刑法の一部を改正する法律案
参議院 法務委員会
昭和35年法律第83号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院法務委員会
- S35.3.1趣旨説明・逐条説明・質疑法務委員会 5104
- S35.3.3質疑法務委員会 683
- S35.3.4質疑法務委員会 753
- S35.3.17質疑法務委員会 1226
- S35.3.22質疑法務委員会 1357
- S35.3.25質疑法務委員会 1410
- S35.3.29参考人招致法務委員会 1538
- S35.4.14質疑法務委員会 21184
- S35.4.15質疑・修正案・修正案趣旨説明・討論・採決法務委員会 2293
- S35.4.19委員長報告・採決本会議 2341
提案理由
井野碩哉 法務大臣 昭和35年3月1日刑法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
近年いわゆる不動産の不法侵奪、すなわち正当な権限もないのに他人の土地を占拠して建物を建てるなどの行為がしきりに各方面から問題とされるようになりましたことは、周知の通りであります。言うまでもなく、現在問題となっております不法占拠のうちには、終戦直後の社会的混乱期に行なわれたものも少なくありませんが、国民生活もおおむね安定し、社会秩序も平常に復した現在におきましても、なお同種の行為が跡を絶たない実情にあります。しかも、不法占拠のためにはしばしば暴力その他の不法手段が用いられ、他方、権利者の側でも、民事的な手続による早急な解決が困難であるなどの理由から、実力をもって権利を回復しようとする傾向もあるやに見受けられるのでありまして、不法占拠をめぐって各種の暴力的な犯罪が発生することもまれではないのであります。このように、実力をもって他人の不動産を不法に自己の支配に移すような行為を放任しておくことになりますれば、不動産の安全な利用に対する国民の不安感を強め、ひいては国民一般の順法精神にも軽視することのできない悪影響を与えることとなりますので、政府におきましては、かねてからこのような事態の発生を防止するため懸命の努力と検討を続けて参ったのでありますが、最近におけるこれら事犯の趨勢にかんがみまして、刑法の一部に改正を加えるの必要を認め、ここにいわゆる不動産侵奪罪に関する規定及び境界毀損罪に関する規定の新設並びにこれに伴う所要の改正を内容とするこの法律案を提出することといたしたのであります。
この法律案の骨子は、次の通りであります。
まず、不動産侵奪罪に関する規定は、不法領得の意思をもって、不動産に対する他人の占有を排除し、これを自己の支配下に移す行為を動産に対する窃取行為と同じように処罰しようとするものであります。従来におきましても、不動産に対する窃盗罪の成立を認める学説はありましたが、検察及び裁判の実務では、窃盗罪における窃取の観念を不動産についてまで拡張するのは相当でないという理由から、不動産窃盗として起訴または裁判された事例は一つもないのであります。従って、今直ちに従来の解釈を改めることは、法律生活の安定という面から好ましくありませんので、不法領得の意思をもってする不動産に対する占有の侵害を処罰するためには、特別の規定を設ける必要があると考えられたので、本罪を新設することといたしたのであります。なお、本罪は、動産に対する窃盗と同じ性質の犯罪でありますから、これと同様に、未遂罪の規定を設け、また、いわゆる親族相盗例を適用するものとすると同時に、日本国民の行なう国外犯とすることが相当であると考えられますので、それぞれ関係法条に所要の改正を加えることといたしたのであります。
次に、境界毀損罪に関する規定は、境界標を損壊し、移動し、もしくは除去しまたはその他の方法で土地の境界を認識することができないようにした行為を処罰しようとするものであります。この規定を新設する趣旨は、第一の不動産侵奪罪に関する規定の新設と関連するのでありますが、他人の土地を侵奪するための手段などとして境界を毀損する行為が頻発している実情にかんがみ、不動産に関する権利の保護に十全を期するためには、現行の器物損壊罪などの規定のみではまかなえない面があり、改正刑法仮案でも認められておりますように、土地の境界を不明にする行為それ自体を取り締まるのが相当であると考えられたからであります。
以上が刑法の一部を改正する法律案の趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
…………………………………
第34回国会衆議院法務委員会議録第5号1頁(昭和35年3月1日)〔井野碩哉法務大臣発言・発言番号3〕 会議録 国会会議録検索システム
立法資料のある条文
この法律案の審議で取り上げられた条(政府答弁の件数順)出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=103401080)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。