞれの國家試驗を受け、これに合格した者に対し厚生大臣が免許を與えることとしたのであります。また乙種看護婦については、文部大臣または厚生大臣の指定したほぼ新制高等学校程度の学校または養成所を卒業した上、さらに都道府縣知事の行う試驗に合格した者に対し都道府縣知事が免許を與えることとしておるのであります。
第二に、これらの者の業務の内容でありますが、保健婦助産婦及び甲種看護婦については、それぞれ從來の保健婦、助産婦及び看護婦と実質的には何ら変りはないのでありますが、新たに助産婦は当然に甲種看護婦の業務をなすことができることとし、乙種看護婦については、甲種看護婦に比し業務の内容を制限いたすことといたしたのであります。
以上が三法案の内容の大要でありますが、何とぞ愼重御審議の上、可決せられんことを希望いたします。
続いて歯科衞生士法案の提案の理由を御説明いたします。
わが國民の多数が歯科及び口腔疾患のためにその健康を害われていることは御承知の通りでありまして、歯牙疾患の一つである、むし歯を例にとりましても、世界各國との比較において、わが國にはこれを有する者の数が特に多い実情にあるのであります。
かような現状を打開し、國民のすべてが健康な歯をもち、かつ口腔疾患から免れるためには、歯科医学の発達による治療面からする措置が必要であることはもちろんでありますが、疾患の治療と予防とは常に並行して行われなければその効果は十分でないのでありまして、歯科疾患の予防については、今日までのところ十分積極的な措置が講ぜられていなかつたのであります。この意味において歯科医師との緊密な連繋のもとに、もつぱら歯科及び口腔の疾患の予防処置をなすことを業とする者の資格を定め、これを普及させることによつて歯科疾患の予防及び口腔衞生の向上をはかる必要があると考えられるのであります。これがその法律案を提出する理由であります。
以下その内容の大略を申し上げますと、第一に、歯科衞生士になろうとする者は、都道府縣知事の免許を受けなければならないこととし、免許は、文部大臣または厚生大臣の指定した学校、養成所等を卒業した者であつて、さらに厚生大臣の行う歯科衞生試驗に合格した者に対してこれを與えることとしております。これはいやしくも口腔疾患の予防等の処置に関する業務に從事する者は、一定の学術技能を有しなければ衞生上危害を生ずるおそれがあるからであります。第二に、歯科衞生士の業務は、歯石の除去、予防のための藥剤の塗布等、予防上の一定の措置のみに限られ、しかもその業務を行うにあたつては、歯科医師の直接の指導下においてすることを要し、独立してはその業務をなし得ないことにしております。これは治療と予防との一体的運営をはかることが必要でもあり、また歯科衞生士が單独で処置をすることによつて衞生上の危害を生ずるようなおそれのある場合が考えられるからであります。
以上が本法案の内容の大要でありますが、本法案の成立は今後のわが國における歯牙疾患の予防に相当大きな役割を果すことを期待いたしておるのであります。何とぞ愼重御審議の上可決されんことを希望いたす次第であります。
第2回国会衆議院厚生委員会議録第13号9頁(昭和23年6月22日)〔竹田儀一厚生大臣発言・発言番号20〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100201177)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。