情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
平成23年法律第74号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
- H23.5.25趣旨説明・質疑法務委員会 1346
- H23.5.27質疑法務委員会 14126
- H23.5.31参考人招致・参考人質疑・質疑・採決法務委員会 15128
- H23.5.31委員長報告・採決本会議 2444
参議院法務委員会
- H23.6.7趣旨説明法務委員会 14150
- H23.6.9質疑法務委員会 15115
- H23.6.14参考人招致・参考人質疑法務委員会 1681
- H23.6.16質疑・討論・採決・附帯決議法務委員会 17191
- H23.6.17委員長報告・採決本会議 2333
提案理由
江田五月 法務大臣 平成23年5月25日情報処理の高度化等に対処するための刑法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
近年、コンピューターが広く社会に普及し、その機能も高性能化が一層進んで複雑かつ多様な情報を処理することが可能になっているとともに、世界的な規模のコンピューターネットワークが形成され、コンピューターとそのネットワークが極めて重要な社会的基盤となっております。
このような情報技術の発展に伴い、いわゆるコンピューターウイルスによる攻撃やコンピューターネットワークを悪用した犯罪など、サイバー犯罪が多発するとともに、証拠収集等の手続の面においても、コンピューターや電磁的記録の特質に応じた手続を整備する必要が生じております。加えて、サイバー犯罪は、容易に国境を越えて犯され得るものであり、国際的な対策が極めて重要となっているところ、平成十六年四月に国会において承認されたサイバー犯罪に関する条約は、国際的に協調してサイバー犯罪に効果的に対処する上で、重要な意義を有するものであります。
また、厳しい経済情勢が続く中で、暴力団等の反社会的勢力が組織的に関与する悪質かつ巧妙な強制執行妨害事犯は依然として後を絶たない状況にあるところ、強制執行手続の適正の確保を図り、権利実現の実効性をより一層高めるためには、この種の事犯に適切に対処することが必要であります。
そこで、この法律案は、このような近年におけるサイバー犯罪その他の情報処理の高度化に伴う犯罪及び強制執行を妨害する犯罪の実情にかんがみ、これらの犯罪に適切に対処するとともに、サイバー犯罪に関する条約を締結するため、刑法、刑事訴訟法、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律その他の法律を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
この法律案の要点を申し上げます。
第一は、情報処理の高度化に伴う犯罪に対処するとともに、サイバー犯罪に関する条約を締結するため、実体法及び手続法の整備を行うものであります。
すなわち、実体法の整備としては、人の電子計算機における実行の用に供する目的で、不正な指令を与える電磁的記録等を作成、提供する行為等を処罰する不正指令電磁的記録作成等の罪を新設するとともに、電気通信の送信によるわいせつな電磁的記録の頒布等を新たに処罰の対象とするなどしております。
また、手続法の整備としては、電子計算機の差し押さえに当たり、電気通信回線で接続している記録媒体であって、当該電子計算機で作成、変更をしたまたは変更、消去ができる電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから当該電磁的記録を複写することができるものとすること、電磁的記録の保管者等に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記録等させた上、当該記録媒体を差し押さえる記録命令つき差し押さえを新設することなどのほか、通信履歴の電磁的記録の保全要請に関する規定や、電磁的記録の没収に関する規定等の整備を行うこととしております。
第二は、強制執行妨害行為等についての罰則の整備を行うものであります。
すなわち、現行刑法の関係罰則では処罰が困難な、封印等が不法に取り除かれた後における目的財産に対する妨害行為、目的財産の現状の改変等による妨害行為、執行官等の関係者に対して行われる妨害行為、競売開始決定前に行われる競売手続の公正を害するような行為等の強制執行を妨害する行為を新たに処罰の対象とし、その法定刑を引き上げるとともに、報酬目的でまたは組織的な犯罪として行われる場合に刑を加重することとしております。
このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
以上が、この法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
第177回国会衆議院法務委員会議録第13号1頁(平成23年5月25日)〔江田五月法務大臣発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)附帯決議
政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。
一不正指令電磁的記録に関する罪(刑法第十九章の二)における「人の電子計算機における実行の用に供する目的」とは、単に他人の電子計算機において電磁的記録を実行する目的ではなく、人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせない電磁的記録であるなど当該電磁的記録が不正指令電磁的記録であることを認識認容しつつ実行する目的であることなど同罪の構成要件の意義を周知徹底することに努めること。また、その捜査等に当たっては、憲法の保障する表現の自由を踏まえ、ソフトウエアの開発や流通等に対して影響が生じることのないよう、適切な運用に努めること。
二記録命令付差押えについては、電磁的記録の保管者等に不当な負担を生じさせることのないよう十分留意するとともに、当該記録媒体を差し押さえるべき必要性を十分勘案した適切な運用に努めること。
三通信履歴の保全要請については、憲法が通信の秘密を保障している趣旨に鑑み、その必要性及び通信事業者等の負担を考慮した適切な運用に努めること。
四サイバー犯罪が、容易に国境を越えて行われ、国際的な対応が必要とされる問題であることに鑑み、その取締りに関する国際的な捜査協力態勢の一層の充実を図るほか、捜査共助に関する条約の締結推進等について検討すること。
五本法の施行状況等に照らし、高度情報通信ネットワーク社会の健全な発展と安全対策のさらなる確保を図るための検討を行うとともに、必要に応じて見直しをすること。なお、保全要請の件数等を、当分の間一年ごとに当委員会に対し報告すること。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=117701042)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。