小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案
参議院 沖縄及び北方問題等に関する特別委員会
昭和43年法律第83号
審議経過
右の数字は会議の発言数衆議院沖縄及び北方問題等に関する特別委員会
- S43.4.19趣旨説明・質疑本会議 2659
- S43.5.7趣旨説明沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 1317
- S43.5.9質疑沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 14229
- S43.5.14質疑沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 15265
- S43.5.16質疑・採決・附帯決議沖縄及び北方問題等に関する特別委員会 1664
- S43.5.16委員長報告・採決・附帯決議本会議 3457
参議院沖縄及び北方問題等に関する特別委員会・沖縄及び北方問題等に関する特別委員会、地方行政委員会連合審査会
提案理由
田中龍夫 総理府総務長官 昭和43年4月19日小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
この法律案は、南方諸島及びその他の諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定に基づく小笠原諸島の復帰に伴い法令の適用についての暫定措置を定めますとともに、小笠原諸島の旧島民及び現島民の小笠原諸島における権利または利益の保護、並びにこれらの者の生活の安定をはかるため、特別の措置を講じ、あわせて小笠原諸島をその区域とする村の設置、及び現地における国の行政機関の設置等について、所要の特例を定めようとするものでございます。
以下、この法律案の概要につきまして申し述べます。
まず第一に、小笠原諸島が二十余年にわたりまして無人島に近い状態で放置されていたことにかんがみ、国及び地方公共団体は、その責務として、旧島民の帰島及び生活の再建並びに現島民の生活の安定に留意すべき旨を定めております。
第二に、現島民に対する措置といたしまして、まず、建物等の敷地として、他人の土地を使用しておる現島民の居住の安定をはかるために、法律上その所有者がその使用者のために賃借権を設定することとし、次に、現島民で漁業を営む者の利益を保護するために、小笠原諸島周辺の海域における漁業につきまして操業を制限し、また合衆国軍隊の引き揚げによる離職者の生活の安定、就職促進等をはかるために、失業保険法及び駐留軍関係離職者等臨時特別措置法の規定の適用につきまして、政令で特例を認めることにいたしたのでございます。
第三に、旧島民に対しまする措置といたしまして、まず、本土引き揚げ当時存在していた耕作に関する権利を保護するための措置をとることといたしておりまするが、耕作に関する権利が、この法律の施行後一年を経過する日までに消滅しておる場合には、一定期間内に申し出ることによりまして、賃貸借契約を締結させることとし、また、旧島民で漁業を営んでいた者の利益を保護するために、現島民と同様の扱いをすることといたしております。
第四に、小笠原諸島におきまする行政組織につきましては、まず小笠原諸島を区域とする地方公共団体として、小笠原村を設置し、また現地における国の行政機関としては、小笠原総合事務所を設置することといたしております。
以上のほか、小笠原諸島の復興について、別に復興法を定めること、復興の計画的かつ円滑な推進をはかるために、一定期間、特定の場合を除き、容易に原状に回復することができないような土地の形質変更、工作物の新築等を認めないこと、その他公職の選挙及び最高裁判所裁判官の国民審査についての暫定措置の政令への委任、旧鉱業権者に対する旧鉱区にかかる鉱業権の出願の優先的取り扱い等につきまして規定いたしております。
この法律案の施行期日は、小笠原諸島の返還の協定発効の日といたしております。
以上が小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案の趣旨でございます。(拍手)南方諸島及びその他の諸島に関する日本国と
アメリカ合衆国との間の協定の締結につい
て承認を求めるの件及び小笠原諸島の復帰
に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法
律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
第58回国会衆議院会議録第26号9頁(昭和43年4月19日)〔田中龍夫総理府総務長官発言・発言番号18〕 会議録 国会会議録検索システム
附帯決議
案文はお手元に配付のとおりでありますので、案文の朗読はこれを省略いたしますので、御了承願います。昨年十一月、佐藤総理大臣、ジョンソン大統領、両首脳会談の結果、小笠原諸島の早期返還について合意を見、引き揚げ旧島民の方々のみならず、全国民待望の夢が、平和時における領土返還という画期的事実として歴史の上に定着することになったことは、まことに喜びにたえないところであります。本法案審査の経過を顧みて、多くの政令事項があり、また今後検討調査を要する事項がきわめて多いので、特に次の諸点に関し、政府に対し適切な配慮を要望したいのであります。第一は、小笠原諸島復帰に伴い、同諸島が旧島民の引き揚げ後二十数年間自然の荒廃のままに放置されてきた現状にかんがみ、冬暖く夏涼しい海洋性気候の島々の美しい自然を生かし、全国民の願望にこたえ、広い視野から自然と産業の融和した新しい村づくりを目ざして、小笠原諸島の復興計画の早期確立とその開発の促進に十分な努力をいたすよう要望するものであります。第二には、父島に居住する現島民の生活の安定についてであります。御承知のように、現島民は米軍施政下で医療、教育、住宅、生活環境施設等、米軍依存の生活になれてきたのでありますが、米軍撤退に伴う生活不安に困惑を感じていると思われます。政府は、この現住民の生活激変に対する不安をできるだけ解消する責任があると考えます。特に、日本語教育と本土教育への接続並びに就業機会の供与については、特別の努力を要望したいのであります。第三に、復興計画及び復興法の策定についてであります。荒廃の極にあるとさえいえる小笠原の島々は、おのおの特殊な事情がある点は理解できるところでありますが、土地所有権の確認、病虫害防除対策その他復興開発計画の樹立のための基礎的な調査であって、長期を要しかつ徹底した調査を必要とするものは、どうしてもこれを早期に着手し、的確な判断をなし得る措置を急ぐことは、当面緊急のものと考えるのであります。的確な資料に基づいて明らかとなった小笠原各島の特殊事情を適切に盛り込んで復興計画をつくり、復興法の調整に当たるよう政府は最大の努力をいたされたいのであります。この過程はきわめて困難なものがありましょうが、計画の策定にあたっては、国、東京都は、同島復興開発のにない手である旧島民の意向を十分に反映することにつとめるとともに、国は、地方自治法の本旨にのっとり、東京都との分担を明確にしつつ、緊急かつ適切な協力を行なうことを要望するものであります。また、計画は、小笠原の各島の実態に基づく総合的な計画として策定されるよう特段の努力をいたされたいのであります。第四に、復興計画の実施についても、前項に述べたように、関係者の緊密かつ効率的な協力を前提として、各島の実態に応じた施策をできるだけ同時に進めるよう、一刻も早く帰島したい旧島民の立場を考慮に入れ、適切な配慮を望むものであります。これらの所要の経費については、強制引き揚げさせられた旧島民の帰島援護の問題と、荒廃の極にある小笠原の特殊事情をも勘案し、現行法上長高率を下回らない補助等、特別の財政措置を講じられたいのであります。第五は、硫黄島における特殊事情として、その不発弾処理及び戦没者の遺骨の収集は、復興開発ないし旧島民帰島の前提とも考えられます。特に戦死者御遺族の立場から見て、その遺骨の収集をすみやかに実施されるよう要望するものであります。第六は、本法における権利の調整に関し、旧小作人に対する特別賃借権、漁業の操業制限、土地使用権の設定、緊急事業のための土地使用等の措置に関連し、本土における現行法体系の立場から、また復興開発段階までの措置について、本決議の趣旨に応ずる配慮を特に要望するものであります。第七は、日本軍の命令に従って強制引き揚げを余儀なくされた旧島民が帰島し、その生活の再建をはかるために、これに必要な再建資金に関しては、特別の長期低利の融資を行ない得るよう特段の措置を講じ、引き揚げ旧島民の長期にわたる忍苦の生活にこたえるよう特に要望するものであります。最後に、本土より千余キロを隔てた小笠原の島々は、その交通、通信施設の早急整備がその復興開発のキーポイントとなるので、政府は、当面の交通確保はもとより、将来の小笠原の交通、通信の整備に最大の努力をいたされたいのであります。以上をもって趣旨の説明を終わります。(拍手)—————————————〔参考〕小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行に当つては、次の事項に関し、遺憾のないよう適切な配慮を行なうべきである。
一小笠原諸島の復帰に当り、その荒廃の現状に鑑み、政府は国民の願望に答え、その自然と産業が融和した新たな村づくりを目指し、復興開発を促進すべきである。
一復帰に伴う現島民の生活の激変に対し、その不安の解消に努め、就業並びに子弟の教育等生活安定につき、適切な措置を講ずること。
一復興計画及び復興法については、これに必要な基礎調査の実地を急ぎ、これに基づく小笠原の特殊事情に即し、国・東京都並びに旧島民など関係者の緊密かつ適切な協力により、各島にわたる総合計画としてこれを策定すること。
一復興計画の実地に当つては、各島の実態に応じた施策をできるだけ同時に進めうるよう配慮するものとし、必要な経費は、現行法上の最高を下廻らない効率補助をとる等十分な財政措置を講ずること。
一硫黄島における戦没者の遺骨は速やかにその収集を図ること。
一農地法の適用については、復興法の施行に応じて、速やかに適用できるよう措置するとともに、自作農による農業振興を図ること。
一漁業者の生活安定を図るため小笠原諸島周辺海域における漁業秩序の確保、乱獲防止等について万全の対策を講ずること。
一本法による土地使用権の設定及び緊急事業のための土地使用等については、土地所有権者等の権利の保護に充分配慮すること。
一島民の生活の再建を図るため、その特殊事情を勘案し、特別の長期・低利の融資を行ないうるよう措置すること。
一本土及び各島間における交通・通信施設を早急に整備すること。
政府は本法の施行に当り、次の事項に関し、遺憾のないよう配慮すべきである。
一小笠原諸島の復帰後のありかたについては、国民の願望に応えるとともに、特殊な立地条件等に適応せしめ、自然と産業の融和した新しい村づくりを指向し、努力すること。
二硫黄島における戦没者の遺骨の収拾を速やかに実施すること。
三復帰に伴う現島民の生活の激変に対しては、就業、子弟の教育、医療等について十分配慮し、その不安解消のため適切な措置を講ずること。
四旧島民の帰島に際しては、現島民等の間ににおいて権利の調整措置等に関しいたずらに紛争を生ずることのないよう万全を期し、いささかも感情的な対立を招くことのないよう指導すること。
五農業経営に対しては、農耕作物の撰択、新技術の導入、輸送手段の確保等に十分な指導と援護を行なうこと。
六漁業に対しては、濫獲状態を生ずることのないよう資源保護に万全を期すとともに、漁港施設、漁船及び漁具の調達、冷凍庫、冷凍船の配備等につき、援護措置を講ずること。
七現島民の生活の再建、旧島民の秩序ある帰島の援護及び帰島後の事業資金の調達については、長期かつ低利の融資の措置を講ずること。
八交通、通信施設の整備が優先的手段であることにかんがみ、海、空の航路の開設等につき、特に配慮すること。
九復興法の立案及び復興計画の策定については、小笠原諸島の現状を十分に掌握し、国、東京都が緊密に連繋し合うとともに、現島民旧島民の意向をも尊重して、速やかに成案を得るよう努めること。
十復興開発のため多額の経費が予測される状況にかんがみ、国の費用負担について特別の財政措置を講ずること。右決議する。
出典:国立国会図書館「日本法令索引」(https://hourei.ndl.go.jp/#/detail?billId=105801104)を加工して作成(加工:TaiLexi AI) 発言の出典:「国会会議録検索システム」(国立国会図書館)を加工して作成。引用部分は会議録の原文です(見出しは質問の一文、強調は一致した語)。国会答弁・附帯決議は法的拘束力を持つものではありません。