裁判所法の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
昭和29年法律第126号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
- S29.3.9趣旨説明法務委員会 1574
- S29.3.30逐条説明法務委員会 3032
- S29.4.2参考人招致法務委員会 3276
- S29.4.15質疑法務委員会 402
- S29.5.7質疑法務委員会 5094
- S29.5.10質疑法務委員会 5244
- S29.5.14質疑法務委員会 5596
- S29.5.15小委員長報告・質疑・修正案・採決(修正)法務委員会 5648
- S29.5.18修正案・委員長報告・採決(修正)本会議 5143
提案理由
三浦寅之助 政府委員(法務政務次官) 昭和29年3月9日裁判所法の一部を改正する法律案について、提案の理由を説明いたします。
この法律案の改正点の第一は、民事に関する簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張して、裁判所間の権限の分配の適正化をはかつたことであります。
御承知のとおり、裁判所における民事訴訟の第一審の新受件数は終戦後年年増加の一途をたどつているのでありまして、昨年の全国地方裁判所における総件数について見ますに、戦前十箇年の平均年間件数の三倍以上に達しており、これがため近時地方裁判所は、各地とも著しく事務の負担加重を来し、事件の迅速な処理がはばまれる結果となつているのであります。
ところで他面、簡易裁判所における民事訴訟事件の負担量を見ますと、昨年の全国簡易裁判所の新受件数は、戦前十箇年の区裁判所の平均年間件数の約五分の一にすぎないのでありまして、これを地方裁判所の負担量と比較いたしますと、民事訴訟第一審新受件数の比率は、戦前は、区裁判所八割五分、地方裁判所一割五分であつたのに対し、昨年は、地方裁判所七割三分、簡易裁判所二割七分と逆転しており、簡易裁判所は、民事訴訟に関する限りむしろ閑散ともいうべき状態となつているのでありまして、この傾向は今後ますます強くなつて行くものと予想されるのであります。
もとより、裁判所法のもとにおける簡易裁判所は、裁判所構成法のもとにおける区裁判所とは、多少その設置の趣旨を異にする点がないわけではありませんが、わが審級制度を大局的に観察するならば、簡易、地方の両裁判所間に見られる以上のような不均衡を是正して、民事第一審事件を適切に配分することが、簡易裁判所設置の本旨に沿うゆえんであつて、これにより地方裁判所における事件の渋滞を解消することができ、また簡易裁判所事件の上告審が高等裁判所である関係上、ひいては、最高裁判所の負担の調整にも寄与することができると考えられますので、これらの目的を達するため、簡易裁判所の事物管轄の範囲を拡張する必要があると考えるのであります。
しかして、現存簡易裁判所については、昭和二十五年法律第二百八十七号による裁判所法の改正の結果、訴訟物の価額が三万円以下の事件につき管轄権を有するものとされておるのでありますが、最近の物価指数は、右改正当時のものと比較して、すでに四割程度の上昇を示しておりますし、また戦前区裁判所が千円以下の事件につき権限を有していたことや、特に最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律が近く失効するのに伴い、最高裁判所の負担が増大することをあわせて考えますと、この際簡易裁判所事件の限度額を二十万円程度まで増額することが適当と考えられるのでありまして、この法律案では、裁判所法第三十三条の規定をその趣旨に改めることとした次第であります。
次に、簡易裁判所の事物管轄の範囲をこのように拡張するとしますと、簡易裁判所の裁判官の任用資格等につき、当然考慮を払うべき必要が生じて来るわけでありますが、簡易裁判所制度につきましては、右のほか根本的に検討を要する事柄が少くないのでありまして、これらはいずれも裁判所の制度の改善に関する問題の一環として、さらに慎重に研究いたしました上で、恒久的措置を講ずるのが相当であると考えるのであります。従いまして、それまでの暫定的措置としては、特定の簡易裁判所の民事訴訟に関する事務を、その所在地を管轄する地方裁判所の本庁の所在地または支部の所在地にある簡易裁判所に移転し、事務の移転を受ける裁判所に相当数の有能な裁判官を配置することによつて、事物管轄の引上げにより生ずる不都合を除くことができるようにするとともに、事務を移転される裁判所及び事務の移転を受ける裁判所の指定は、最高裁判所の規則をもつてすることとして、この法律案の附則で以上の趣旨を規定し、これに伴う必要な経過的措置を定めた次第であります。
改正点の第二は、家出調査官と少年調査官とを統合して家庭裁判所調査官として、家庭裁判所における家事事件及び少年事件の適正迅速な処理をはかつたことであります。
御承知の通り、家事調査官は家事審判法で定める家庭に関する事件の審判及び調停に必要な調査をつかさどり、また少年調査官は少年法で定める少年の保護事件の審判に必要な調査その他少年法で定める事務をつかさどるものといたしまして、いずれも家庭裁判所に置かれているのでありますが、この家事調査官と少年調査官とはそれぞれ時期を異にしてその制度が設けられ、まつたく別個独立の官職として定められたまま今日に及んでおります。
しかしながら、家事事件と少年事件との間には、申し上げるまでもなく、事柄の性質上きわめて密接な関連性があるのでありまして、この両種の事件をあわせ取扱うものとして家庭裁判所が特に設けられました根本の意義もここにあるものと考えられるのであります。これまでの実績に徴しましても、少年事件の中に複雑な家庭関係の問題を蔵している事案あるいは逆に家事事件の中に少年保護の問題を伴つている事案がきわめて多数を占めているのであります。しかもこれらの事件の調査に従事する家事調査官と少年調査官とは、ともに事実の調査に当ることを主たる職務としているのでありまして、その活動が密接に相関連することの多いこの両者を一体化してその調査活動に機動性を与えることの必要性が痛感されるに至つたのであります。
そこでこの際、家事調査官及び少年調査官の調査事務の有機的総合的な運営を可能にし、その機能を一層十分に発揮させる道を開くことによりまして、家庭裁判所における家事事件及び少年事件のより適正迅速な処理をはかり、家庭裁判所がその本来の使命を十分に果し得るようにするため、裁判所法第六十一条の二以下数条の規定を改め、家事調査官と少年調査官とを統合して家庭裁判所調査官とし、家事調査官補と少年調査官補とを統合して家庭裁判所調査官補とすることといたした次第であります。
以上がこの法律案を提出いたしました理由であります。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
第19回国会衆議院法務委員会議録第15号3頁(昭和29年3月9日)〔三浦寅之助政府委員発言・発言番号2〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=101901079)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。