臨時船舶建造調整法案
衆議院 運輸委員会
昭和28年法律第149号
審議経過
右の数字は会議の発言数提案理由
石井光次郎 運輸大臣 昭和28年6月19日臨時船舶建造調整法案の提案理由について御説明申上げます。
戦後我が国商船隊の再建につきましては、臨時船舶管理法によりまして建造の許可制度が行われておりましたが、同法は去る四月二十八日限りその効力を失いました。併しながら、新船の建造に関する諸般の情勢に鑑みまして、次に申述べますような理由に基きまして、右の許可制度を向う四年間に限り国際航海に従事いたします船舶について実施したいというのがこの法律案を提出いたすゆえんであります。
さて、我が国海運界の現状を見まするに、戦争によつて崩壊した商船隊の再建のために、戦後巨額な財政資金及び市中資金が投下され、更に最近、世界海運市況の悪化による船主の建治資金調達の困難化に伴い、政府は建治資金の造成を容易にするために、財政融資の増率、利子補給或いは損失補償制度の確立等に肝胆を砕いておりまして、これらの諸制度につきましても今国会で御審議をお願いする予定になつております。
このように海運の再建につきまして国家がいろいろ助成の方途を講じますことは、海外依存度の高い我が国経済にとりまして商船隊の再興が経済の自立化達成のための欠くべからざる要件であるからであります。殊に最近国際情勢の変転によりまして憂慮されております国際収支の均衡のためにも、戦争によつて壊滅した我が外航商船隊の急速且つ適切なる再建と整備とに努めなければならないことは言うまでもないところであります。
さて、かくのごとく国家が商船隊の再建につき深い関心を持つております以上、今後建造されます船舶は真に国民経済の要請に適合するものでなければならないのでありまして、このためには新船の建造につきまして政府が何らかの調整権能を留保することが適当と思料されるのであります。そしてこれは同時に又貴重な資金の有効且つ合理的使用という見地から申しましても、開銀を初め金融機関の建造融資に対する政府の助言と協力の体制として十分有効な機能を発揮し得るものと存ずるのであります。
さて、政府が新船の建造につきどのような判断を加えるかと申しますと、緊急に整備を要しまする航路の判定とか、当該航路におきましての適正な船腹量及び船賃の決定とか、商船隊再建の方向と航海条約や運賃同盟等に関連する複雑な対外関係とか、或いは海運業者なり造船業者なりに対しまする一般的な政策面の考慮等でありますが、このような点を考えれば、おのずから建造されます船舶の選択について一定の順序が存在するのでありまして、ここに船舶の建造許可制を通じて、かかる問題の調整を行い、以て新造船計画を誤りなく遂行し、商船隊再建と整備の目標を最もよく達成させようといたしたいのであります。
以上が、本法を制定いたします主な理由でありますが、次に、本法案の主な内容について簡単に申述べますれば、先ず、造船事業者が、国際航海に従事し得る五百総トン以上の鋼製船舶を建造又は重要な改造をいたします場合には、運輸大臣の許可を必要とすること、又、運輸大臣が右の許可をいたします場合には、一定の基準に従つてこれをなすことを要し、その場合許可の判断の基礎となります重要な事項につきましては、あらかじめ海運造船合理化審議会に諮つてこれを決定しなければならないこと等を規定しているのであります。又、本許可制度は、それが企業の活動に対する制約となる点より、商船隊の再建が一応目標に到達すると考えられる時期即ち四カ年間の臨時立法であることを規定いたし、許可の対象につきましても、臨時船舶管理法では鋼船の全部と、木船の二十総トン以上でありましたのを、本法案では単に五百総トン以上の、而も国際航海に従事し得る鋼製船舶に限定しておるのであります。
ここに許可対象となる船舶の建造を五百総トン以上といたしておりますのは、本法は、先にも申述べましたように、建造許可制度を通じまして我が国外航商船隊の再建と整備に資するということを目的としておるのでありまして、この場合外航とは日本、外国間及び外国相互間に就航することを意味し、従いまして、朝鮮、台湾等を含めた近海一区以遠の国際航海にはおおむね五百総トン以上の船舶がこれに従事し得るからなのであり、又、一九四八年の海上における人命の安全のための国際条約におきましても、国際航海に従事する船舶として五百総トン以上の船舶を取上げておるからなのであります。現在のところ、財政資金融資の対象となつておりますのは専ら遠洋区域の航海に従事し得る大型船の建造に限られておりますが、前述のように、本法は広く我が国外航商船隊の再建、整備に資せしめるという趣旨から申しまして、五百総トン以上の外航船舶について建造許可制をとることとしたのであります。
なお、最後に、漁船法との関係でありますが、臨時船舶管理法では、漁船のうち母船、魚獲物運搬船、トロール船、捕鯨船の四種についてのみ、同法第八条によりまして、建造許可の適用を受けることになつておりましたが、本法案では、一般商船に準ずるような機能を有する前二者についてのみ適用することとし、特に漁船としての建造許可は行わないことといたしておるのであります。
以上を以ちまして、提案理由の説明を終りたいと存じますが、何とぞ慎重御審議の上速かに可決あらんことを御願い申上げます。
第16回国会参議院運輸委員会会議録第2号2頁(昭和28年6月19日)〔石井光次郎運輸大臣発言・発言番号10〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101601040)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。