医療法案
参議院 厚生委員会
昭和23年法律第205号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
喜多楢治郎 政府委員(厚生政務次官) 昭和23年6月24日ただいま議題となりました医療法案について、その提案の理由を説明いたします。
この法律案にさきに提案いたしました医師法案、歯科医師法案等とともに、國民医療法の改正に伴う新たな医事法規の一環をなすものでありまして、いわゆる医療関係者の身分的事項を除いたその他の医療に関する事項をその内容といたしておるのでありますが、その内容は第一に病院の規格を引上げることによつて、その適正な医療の普及をはかることとしたしたのであります。すなわち從來は医療機関をわけて病院と診療所に二種類とし、病院は患者十人以上の收容施設を有するもの、診療所は病院以外のもの、つまり患者九人以下の收容施設を有するもの及び收容施設をまつたく有しないものとしていたのでありますが、本法案におきましては、いやしくも病院と称するほどのものは、充実した医療の供給を可能ならしめるため、相当程度の完備した施設を有しなければならないものとした結果、それにはやはり相当数の收容施設を有しなければならないものと考えられますので、病院は患者二十人以上の收容施設を有するものとすることにいたしました。しかして病院については前述のごとくその施設等に関し、從來よりも相当高度の基準を設けたのであります。
第二に診療所につきましては、患者の收容につき一定の制限を設けることといたしました。診療所には患者の收容施設十九名以下のもの及び收容施設を全然有しないものの両者が含まれるわけでありますが、元來診療所は患者の收容を目的としない性質のものでありますので、たとえ收容施設を有するものについても、その患者の收容について一定の制限を加える必要があると考えられるのであります。從つて診療所は特定の場合を除き、同一の患者を四十八時間を超えて收容してはならないこととしたのであります。しかしながら病院が十分に普及していないわが國の実情を勘案いたしまして、既存の診療所については、一定期間はこの規定によらないことができる旨の例外的措置が認められております。
第三に助産に関する施設につきましては、そのうち助産婦の管理するものは、これを妊産婦預り所、あるいは産院等と称しておりますが、これらについては從來中央法令による取締りの途がなかつたのであります。しかしながら最近の事例に徴しましても、これらの施設につき、至急何らかの法的規正をする必要がありますので、これらの名称を統一して助産所と称させるとともに、その收容人員等をも制限することとしました。
第四に新たに総合病院の制度を設け、患者百人以上の收容施設を有し、かつ一定の診療科名を有する病院であつて、一定の完備した施設を有するものは、都道府縣知事に承認を受けて、総合病院と称することができることとしました。これらの病院は、いわゆる第一級の病院としてわが國の医療内容の向上に資するところが大であろうことを予期しているのであります。
第五に、從來総て許可制度によつておりました病院、診療所の開設は、今後医師、歯科医師が診療所を開設する場合は届出制度とし、その他の場合に限り許可制度とすることにいたしました。
第六に、今後のわが國の医療機関をいかに整備すべきかはきわめて重要な問題でありますが、この点につきましては、根本的には厚生省及び各都道府縣に医療機関整備審議会を設けて、その全般的整備計画につき調査審議させるとともに、これに基き、特に公的医療機関を必要とする部面につきましては、地方公共團体等の経営する公的医療機関を早急に整備することとし、國庫はこれが設置費に対し、その一部を補助することができることとしたのであります。また医療機関の運営に関しましては、主として公的医療機関中整備されたものを所謂メデイカル・センターとして、その施設を開業医の利用等に開放させ、またその修習機関として活用することとし、もつて公私すべての医療機関が一体となつて、医療の普及向上に寄與し得るような態勢の確立を企図いたしておるのであります。
第七に医業、歯科医業等に関する廣告につきましては、從來通り嚴重にその内容を制限することとしたほか、新たに助産所等に関する廣告についても、同樣の嚴重な制限を設けることといたしました。
以上が法律の内容の大略でありますが、何とぞ愼重御審議の上、可決せられんことを希望いたします。
次に船員保險法の一部を改正する法律案の提案の理由を御説明いたします。
船員保險法は、船員労働が陸上の労働と異る特殊な労働態樣を有しておりますので、これに対する綜合的な唯一の社会保險制度として、船員労働力の確保増進と船員援護を主眼といたしまして、昭和十四年四月に制定され、その後情勢の変動に即應するため、制度の内容充実について、数回にわたつて改正され、今日まで実施運営され來つたのでありますが、新情勢に即應するため、他の社会保險制度と同樣に船員労働者の福祉増進をはかるため、今回船員保險法の一部改正を企図いたした次第であります。以下改正の主眼点につきましては御説明を申し上げます。
第一に、最近の立法の趨勢に鑑み、船員保險法施行令等命令に委任されておりました被保險者、被保險者であつた者その他保險給付を受ける者、または船舶所有者の権利義務に関する重要事項は、すべてこれを法律に規定いたしまして、その権利の保護に万全を期せんとするものであります。
第二に、保險給付の内容の充実であります。この点につきましては、新しい情勢に即應するため、現在の経済情勢及び保險経済とをにらみ合わせまして、所要の改正を加えました。すなわち
一、船員の家族に対する給付の創設でありまして、被保險者によつて生計を維持する者の疾病、負傷に対しましては、家族療養費として、療養に要した費用の十分の五を支給し、その死亡に対しましては、家族葬祭料として標準報酬月額の一月分に相当する額を支給すること。
二、寡婦年金、鰥夫年金、遺兒年金制度の創設でありまして、六月以上十五年未満被保險者たる者が職務外の事由によりまして死亡しましたとき、もしくは、傷病によりまして資格喪失後二年以内に死亡しましたとき、または職務外の事由によりまして、障害年金受給者でその癈疾の程度が重くて労働能力のない者が死亡しましたとき、その配偶者または子に寡婦年金、鰥夫年金、遺兒年金を支給すること。
三、障害年金受給者に対しましては、その癈疾の程度が重くて労働能力を喪失した者には、扶養者加給金として、配偶者または子一人当り年二千四百円を加給すること。
四、この改正法律施行の日前におきまして、職務上の事由による遺族年金及び障害年金の額を五倍した額まで引上げてこれを増額支給するとともに、配偶者または子のあるときはその配偶者または子一人当り二千四百円を加給すること。
五、失業保險金の日額を増額すること
等の諸点のほか、脱退手当金の支給條件を被保險者であつた期間三年以上とし、死亡脱退、または女子たる被保險者が婚姻、分娩のための脱退の場合におきましては、從前の通りといたしました。また遺族年金の受給権またはその失権等支給條件につきまして、新しい民法の精神に即應せしめた次第であります。
第三に、保險医制度でありますが、被保險者の療養を担当しますのは、いわゆる保險医でありまして、これは、從來強制指定制度でありましたのを、このたびはこれを廃止いたしまして、新たに医師の同意に基きまして、自由任意指定制度といたしたのであります。
第四に、保險料率の改正でありますが、これは現下の情勢におきまして、その負担能力とか、保險経済とを勘案いたしまして、暫定的措置としまして、保險料率を引下げたのであります。すなわち全部適用を受ける者一一・五%失業保險金を受けない者九・三%任意継続被保險者一〇・〇%といたしたのであります。
以上改正法律案提案の理由と改正の要点につきまして、簡單に御説明申し上げたのでありますが、何とぞ速やかに御審議の上可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
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第2回国会衆議院厚生委員会議録第14号16頁(昭和23年6月24日)〔喜多楢治郎政府委員発言・発言番号3〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=100201184)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。