放送法の一部を改正する法律案
参議院 逓信委員会
昭和34年法律第30号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院逓信委員会
- S33.12.16趣旨説明逓信委員会 121
- S33.12.18質疑逓信委員会 278
- S33.12.23質疑・修正案・修正案趣旨説明逓信委員会 3171
- S34.2.3修正案・委員長報告・討論・採決(修正)本会議 1230
- S34.2.3討論・採決(修正)逓信委員会 513
提案理由
寺尾豊 郵政大臣 昭和33年12月16日ただいま議題となりました放送法の一部を改正する法律案の提案理由を説明申し上げます。
現行放送法が施行されましたのは昭和二十五年六月でありますが、その後今日に至る八年間における放送関係の科学及び技術の発達並びに放送関係業務の発展はきわめて著しいものがございます。特に新しい事業形態としての商業放送の出現及び新しい放送形式としてのテレビジョン放送の発足並びに放送局数及び受信者数の顕著な増加によって、放送界の事情は当時とは一変しているのでございますが、今後さらに新しい放送形式としてFM放送やカラー・テレビジョン放送が登場することをも当然予測しなければならないという情勢でございます。このような放送文化の発展とその技術の進歩に伴いまして、放送はわが国の政治、経済、産業、文化のあらゆる面に重要な役割を演じており、これが今日、国民生活の中で持っている意義及び国民生活に与える影響はまことに大きいものがありますが、このことは今後ますます増大するであろうと考えられます。
このような実情から考えまして、現行放送法は、進歩発達する放送界の実情に即応したものではないとの理由によって、国会方面初め各界からその改正が問題とされるに至ったことは、御承知の通りであります。ここにおきまして政府といたしましては、放送法の改正につきまして十分検討するとともに、日本放送協会、民間放送連盟及び実際放送事業に携わっておられる方面の意向を徴するほか、臨時放送法審議会に諮問する等各方面の意見を聞きまして鋭意努力の結果ようやく成案を得ましたので、第二十八回国会及び第三十回国会に提出いたしましたが、いずれも審議未了となった次第であります。
今回提案いたしました改正案は、第三十回国会において審議未了となりました改正案と内容は全く同じものでございますが、その概要について御説明申し上げます。
第一に、放送番組の向上適正化のため、今回の改正案で特に意を用いました点は、まず放送番組の編集上の準則を整備したことでございます。すなわち、日本放送協会と一般放送事業者の放送番組を通じまして、放送番組の編集及び放送に当っては積極的に国民に必要なニュースを提供し、教育、教養に資し、健全な慰安娯楽を提供するようにするほか、教育番組の編集及び放送については、特にその指標を明確に規定し、放送による教育効果を高からしめるように措置をしているほか、現行法に規定する準則に新たに善良な風俗を害してはならない旨を追加規定することにしております。
次に、以上申し述べました放送番組の編集及び放送についての準則の実効を確保する方法といたしまして、放送が言論機関たる特性にかんがみ、行政権による規制を避け、放送事業者の自律性を尊重する考えのもとに、次のような方法を採用いたしております。すなわち、放送事業者に放送番組審議機関の設置を義務づけ、放送事業者は、この番組審議機関に諮問して、その番組編集の基準を作成し、その番組基準に従って放送番組の編集をしなければならないものとし、かつ、放送事業者は、その番組基準を定めた場合またはこれを変更した場合には、これを公表しなければならないこととし、その順守を公衆の批判にまかせようとするものであります。またその番組審議機関には放送された放送番組の批判機関たる任務を持たせ、彼此相待って放送番組の向上適正をはかろうとするものであります。特に日本放送協会の国内番組審議機関といたしましては、中央番組審議会及び地方番組審議会を設けることとし、地方番組審議会は政令で定める地域ごとに設けなければならないことといたしております。また日本放送協会の放送番組の編集につきましては、協会の公共的使命にかんがみまして、このほか特に「豊かで、かつ、よい放送番組を放送することによって公衆の要望を満たすとともに文化水準の向上に寄与するように、最大の努力を払うこと。」等の規定を設けまして、その放送番組の編集及び放送につきまして、一般放送事業者より高い責任を負わせ、もってその放送番組の向上適正をはかっております。
次に、日本放送協会の国際放送の向上適正をはかる措置といたしまして、放送番組の編集について積極的にその準則を規定するとともに、国内放送に関する審議会とは別個に国際番組審議会を設けることといたしております。
第二に、日本放送協会に関する事項について申し上げます。まず日本放送協会の公共的な性格をより明確にし、協会の行う業務の範囲を広げ、単に協会の放送のみにとどまらず、わが国の放送全体の進歩発達を目的として、放送及びその受信の進歩発達に寄与する調査研究を行うことのほか、放送番組の提供等一般放送事業者に対し便宜を供与することができる等の規定を設けました。
次に、協会の経営機構において意思決定機関と業務執行機関の責任と権限をはっきりさせるため、経営委員会は、協会の経営方針その他業務の運営に関する重要事項を決定する機関、すなわち、協会の意思決定機関たる性格を明確にするとともに、その機能を十分に達成することができるようにするため、委員の数は、現行の八地区から選出される者八人のほか、全国を通じて選出される者四人を加えて計十二人とし、さらにその欠格条項を若干緩和して適材の選任を容易ならしめることといたしました。また委員は現行法による旅費その他業務の遂行に伴う実費を受けるほか、その勤務の日数に応じて相当の報酬を受けることができることといたしております。会長は、もっぱら業務執行を行うものとして意思決定機関たる経営委員会に出席して意見を述べることができるが、その議決には加わらないこととしております。またその他の役員につきましては、業務の範囲及び規模の増大に伴う措置といたしまして、理事を五人以上十人以内、監事を三人以内を置くこととしております。
次に、財務の整備をはかる措置の一つといたしまして、放送債券の発行限度額を純財産額の三倍以内に引き上げ、もって業務の範囲、規模の拡大に対処するほか、毎事業年度の収支予算等が、国会の閉会等やむを得ない理由によって、当該事業年度の開始の日までにその承認を受けることができない場合の臨時的措置を講ずることといたしております。
第三に、一般放送事業者につきましては、現行法はきわめてわずかな規定があるのみでありますつが、冒頭に述べました通り、放送事業の急激な発達とその放送が国民生活に及ぼす役割と影響力の増大にかんがみ、特に放送番組の向上適正をはかる措置を講じたことは前述の通りでありますが、なお、一般放送事業者の自主性及び主体性を確保する措置といたしまして、特定の者からのみ放送番組の供給を受けることとなる条項を含む放送番組の供給に関する協定を締結してはならないこととするほか、放送による学校向けの放送番組には学校教育の妨げになると認められる広告を含めてはならないことといたしております。
以上申し述べましたほか、日本放送協会及び一般放送事業者を通じまして、放送番組の放送後一カ月以内に限って政令の定めるところによって、放送内容について保存等の事後措置を講じなければならないことといたしておりますが、これはその放送内容を番組審議機関の批判に供する便を講ずるとともに、訂正または取り消し放送の関係者の確認の資料に供するための措置であります。なお、郵政大臣は、放送法の施行に必要な限度において、放送事業者に対してその業務に関する報告をさせることができることとしておりますが、この場合におきましては、その報告事項等は政令で具体的に規定し、監督官庁の悪意または逸脱を防止するように留意いたしております。
そのほか、以上の改正に伴う罰則その他の条文の整理を行い、及び所要の経過規定を設けようとするものであります。
以上述べましたところでおわかりのように、今回の改正は、今日の放送界の実情を直視しつつ、放送法第一条の精神を確保するために必要と認められる措置を行おうとするものであり、特に表現の自由を確保するため細心の注意を払ったものでありまして、きわめて現実に即した必要不可欠の改正のみであり、国会の御賛同をいただけることを確信いたしているものでございます。
何とぞ御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
第31回国会衆議院逓信委員会議録第1号4頁(昭和33年12月16日)〔寺尾豊郵政大臣発言・発言番号5〕 会議録 国会会議録検索システム
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=103101022)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。