労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案
参議院 社会労働委員会
昭和40年法律第130号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院社会労働委員会
- S40.4.9趣旨説明・質疑本会議 3022
- S40.4.21趣旨説明社会労働委員会 2183
- S40.4.23質疑社会労働委員会 23153
- S40.5.15質疑社会労働委員会 32162
- S40.5.17委員長報告・修正案・採決(修正)本会議 4546
- S40.5.17質疑・修正案・修正案趣旨説明・附帯決議・採決(修正)社会労働委員会 33195
- S40.6.1附帯決議本会議 1
参議院社会労働委員会
- S40.4.14趣旨説明・質疑本会議 1450
- S40.4.22趣旨説明社会労働委員会 1482
- S40.5.18衆議院修正部分趣旨説明・質疑・議案(衆議院修正部分)社会労働委員会 20107
- S40.5.19質疑社会労働委員会 2186
- S40.5.25質疑・附帯決議・採決社会労働委員会 22112
- S40.6.1委員長報告・採決本会議 2492
- S40.6.1附帯決議本会議 1
提案理由
石田博英 労働大臣 昭和40年4月9日趣旨の説明を申し上げます前に、一言発言をいたしたいと存じます。
本日午前六時三十分ごろ、日鉄鉱業伊王島鉱業所でガス爆発が起こり、現在までに七名の死亡が確認され、なお十七名について救出作業が続行されております。
労働省といたしましては、直ちに現地の長崎労働基準局長以下係官を現地に派遣いたしますとともに、三池医療委員会の専門医の現地派遣、その他緊急医療対策を進めておりますが、三井三池、北炭夕張の事故に引き続き、またまたこのような事故の発生を見ましたことは、きわめて遺憾にたえません。犠牲になられた方々に対しまして、この機会に心から哀悼の意を表する次第であります。
労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
労働者災害補償保険制度は、昭和二十二年に創設されて以来、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対し災害補償を行ない、あわせて労働者の福祉に必要な施設を行なうことによって、労働者及びその遺族の保護に力を尽くしてまいりました。この間、わが国経済の成長と相まって、労災保険加入事業場数も逐年増加し、保険経済の規模も拡大の一途をたどり、現在、労災保険の適用事業場数は約八十八万、労働者数は約二千万人でありまして、年間約百万人の労働者及び遺族に対し約五百億円にのぼる保険給付が支給されております。
しかしながら、従業員五人未満の零細事業や商業、サービス業などの任意適用事業に働く労働者等でいまだ労災保険の保護の外にある者も決して少なくない現状であり、最近における社会経済情勢の変化により、これらの労働者の保護をはかるため、労災保険の適用の拡大が強く望まれるに至っております。
また、労働災害をこうむった労働者及びその遺族に対して、必要な期間、必要な補償を行なうという見地から、障害者と遺族に対する保険給付については、原則として年金制を採用し、これによってその生活の安定をはかるとともに、労災医療及びリハビリテーション施設の充実と相まってその社会復帰に資することが必要であると考えるのであります。このことについては、去る昭和三十五年における労災保険法の改正の際においても、衆議院及び参議院の附帯決議におきまして、遺族年金制の採用等について要望されたところであります。
さらに、労災保険法施行十数年の経験及び最近の諸情勢に徴して、保険給付、保険制度及びその運営につきまして、なお改善すべき点がしばしば指摘されているのでありますが、特に、労災保険の適用範囲がますます拡大されようとする事態に対処して、労災保険の事務手続を簡素化して、事業主等の負担を軽減するとともに、保険者たる政府の保険運営を能率的にすることが強く要請されており、このためにも、施設の充実、運用の改善と並んで、現行法令の整備が必要であると考えるのであります。
政府におきましては、これらの問題を含めて労災保険制度の全般にわたって検討を進めてきたのでありますが、同時に、労災保険審議会においても、労災保険制度の問題点について調査研究が行なわれ、昭和三十八年十月にその結果を労働大臣に報告されたのであります。
このような諸事情を考慮し、政府といたしましては、昭和三十八年十二月に、労災保険審議会に対し、労災保険制度の改善につき諮問をいたし、昨年七月、法改正の方向に関する答申を得たのであります。この答申に基づき、労災保険法改正要綱案を作成し、これを同審議会及び中央労働基準審議会に諮問し、昨年十二月にそれぞれ答申を得ました。本年一月、右要綱案に若干の修正を加えた要綱を社会保障制度審議会に付議し、その了承を得、その結果に基づいて、労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を作成し、国会に提案いたした次第であります。
次に、その内容につきまして概略御説明申し上げます。
この法律案の内容は多岐にわたりますが、諸般の準備を整えた上、逐次これを実施に移すこととして、施行時期別に三カ条に区分しております。すなわち、第一条は、適用関係、療養補償、休業補償、支給制限、保険料等に関する改正規定でありまして、昭和四十年八月一日から、第二条は、労災保険事務組合、特別加入等に関する規定でありまして、昭和四十年十一月一日から、それぞれ施行することとし、第三条は、保険給付の年金化を中心とする改正規定でありまして、昭和四十一年二月一日から施行を予定しております。
以下、この区分に従って、法律案のおもな内容を御説明申し上げます。
第一に、改正法案第一条の規定による改正のうち、適用範囲につきましては、強制適用事業の範囲について、従来のもののほか政令で定めるものを加えて漸次拡大をはかることとするとともに、従業員五人未満の零細事業所等へのいわゆる全面適用については、二年以内に成果を得ることを目途として調査研究を行ない、その結果に基づいてすみやかに必要な措置を講ずることといたしております。
次に、保険給付につきましては、給付基礎日額の算定にあたって、平均賃金を用いることが不適当な場合には、労働大臣が別途これを定めることとし七、特殊事情によって賃金額が不当に低くなる場合等における救済をはかることといたしております。また、療養補償については、従来給付の対象としなかった少額の療養費をも支給することとするとともに、休業補償についても、待期期間を三日間とするように改めております。
さらに、事業主の責めに帰すべき事由による支給制限を廃止し、その場合にも労働者には保険給付をし、事業主からはその費用の全部または一部を徴収することができることに改めるとともに、労働者の責めに帰すべき場合の支給制限についての規定を整備することといたしております。
その他、保険料の算定、納付の方法等を簡便なものに改めるほか、技術的な事項について所要の整備を行なって、保険加入者及び保険者たる政府の事務の簡素化、合理化をはかっております。
第二に、改正法案第二条の規定による改正のうち、労災保険事務組合につきましては、失業保険事務組合の例にならって、中小企業等協同組合その他の事業主団体が、その構成員である事業主の委託を受けて、事業主の行なうべき労災保険事務を一定の条件のもとに代行することを認めることとし、もって中小企業事業主及び保険者たる政府の保険事務の負担軽減をはかっております。
次に、大工、左官等のいわゆる一人親方、自営農民、小規模事業主及びこれらの者の家族従業者等、労働者と同様な状態のもとに働き、同様な事務災害をこうむる危険にさらされている人々についても、申請に基づき、一定の条件のもとに、特別に労災保険に加入することを認め、保険給付を受けることができるように、特別加入の制度を創設することといたしております。
第三に、改正法案第三条の規定による改正のうち、保険給付の年金化につきましては、まず、障害補償の年金の範囲を大幅に拡大することといたしました。すなわち、従来は障害等級第一級から第三級までの重度障害者にのみ年金を支給していたのを改め、第一級から第七級までについて年金を支給することとし、身体障害者が必要とする期間必要な補償を行なうこととしております。
次に、従来一時金であった遺族補償は、原則として年金とし、一定の範囲の遺族に対し給付基礎年額の三〇%ないし五〇%の額の年金を支給することとし、もって遺族の保護の徹底をはかっております。なお、年金を受けることができる遺族がない場合等には、給付基礎日額の四百日分の一時金をその他の遺族に支給することといたしております。
また、長期傷病者に対する補償につきましては、従来の複雑な体系を改め、その内容を従来のような通院及び入院の区別を廃止して、一律に療養の給付を行ない、かつ、給付基礎年額の六〇%の年金を支給することとしております。また、厚生年金保険等の年金と労災保険の年金とが併給される場合の調整につきましては、厚生年金等の六年間併給停止の制度を廃止し、当初から厚生年金等は全額を支給するとともに、労災保険の年金については、従来の方式に準じ厚生年金等の一定率相当分を減じて併給することといたしております。
以上のほか、本改正案においては、労災保険事業に要する費用に対する国庫補助等につき所要の規定を設けるとともに、その附則において、以上の改正に伴う経過措置、制度の切りかえに伴う暫定措置及び関係諸法律の条文につき所要の整備をいたしております。
以上が、労働者災害補償保険法の一部改正案の趣旨でございます。(拍手)
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労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
第48回国会衆議院会議録第30号4頁(昭和40年4月9日)〔石田博英労働大臣発言・発言番号14〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)附帯決議
政府は、次の事項について努力すべきである。
一労働者災害補償保険の全面適用については、改正法附則第十二条の期間内においても、できるかぎりすみやかに立法化を図ること。
二被災労働者及び遺族に対する援護の拡充及び社会復帰の促進を図り、特にけい肺外傷性せき髄障害者等の長期傷病者に対する給付の改善を図るとともに、これらの患者であって打切補償のみによって災害補償を打ち切られた者に対する保護措置について十分配慮すること。
三保険給付の改善について引き続き更に努力し、特に通勤途上災害の取扱い、障害等級表の改定、スライド制の改善等についてすみやかに検討するとともに職業性疾病についての予防及び補償につき総合的な検討を行ない、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。
四農業従事者に対する特別加入制度の運用については、農業災害の実情を十分考慮すること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=104801124)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。