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最高裁第二小法廷判決棄却民集27巻10号1374頁収録判例内の被引用 63

最二小判 昭和48年11月16日

昭和45年(オ)第628号 損害賠償請求

裁判所
最高裁判所第二小法廷
裁判年月日
昭和48年11月16日 (1973-11-16)
事件番号
昭和45年(オ)第628号
事件名
損害賠償請求
裁判の種類・結果
判決 棄却
判例集等
民集27巻10号1374頁
原審
東京高等裁判所 昭和41年(ネ)第1936号 昭和45年4月8日
分野
民事

判示事項

民法七二四条にいう「加害者ヲ知りタル時」の認定事例

裁判要旨

被疑者として逮捕されている間に警察官から不法行為を受けた被害者が、当時加害者の姓、職業、容貌を知つてはいたものの、その名や住所を知らず、引き続き身柄拘束のまま取調、起訴、有罪の裁判およびその執行を受け、釈放されたのちも判示の事情で加害者の名や住所を知ることが困難であつたような場合には、その後、被害者において加害者の氏名、住所を確認するに至つた時をもつて、民法七二四条にいう「加害者ヲ知りタル時」というべきである。

参照法条

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人山下義則の上告理由第一点について。

民法七二四条にいう「加害者ヲ知リタル時」とは、同条で時効の起算点に関する特則を設けた趣旨に鑑みれば、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況のもとに、その可能な程度にこれを知つた時を意味するものと解するのが相当であり、被害者が不法行為の当時加害者の住所氏名を的確に知らず、しかも当時の状況においてこれに対する賠償請求権を行使することが事実上不可能な場合においては、その状況が止み、被害者が加害者の住所氏名を確認したとき、初めて「加害者ヲ知リタル時」にあたるものというべきである。

これを本件についてみるに、原審の確定したところによれば、被上告人は、昭和一七年初め頃軍機保護法違反の容疑で逮捕され、大泊警察署に留置されて取調中、同年四月一五日夜から翌一六日未明にかけて本件不法行為による被害を受けたが、その当時加害者である上告人が「A」なる姓の同署警部補であることおよびその容貌を知つてはいたものの、その「A」の名と住所は知らず、逮捕後引き続き身柄拘束のまま取調、起訴、有罪の裁判およびその執行を受け、昭和二〇年九月四日頃終戦後の混乱の収まらない状況の中においてようやく釈放されたものであつて、その釈放前は勿論釈放後も、加害者である上告人の所在および名を知ることが困難であつたところ、その後加害者の探索に努めた結果、昭和二三年頃に至り加害者が秋田県内に居るらしいことを、また昭和二六年頃その名が「A」なることを知るに至り、札幌法務局人権擁護部に照会して、昭和三六年一一月八日頃、上告人が秋田県本荘市から東京に移転したとの回答を受けたので、更に調査の結果、その頃東京における住所を突きとめ、加害者本人に間違いないことを知つたというのであつて、被上告人は、この時に加害者を知つたものというべく、それから三年以内である昭和三七年三月七日に本訴を提起したものであるから、上告人主張の消滅時効は未だ完成していないとした原審の判断は、正当である。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

同第二点について。

所論の点に関する原審の認定は、原判決挙示の証拠に照らし首肯することができないわけではなく、その過程に所論の違法は認められない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 大塚喜一郎

裁判官 岡原昌男

裁判官 小川信雄

裁判官 吉田豊

出典:裁判所ウェブサイト「裁判例検索」(https://www.courts.go.jp/hanrei/52012/detail2/index.html)。本文は同サイト掲載の判決書PDFからTaiLexi AIがテキスト化・整形したもの(正確な文言は原本PDFを参照)。判示事項・裁判要旨・参照法条は裁判所の公表どおり。